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01-66.お出迎え

「そろそろね。

 ディアナの体調が崩れなくて良かったわ。

 流石エリクね」


「油断するでない。

 こういうのは部屋に戻って安心してからが本番だ。

 気を抜いた途端、急にきたりもするのだぞ」


「そうね。

 くれぐれも安静にね」


「けれど今日くらいは皆と一緒のベットで眠りたいわ。

 皆だけズルいと思うの。三人一緒に寝られるんですもの」


「無茶を言うでない。お主にとって睡眠は何より大切だ」


 それでも我慢できずに度々ユーシャをベットに連れ込んでおるだろうが。ユーシャは抱き枕としても最高だろうからな。気持ちはわかる。だから今まで何度か見逃してきた。けれど今日はダメだ。普段と違うことをしたのだ。用心せねば。



「そもそも、ディアナの部屋に人数分のベットを置いてしまえば邪魔になるであろう」


 元々そう広い部屋でもないのだ。

大貴族の令嬢としては珍しいかもしれんが、病人の寝室だからな。あまり広すぎても色々と不便なのだ。それに本人も寂しがるだろうし。



「お父様にお願いしてみようかしら。

 皆で寝られる大きなベットが欲しいって」


 あれ以上か?

一人で寝るにも十分デカいのだぞ?

なんだったら別に全員で寝たって余裕だぞ?

単に病の事もあるからと気を遣ってるだけで。

これ以上はシーツを変えるのも一苦労になりそうだ。



「必要あるまい。

 パティはもうすぐあの屋敷を離れるのだ。

 もしやするとユーシャもな」


「そうだったわね。

 じゃあ明日の晩ね。

 一晩だけ皆で眠りましょう」


「……明日の体調次第だぞ」


 仕方ない。

明後日にはパティも旅立つ予定だ。

新学期までにはまだあと数日あるが、学園までは距離があるからな。


 飛行魔法が内緒である以上、アリバイ作りの為に旅もせねばなるまいて。


 だからまあ、共に眠れるのもあと二晩だけなのだ。

その内の一晩くらいは見逃してやろう。



「皆様。到着いたしました」


 メイド長が馬車を止めると、その場で待ち構えていたお父上と従者達が出迎えてくれた。


 ディアナを自ら抱き上げた領主様おちちうえ

そのままメイド長が先回りして出してくれた車椅子に座らせた。



「パトリシア、その方はもしや?」


「はい。ご想像の通りです」


 あら?

従者達には私の事は内緒なのかな?

諸々説明出来ないから、新しい客人として扱う事にしたとか?

そういうの先に言っておいてもらわんと困るのだが……。



「きゃ!?」


 お父上について屋敷に向かっていると、後方から悲鳴が聞こえてきた。


 ああ。私の人形か。誰かが驚いたのだろう。

何せ、四体に増えていたのだからな。

しかも、全部動かないし。


 私のも置いてきてしまった。

流石にあれを抱えて歩き回れんからな。

メイド長に後で部屋に運んでもらうしかあるまい。


 まあメイド長が上手く誤魔化しておいてくれるだろう。



「エリク様!!」


 メイド長?

何を慌てた声を……!?



「妖精さ~ん?

 あれ~?空っぽ~?

 な~んかおかしいなぁ~?」


「フラビア!?

 お主が何故ここに!?」


「妖精さんの声?

 誰、あなた?

 何で妖精さんと同じ格好なの?

 ねえ、あなた誰?

 私の妖精さんとどういう関係?」


 何だ!?

いったいどうしたと言うのだ!?

何なのだあの禍々しい気配は!?



「エリク!

 人形に魔力を!」


 しまった!呪いか!



「えへへ~妖精さぁ~ん♪

 良いよぉ~♪一つになろっかぁ~♪」


「フラビア!!」


 フラビアの抱える人形から強烈な呪いの力が吹き出した。

そのままフラビアを包み込むように、繭のような物を形成していく。



「あはははははははははははは!

 はぁ~!!ふふふ!きゃはは!ひゃっはっはっはぁ!」


 繭が収束するように消えていくと、私と同じ衣装を身に纏ったフラビアが、前かがみで腕を垂らしながら立っていた。

人形は姿を消し、その代わりのように、フラビア自身が強烈な呪いの力を放ち続けている。



「「エぇ・リぃ・クぅぅぅぅうううう!!!」」


 フラビアともう一つ、聞き覚えのない声が私の名を呼んでいる。まるで私を求めるように、手を伸ばし、一心に視線を向けてくる。



「叔父様!ディアナを!」


「パトリシア!いかん!下がれ!」


「ユーシャ!皆を下がらせろ!」


「うん!」


「メアリも!

 誰も近付かせてはダメよ!

 これは普通じゃないわ!」


「はい!」


 ユーシャとメイド長の迅速な行動で、すぐさま周囲の者達は距離を取った。馬車に近かったメイド達も無事に逃げられたようだ。フラビアが私にしか興味がない様子なのも幸いしたようだ。



「私からいくぞ!

 パティ!補助は任せたぞ!」


「ええ!」


 パティの魔法ではフラビアを傷付けかねんからな。

今のフラビア相手に加減も難しかろう。


 私はフラビアに向かって魔力手を放った。

そのまま侵食に繋げられれば、無力化出来る可能性はある。

見た感じ相手は呪いの塊だ。私の力ならば相性が良い筈だ。



「「ようせいさぁ~ん!!」」


「!?」


 弾かれた!?

何だ!?あの魔力は!?

呪いの力とフラビアの魔力が混ざっているのか!?

これでは侵食が通らんぞ!?



「エリク!

 無理しないで!」


 私の眼の前にまで迫ってきていたフラビアが、突然横から吹いた強烈な風に吹き飛ばされた。



「パティ!

 やつには魔導が効かん!

 先ずはあの魔力を剥がさねば!」


「任せて!」


 私に代わってパティが前に出る。

ゆらりと立ち上がったフラビアに向かって、間髪入れずに無数の水弾を放った。しかしその全てが、私の魔力手と同じようにフラビアの纏った呪いの魔力に弾かれた。



「「エぇリぃクぅうう!!」」


 相変わらず私の事しか見ていないようだ。


 これはあれか?

フラビアだけでなく、人形にまで惚れられていたのか?

エリクと呼んでいるという事は、人形の意思か何かが介在しているのでは?


 まったく。どうしてこうなった。

だがまあ、愚痴っていてもどうにもなるまい。


 とにかく先ずは魔力を消耗させよう。

大丈夫。私も戦闘訓練は続けてきた。

落ち着いてやればどうにでもなるはずだ。

この身体の機能もある。ぶっつけ本番だがやるしかない。



「パティ!

 お前も無理はするなよ!

 交代で攻めてこやつの魔力を消耗させていくぞ!」


「おっけぇ~!」

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