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01-63.新装備

「凄いな。

 本当に驚いたぞ」


 新たな肉体は何の抵抗も無く私の魔力を受け入れた。

まるでこの肉体には魔力抵抗が存在していないかのようだ。

どころか、当然のように意識まで取り込まれてしまった。

結果的に人形の呪いと同じ機能まで再現されているようだ。

流石にこれが意図的なものとは思えないが、ジュリちゃんは間違いなくやり遂げたのだ。


 試しに自分の頬を触ってみる。

撫でたり抓んだりして、その柔らかさを確認する。


 完璧だ……。完全にこれは人の少女のそれだ。

自分の頬なのに、ずっと触っていられそうだ。



「ジュリちゃん。

 これは間違いなく以前の肉体を超えている。

 私が保証しよう」


「嬉しいわ♪

 私も自信あったの♪」


 意外と軽めの感想だな。

先日のように興奮してハグしてくるわけではないのだな。

この身体が何処からどう見ても人間の少女だからだろうか。



「てことは、取り敢えず問題は無さそうね。

 少し動いてみて。こっちでも色々確認していくから」


「うむ」


 寝台から立ち上がると、パティが両手を広げて正面に立った。



「すまんな」


 最初はユーシャと決めておるのだ。



「ダメよ。

 必要な事だもの」


「意地悪を言うでない」


「あら。

 意地悪を言っているのはどちらかしら?」


「むぅ……」


 折角パティが頑張ってくれたのだものな。

ここは曲げるべきか?

やはり融通が効かなすぎか?



「ふふ♪冗談よ♪」


 良かった。そう言ってくれて。

本当にスマンな。パティ。

次はお前の番だ。


 パティは手を降ろして、私の全身を触りながら、一つ一つ反応を確認していった。



「うん?

 おかしいわね。

 ここはもっと魔力が貯まるはずなのに。

 エリクったら、手を抜いているのかしら?」


 パティが私の身体に備わった(ご立派な)胸を弄りながら、妙な事を言い出した。



「全体に満遍なく送っておるだけだ。

 そこだけに集中して魔力を流すわけがなかろう」


「違うわ。

 ここは魔力タンクの役割があるのよ。

 最初に打ち合わせた時に説明したでしょ」


 ああ。そう言えば。

たしか、毒魔竜のブレスを再現する為に必要だとか言っておったな。胸のサイズもその為に大きくせざるを得なかったとか。そんな事も後から愚痴っておったな。



「すまん。

 しかしその手の情報は今この場で説明しておくれ」


 全部は覚えてないし、追加やオミットされたものもあるだろうし。



「それもそうね。ごめんなさい。

 手早く説明していくわね」


 少しの間パティの話を聞きながら、身体の使い方を学んでいく。これは近い内に色々試してみねばな。出来れば町の外で魔物共を相手にした方がよさそうだ。ディアナの下を離れてそれを試すのは中々難しいとは思うがな。最悪、庭の隅でもお借りする事にしよう。



「呼吸も忘れないでね。

 基本的には魔力を流している間は身体が勝手にしてくれるけど、もし万が一機能不全でもあって止まってしまったら連鎖して幾つかの機能が停止しちゃうから。再稼働にも時間がかかるから戦闘中なんかは特にね」


「うむ」


 基本的に私がこの身体を出る事は想定していないようだ。

もちろんメンテナンスの為に止める事もあるけれど、一度完全に動き出してしまったこの身体を長い間止めてしまうと、最悪二度と動かせなくなるかもしれないらしい。いくら私が操っているとはいえ、ブレスの為の器官とかはこの身体自体が動かしているのだ。


 仮に肉体を離れるとしても、魔力供給と心肺の操作は止めるわけにもいかないようだ。



「まあでも、そうそう心配は要らないわ。

 今でも人間とは比べ物にならない程頑丈だから。

 それにこれから素材同士もより深く馴染んでいくはずよ。

 最初だけ無茶しなければ、ドラゴンにだって負けない強靭な肉体を得られるわ。理論上は」


「そうか。気を付けよう」


「そっち終わった?」


 ディアナを連れたユーシャが部屋に入ってきた。


 私は思わずユーシャの下へ駆け寄った。



「エリク?」


「ああ!クリュス!

 ずっと触れたかった!

 頭を撫でてみたかった!

 抱きしめたかった!

 愛してるわ!クリュス!

 待たせてごめんね!クリュス!」


「ふふ。もう。

 私はユーシャだってば」


 ユーシャは仕方ないなぁと私を抱きしめかえしてくれた。

ユーシャの温もりが全身に伝わってくる。

もう二度と離したくないという気持ちが溢れて止まらない。


 その内に、加減も忘れて力の限りでユーシャを抱きしめていた。ユーシャは痛みを訴える事もなくされるがままになっている。ユーシャでなければ危なかった。他の誰かにこんな事をすれば、骨は砕け、肉は弾け飛んでいただろう。私の身体は人とは違うのだ。どれだけ似ていても。加減を間違えてはいけない。そう頭の片隅にある冷静な部分では理解しているのに、どうしても腕の力を緩める事が出来ない。より生物に近い身体を得たことで、制御できない衝動までもが生じてしまったかのようだ。まるでユーシャを自分の中に取り込んで一つになりたいとでも言うかのように私はユーシャを掻き抱き続けた。




----------------------




「すまん。

 大丈夫か?

 どこか痛いところはないか?」


 暫くして冷静になった私は、慌ててユーシャに治癒の為の魔力を流し込んだ。



「うん。平気。

 ちょっと服よれちゃったけど。へへ」


 ユーシャはまるで嬉しくて堪らないというように、ニヤけるような笑みを零した。



「熱烈だったわね。

 わかってると思うけど気をつけなさいよ」


「うむ。

 次はパティの番だったな」


「今は遠慮しておくわ。

 流石に命は惜しいもの」


「そうか。残念だ」


 まあ、ユーシャに気を遣ってくれたのだろう。

後で落ち着いてから続きをするとしよう。



「本当にエリクなのね~」


 ディアナが私の手を弄って感触を確かめている。



「私も後で抱きしめてね♪」


「うむ。今晩な」


「つまり解禁?」


「せんぞ」


 まったく。



「それより、エリク。

 ディアナを見て何か言う事は無いの?」


「ああ。うむ。

 よく似合っているぞ。

 ところでディアナは前衛志望なのか?」


 ディアナの装いが変わっていた。

どうやら、別行動をしている間に着替えてきたようだ。

冒険者風の動きやすそうな格好だ。

これも贈り物の一つなのだろう。



「えへへ~♪

 良いでしょ~♪」


 後半は聞き飛ばされたようだ。

それだけ浮かれているらしい。可愛い。


 ディアナは立ち上がって見せたくてウズウズしているようだ。私は魔力手で空中に椅子を作ってディアナをそこに座らせ、全員で観察しながら褒め称えた。そのまま照れすぎたディアナが思わず戻してくれと言い出すまで続けた。



「ところで私の服は?」


 今は最低限の布地で申し訳程度に一部が隠れているだけだ。要は下着姿だ。パティが色々調整するのに、服を着せておくと邪魔だったのだろう。



「こっちよ。

 案内するわ」


 パティに先導されて先程までディアナ達が使っていたと思しき部屋に移動した。そこは商品用衣類の保管場所兼、試着室になっているようだ。大きな姿見まで設置されていた。



「エリクのはこれよ」


「おい、まて。

 何故ゴスロリなのだ?

 しかもこれ、あの人形の着ていたものと同じではないか」


「やっぱエリクと言えばこれよね♪」


「勘弁してくれ!」


「ダメ。文句言わないの。

 折角ジュリちゃんが作ってくれたの無下にするつもり?」


「いや、しかし……」


「大丈夫よ。

 幾つか服はあるから。

 最初はこれ。はい。着て」


「今日はディアナの為の外出でもあろうに。

 私が目立ってどうするのだ」


「往生際が悪い!」


「ぐっ……わかった。一度だけだぞ。

 見せたらすぐに着替えさせてもらうぞ」


「はいはい♪

 それでいいから♪」


 渋々、再び黒ゴス衣装を身にまとった。

変な所はないか?流石に痛々しくないか?


 服を着て、恐る恐る姿見を覗き込むと、そこには驚く程可憐な美少女が映っていた。私か。



「あらあら♪

 見惚れちゃって♪

 無理もないわね♪」


「まあ、うむ。

 そうだな……ふむ」


 いや、まあ。これならばそう不自然でもないのか?

意外と様になっているのではないか?



「じゃあ戻りましょう」


「他の服は?」


「先ずは見せてからでしょ。

 ディアナとユーシャ、それにジュリちゃんにも」


「むう。そうだったな」


 仕方ない。

少々気恥ずかしいが、約束だからな。

決して、このままでもいいかな、なんて思い始めたわけじゃないからな。

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