07-69.得意分野
カグヤ!! あれ何!? なんで当たらないの!?
『……わからん』
なんでエリクばっかり!!
『元マスターは確かに有能だ。しかしあれはマスターの経験あってのものだ』
何かわかってるなら言ってよ!
『わからん。わからんが……』
何!? わからんが何なのさ!?
『集中しろ。からくりを解くのは我が務め。しかしそれもマスターが目を離さずにおればの話。我らは一心同体だ。信じて戦い抜け。マスター』
もう!! 早くなんとかして!
『……ああ。任せろ』
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銀花ったら何かインチキしてるわね。
『心は覗いてないわ!』
そうね。それなら気付けない筈はないものね。
それにどちらかと言うなら未来予知みたいな何かだと思うのよね。私の思考というより肉体や魔力の動きそのものを先読みしているように見えるの。
『解析は任せて! ユウコは集中して! ユウコが倒れたらお終いよ! 取り戻すんでしょ! コルピスを!!』
ええ。お願いね。サクヤ。
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ふむ。これではダメだな。
『ご不満ですかぁ~?』
いや。オトヒメはそのまま続けておくれ。
『はいぃ~♪』
さて。どうしたものか。
『これなら~♪ まけないね~♪』
『じつりょくさ』
『ありすぎ』
フィリアス三人分の処理能力は脅威だな。
『だけじゃない』
『めがちがう』
『みえるけど~♪ みえないもの~♪』
それもお前たちの力ではないのか?
『ちがう』
『オトヒメ』
『べっかくなの~♪』
なるほどな。
『エリク』
『あってこそ』
『オトヒメは~♪ じぶんではたたかえないの~♪』
そうだな。
オトヒメに足りないのは経験だけだ。戦闘向きでないその性格も原因ではあるが、補助は出来るのだ。そんなものは不足などと呼ぶ必要がない。オトヒメが一人で戦うことなんぞあり得ないのだから。
ユーシャとゆーちゃんの動きが手に取るようにわかる。二人が何をするつもりなのかが自然と頭に入ってくる。これは魂の繋がりを利用したものじゃない。魔力の流れどころか意思の動きが見えているのだ。今の私にフェイントの類は通用しない。同じ領域にいない二人が私の想像を上回ることもない。これでは勝負にならないな。さて。どうしたものか。
『ぶっとばす』
『おいかえす~♪』
クルスとコルピスがそう言うならそうしよう。
しかし本当にいいのか? 本当はとっくに怒りなんぞ抱いておらんのではないのか?
『うん』
『どうでもいい』
『おなじく~♪』
ならば対話でもしてやるか?
『ううん』
『ひつようない』
『わからせる~♪』
そうか。ならばそうしよう。
『『うん!』』
すまんな。ユーシャ。ゆーちゃん。お前たちは待たせすぎた。もう容赦はせん。徹底的に打ちのめそう。……でなければ二人の心は動かせまい。
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「なんで……なんでよぉ……」
「銀花。お願い。コルピスを返して」
地に伏しながら、それでも二人は手を伸ばし続けていた。
「ならば先ずは立ち上がれ。話はそれからだ」
「エリクが!! 放してよ!!! エリクのせいでしょ!」
「こんなの……」
二人を拘束しているのはただの圧力だ。神力をそのままぶつけているだけだ。抜け出す方法はいくらでもある。神力を魔力壁のように扱えば安全地帯くらい作れるだろう。単純に身体を補強するのでも構わない。
しかし二人にはそれが出来ない。何かしようとしても私が潰すからだ。術として成立する前に力の出力を阻止しているからだ。お互い身動ぎの一つもしていないように見えて、その実、力の操作は続けているのだ。
「ユーシャ。使える手は何でも使え。言葉を使う事の有用性は理解している筈だ。しかし挑発に拘るな。情に訴えかける事も有効な手段の一つだ。力で敵わぬなら知恵を働かせろ」
「……」
足りぬならば成長しろ。戦いの最中であってもそれはできるのだ。諦めるな。成功体験にばかり執着するな。何にでも挑戦しろ。お前になら出来る筈だ。私は信じているぞ。
「ゆーちゃん。心折れるのが早すぎる。諦めるな。本来のゆーちゃんはもっと強い心を持っている筈だ。争いを怖がりすぎだ。敵意を恐れるな。ユーシャのように我儘になってしまえ。いつものゆーちゃんになら打開策の一つや二つ思いついた筈だ。私を誰より近くで見てきた筈だ。絶望的な実力差が必ずしも勝敗に直結するものではないと知っている筈だ」
「……」
一緒に戦い抜いてきた経験を思い出してくれ。ゆーちゃんにだってある筈だ。誰より自信を持って歩める筈だ。弱気になるには早すぎる。我らに諦めるなんて選択肢は許されていないのだ。だから心を燃やせ。ゆーちゃんに足りないのは心の熱量だ。一度ならず二度までも拒絶されたとて、それは諦める理由にはならぬ筈だ。
「立て」
二人の抵抗を徹底的に潰しながら、それでもこう言おう。
「立ち上がれ」
まだ戦いは終わっていない。諦めなどさせはしない。
「かかってこい!!」
幾度地べたを這いつくばろうとも!!




