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01-65.帰り道

「では、ジュリちゃん。

 色々と世話になったな」


「も~なによ。水臭い言い方しないで。

 また何時でも遊びに来て♪」


「ああ。もちろん。当然だ。

 だがまあ、暫くは顔を出せそうにないのでな」


 ディアナの治療に専念せねばなるまいしな。

今日は本当に特別な外出なのだ。

色々な意味でパティがいてこそなのだ。

お父上も今後はそうそう外出を認めはせんだろう。


 まあ、私の身体の事で何かしらあるかもしれんが。

とは言え、その時はジュリちゃんに来てもらうしかなさそうだな。



「ああ。そういう事ね。

 お嬢様の治療、頑張って♪」


「うむ。

 また落ち着いたら顔を出そう」


「ええ♪楽しみにしてるわ♪」


 私はジュリちゃんと固く握手を交わした。


 本当に色々と世話になりっぱなしだな。

何れこの恩を返せる時が来ると良いのだが。



「じゃあね!ジュリちゃん!」


 今度はパティがジュリちゃんに抱きついた。



「もう♪ダメよパティちゃん♪

 あなたには婚約者が出来たんだから♪」


 嬉しそうにしながらも、優しくパティを引き剥がすジュリちゃん。ジュリちゃんは乙女でもあり、紳士でもあるのだ。そういうところ、割とキッチリしているようだ。


 まあ、パティの抱きつきグセにも最初は驚いたが、本当に親しい相手にしかしていないようだし、そう心配も要らんだろうがな。精々私達とメイド長、お父上とジュリちゃんだけだし。いや、他にもいるのかもだけど。学園での交友関係とかは知らんし。きっと友達も多いのだろうし。



「えへへ♪

 ありがと!ジュリちゃん!」


 ジュリちゃんの手を握ってブンブン振るパティ。

なんだか子供のようだ。元々素直に甘えられる大人が少ないのだろう。お父上の方は周囲の目もあっただろうし。その点、ジュリちゃんは特に相性が良かったのかもしれない。メイド長は母というより姉とかの方が近いだろうし。



 それからユーシャとディアナもジュリちゃんにお礼を言って、皆で馬車に乗り込んだ。


 これで今日のデートはお終いだ。

皆それぞれ、最後にジュリちゃんからお土産として渡された人形を一つずつ膝に乗せて、馬車の中で向かい合った。



「折角だからシャッフルしてみない?」


 何故かこの人形、全部同じそっくりさんなのだ。

多分、以前から呪いの人形を越えようとして、試作していたものたちなのだろう。

それを細部まで手直ししてお揃いにしてくれたのではなかろうか。


 服装等も寸分違わず一致している。

ぶっちゃけ、少し馬車が狭く見える。

元々馬車自体に十分過ぎる広さはあるのだが、人形も小さいとは言え、一、二歳児程度はあるのだ。

しかも服装は例のゴスロリだ。それが我ら四人の膝の上に鎮座していれば、相応に圧迫感も生じるものだ。


 というか、私の服装結局ゴスロリのままだったわね。

パティ、着替えなんてさせてくれそうになかったし。

私も強くは言わなかったけど。

まあいいか。流石に着替えくらいあるだろう。

もう人間の服を着れるのだ。

折角だから色々試してみよう。



「そんな事しても私のはわかるだろう。

 今でも呪いを放っておるのだ」


 私の膝に乗っている人形は、つい数刻前まで私が使っていたものだ。

空いた人形も結局ジュリちゃんから貰ってきたのだ。

まあ、新しい身体に何があるかわからんからな。

暫くは予備として側に置いておく必要があるだろう。


 幸い魔力を流しても意識が引っ張られる事もない。

どうやら、新しい肉体の方が呪いが強いようだ。

とは言え、それも私の浄化の力で抑えられている。

そちらも取り敢えずの心配は要らぬだろう。



「でも驚いたわね♪

 まさかエリクがこんなに増えちゃうなんて♪」


 何だかディアナが一番喜んでいそうだ。

抱きしめて頬ずりし始めた。

妙な気分だ。私はこっちにいるのに。



「そうかな。そうかも」


 ユーシャは乗り切らないようだ。

私が中に入っていないからだろう。

既に壁に立てかけるようにして脇に座らせている。


 むしろ私と繋いでいる手や、寄り掛かる二の腕の方が気になるようだ。頭や身体を擦り付けて、まるでマーキングをするかのように、もしくは感触を探るように、或いは一つにでもなろうとするかのように、落ち着き無く身体を動かしている。



「あまり暴れるでない。もう少しの辛抱だ。

 帰ったら好きなだけ甘えさせてやるとも」


「うん。約束」


「やっぱりユーシャは残りなさい。

 そんな姿を見てエリクと引き離したりできないわ」


「ダメ。パティの意見は聞かないよ。

 それにこれは今だけ。沢山補充しとくの」


「ふふ♪

 愛されてるわね♪

 パティも、エリクも♪」


「嬉しいけど困ったものね。

 増々襲いたくなってしまうわ」


「別に良いのに」


「ダメだ。認めんぞ」


「「「ケチ」」」


「な!?」


「どうせエリクだってすぐに我慢できなくなるわ」


「最初から抑えきれてなかったものね」


「えへへ。またあれやってね」


「その前に私とディアナよ。

 ユーシャと盛り上がってからじゃ、加減を間違えられてしまいそうだわ」


「大丈夫だ。傷ならすぐに直せる。

 不安なら最初から魔力を流しておこう」


「破壊と治療を同時に……何かに目覚めないかしら」


 どえむ的な?

いや、違うなこれ。なんか真剣に考え始めたし。

どうやら成長的なやつだ。サ◯ヤ人的な。

死にかけて回復してを繰り返す事で、爆発的な成長が齎されるのではと考えたようだ。ディアナの筋力の話から着想を得たのだろう。



「冗談だ。止めておけ。

 加減を間違えて即死させてしまえば、治療も出来んのだ。

 それに回復が歪な形で為されれば、パティの美しい肢体が損なわれるやもしれん。そんな事は認めんぞ」


「えへへ♪」


 チョロい。



「むぅ」


 ユーシャが胸を押し付けてきた。

しかも、私の腕を挟み込むように。



「ねえ、パティ。

 何で私達にはあれ無いのかしら?」


「きっとお母様の血筋の影響よ。

 お祖母様も似たようなものだし」


 何も言うまい。

いや、私は本当にパティの身体が好みだがな。

とは言え、それを今口にする勇気はない。

私の腕がこのままへし折られかねん。



「そろそろ屋敷も近いのではないか。

 皆、降りる準備を済ませておくのだぞ。

 今日は早く休むのだ。特にディアナはな」


「つまり私だけ寝かせてユーシャとパティと楽しみたいと」


「しかも待ち切れないみたいね」


「えへへ♪」


「毎度毎度そっち方向に話を持っていくのは止めぬか?

 お主ら、姫と貴族令嬢であろう?

 相応しい振る舞いを身に着けようとは思わんのか?」


「別に姫として扱う人もいないもの」


「礼儀作法はこれからお勉強するもの」


「私は冒険者だもん。関係ないもん」


 はぁ……。こやつら。揃いも揃って……。



「ならぬ。

 もう少し淑やかな会話を心がけよ」


「そういうエリクこそ、新しい身体に相応しい話し方をするべきでなくて?」


 うぐっ……それは確かに……。

パティめ。痛い所を突きおる。



「そうよ!エリク!

 今はもうエリクだって可愛い女の子なんだから!

 そんな話し方は変よ!直すべきだわ!」


 そこまで言う!?

ディアナってたまに言葉が痛烈なんだけど!

実は心の闇とか溜まってた!?

無理もないけど!!



「エリクはエリクだよ。

 どっちだって良いでしょ」


 ユーシャ!

やっぱりユーシャは味方なのね!



「話し方の話題は以前したであろう。

 お主ら、笑っておったではないか」


 しかも今より小さくて愛らしい人形の姿の時に。



「まあまあ。試しに少しだけね」


「じゃあ、取り敢えず『のじゃ』って付けてみて」


「なんだそれは?」


 のじゃロリか?

いや、今の私、別にロリって感じではないけど。

ユーシャより少し背が高くて、パティと同じくらいだ。

出るとこ出て、締まる所は締まってるナイスバディだ。

これはパティかジュリちゃんの理想体型だったりするのだろうか。いかんな。そういうのは考えるまい。


 何にせよ、人形を元にそのまま大きくしたというわけでもなく、ちゃんと人間らしい肉体だ。そういう色物系の要素は必要ないと思うのだが。



「ほら、難しい事考えなくていいから。

 エリクの話し方に近いのから試そうってだけよ」


 まあ良いがな。



「それで?

 何を話せばよいのじゃ?」


「「ぷっ!」」


「おいこら」


「「あっははははは!!」」


「やめるのじゃ!

 ディアナを興奮させるなと言っておるじゃろうが!」


「「ぶっわははははは!!」」


 あかん、つい慌ててそのまま話しちゃった。



「エリク様。

 少々賑やかすぎではありませんか?」


「すみません……」


 メイド長の声が聞こえた途端にパティとディアナは大笑いを止めたものの、それから暫くも肩を抱き合いながらクスクスと笑い続けた。


 まったく。仲の良いこって。

お淑やかさの獲得はまだまだ先の話になりそうだな。

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