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01-67.vs呪いの人形

「「ヨーセーサァーン!!!」」


「くっ!

 パティ!!」


「任せて!!」


 自分の身体から直接生やした魔力手で殴りつけつつ、その反動で距離を離した直後、パティの放った火炎弾が私とフラビアの間で地面に叩きつけられて爆発した。


 私はその爆風に乗って更にフラビアとの距離を離し、パティとメインの攻撃役を交代する。


 今度はパティが前に出て魔術を中心に攻撃を放っていく。

私はパティを盾にして敵と距離を取りながら、魔力手と魔力壁でパティをサポートしつつ、パティにも魔力を流し込む。

これは何度も共に訓練を重ねて身に付けた動きだ。

お互い忙しい中、どうにか時間を見つけて続けてきた。


 適正だけを考えるなら私が完全に前衛をこなせれば良いのだろうが、如何せん実戦経験が無さ過ぎた。そこは無理せず経験豊富なパティに任せるのも必要だ。かと言って完全に後衛に徹するのも難しい。敵の標的は私なのだ。どうせやり合う必要があるなら、互いに背中を預け合うのがやりやすかろう。




 フラビアの纏う呪いの魔力は相変わらずびくともしていない。私の魔力手もパティの魔術も、半端なものでは弾かれてしまう。とはいえ完全に効かないわけでもない。爆風や暴風で吹き飛ばす事は可能だ。


 とにかくこのまま続けていれば、何れは魔力が尽きるはずだ。フラビアの魔力は無限なわけではない。それが呪力で強化されていようとも、消費されているのは間違いない。



 幸い持久戦なら私達に分がある。

例えパティの魔力が尽きても私が魔力を供給できるのだ。


 私が回復させられるのは体力だけではない。

エリクサーだから当然だ。MPも全回復させられるのだ。


 まあ、流石にこちらも完全な無限ではないがな。

とは言えその量は莫大だ。その上常時私の魔力は回復し続けている。先日の魔力壁のように無駄に出し尽くすような事をしなければ十分に回復も間に合うはずだ。



「「エ~リ~グゥ~~~~~!!!」」


 フラビアの様子はもはや魔物のようだ。

あの美しかった顔すらも執着と憎悪で醜く歪んでいる。


 しかしそれだけでもないようだ。

最初は碌な思考も出来ずに真っ直ぐ向かってきているだけだったが、段々と動きに人間味が出てきた。その上魔術まで使い始めたのだ。魔力と呪いを自在に操るその様は、まるで人形とフラビアの融合が進んで、一つの人格となりつつあるようだ。


 魔術を使えばそれだけ消耗も速くなる。

だから魔術を使われるのも一概に悪い事とは言い切れないが、うかうかもしてられない。先日の火球のようなものを屋敷に放たれれば洒落にならない。少しでも屋敷から離しながら戦う必要がありそうだ。



「エリク!!」


 パティの慌てた声が響く。



「な!?」


 突然、私の眼の前に一体の人形が現れた。


 慌てて魔力手で殴り飛ばす。

人形は何度か地面をバウンドしながら吹き飛ばされたものの、すぐに浮かび上がって再びこちらに向かってきた。



「侵食は!?」


「通らん!

 焼き尽くせ!」


「無理よ!こっちも通らないわ!」


 人形達まで呪いの魔力を纏っているようだ。


 しかも人形は一体ではなかった。

パティの方にも二体が付き纏っている。

フラビアと合わせて、三体がかりで攻撃を仕掛けてきた。


 完全に標的をパティに変えたようだ。

これも冷静な人格が芽生え始めた影響だろう。このままもしフラビアの意識が戻るなら、戦闘自体を中断させる事も出来るのだろうか?


 何にせよ、先ずは本体を取り押さえねば。

その為には人形達もなんとかせねば。


 いかんな。

一見こちらが有利なのに段々状況が悪化している。


 まさか馬車に残していた何の力も無い人形達を利用されるとは。馬車は見当たらないので、どうやら先に人形達だけ放り出されていたようだ。最初にフラビアが私の人形と一緒に引っ張り出したのだろう。


 それにこれは【侵食】と【傀儡】だ。奴は私の魔導を真似ているのかもしれない。



「パティ!気をつけよ!

 奴は魔導を使うぞ!

 魔力に呑まれるなよ!」


 パティが奴の傀儡になれば面倒だ。

今のところ侵食を防ぐには魔力抵抗に頼るしかない。

しかし魔力抵抗はゴリ押しでも案外どうにかなるのだ。

だから唯一の対策は避ける事だけなのだ。



「もう!

 どうしろってのよ!!」


 パティが魔術で牽制しながら屋敷から遠ざかるように逃げていく。フラビアは私に意識を向け直す事もなく追いかけ始めた。


 連携を崩すのは不安だが、今はこの手しかあるまい。敵の数が増えてしまった上、真っ向からやり合うのは悪手だと気付かされたのだ。フラビアが冷静だったら危なかった。不意打ちでパティが侵食されていれば、こちらの勝ち目は無かっただろう。


 出遅れた私は再び近付いてきた人形の一体を薙ぎ払い、パティを追うフラビア達を追いかけた。




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「ユーシャも行ってあげて」


「ダメ。私はディアナを守る。

 向こうは心配要らないよ。

 エリクとパティが負けるわけ無いもん」


「けど……ううん。ごめんなさい。

 そうね。信じて待っていましょう」


「うん」


 ディアナはまだ不安そうだ。

戦闘の経験も無いのにあんなの見たら無理もないのかも。

あの人、凄くおっかない感じだったし。


 それに、さっきから大きな音が沢山聞こえてくる。

多分これはパティの魔術だろう。



「お父様も大丈夫かしら」


 領主様は兵士をかき集めて防備を固めているようだ。

前回のように屋敷ごと吹き飛ばされてはたまらない。


 それにエリクとパティと同じくらい戦える人もいないらしい。それも仕方のない事だ。パティはSランクにならないかと言われる程の冒険者で魔術師だ。敵はそのパティが倒しきれないような相手だ。まあ場所や条件の問題で加減もしているだろうけど。殺しちゃうわけにもいかないだろうし。



「師匠もいるから」


 きっと大丈夫。



「そうね。

 メアリも強いんだものね」


「うん。そうだよ」


 師匠なら条件次第ではパティにも勝てそうだもん。


 私もそんなに強くなれるのかな?

なりたいな。パティや師匠と同じくらい強く。

待ってるだけじゃなくて、一緒に戦えるように。

ディアナを安心させてあげられるように。

皆で冒険出来るように。


 強くなろう。

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