07-68.近くて遠いもの
来たか。
「エリク」
「銀花」
「久しいな。二人とも」
随分と鍛え直してきたじゃないか。
「返してもらうよ」
「そしてあなたも取り戻すわ」
「よかろう。二人纏めて相手をしてやる」
正確には四人か。フィリアスたちに頼らない、なんて気概までは持ち合わせておらなんだな。
「ディアナは? 私が相手をしてあげましょうか?」
「いいえ。この戦いを見守るわ」
それもまたよかろう。
「では始めよう」
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「……凄いわね。まさかここまでとは思わなかったわ」
エリクは圧倒的な力でユーシャたちを追い詰めている。二人の努力だって生半可なものではなかったのに。それでも到底届いているとは言い難い。
「ディアナはエリクの運が良かっただけだと思う?」
「どうして?」
パティの質問の意図がわからない。
「今のエリクにはオトヒメだけでなく、コルピスとクルスも力を貸しているわ」
「人数は同じよ?」
エリクたちが四人で戦うように、ユーシャとユウコにはカグヤとサクヤが付いているんだもの。
「フィリアスの力に限らないわ。エリクはいつだって誰かしらの力を借りてきた。本当に自分一人だけの力で勝ってきたわけじゃない。エリクには必要なの。誰かの力が」
「エリク自身の力は大したことがないって言いたいの? ユーシャやユウコには勝てないって?」
「そうよ。エリクも自分で認めていたわ」
「それでもこうして圧倒しているからズルいって? 私がそんな風に考えるわけがないじゃない」
「……そうよね」
パティはどうしたのかしら?
「本当に使われているのはどちらなのかしら」
……う~ん。なんとなくわかったかも?
「パティはエリクが今もまだ道具だって思うの? フィリアスたちが望んだからエリクは突然家を出たって? そう言いたいのかしら?」
「そうだけどそうじゃないわ」
どっちよ。
「ごめんなさい。私も驚いているの。考えが纏ってないの」
エリクがここまで圧倒的な力を見せるとは思わなかったのね。どちらの様子も見てきたパティだからこそ納得いかない何かがあるのかしら。
「エリクは何もしていなかった。ユーシャたちみたいに必死に修行していたわけじゃない。毎日ただ静かに賑やかに暮らしていただけよ。フィリアスたちに愛情を注いでいただけ」
運が良かったというのはそういうこと?
「ならそれが何より大切ってことじゃない?」
「そうかもしれないわね。ユーシャやユウコは違った?」
「そうね。カグヤとサクヤは良い子だけど、二人が求めているものもわかっているもの。それでも全力を尽くしてくれてはいたけれど」
「今度はカグヤとサクヤまでエリクの下に集うのかしら」
「流石にないわよ」
ユーシャとユウコだってちゃんとわかってる。カグヤとサクヤだってそれは同じよ。だからこそ頑張ってこれたんだもの。エリクにどんな力があったって流石にね。
「なんとなくわかってきたわ。パティが気にしてること」
「そう……」
パティはまだよくわかっていないみたいね。
「パティは羨ましいのよ」
「エリクが?」
「違うわ。ユーシャとユウコよ」
「……え? どうして?」
「自分もクルスやコルピスだと同じだと思っているからよ。エリクだったから自分たちを引き寄せたんだって。けれどユーシャとユウコは抗ってみせた。二人にはエリクと戦ってでも欲しいものができたの。それが羨ましいのよ」
「……意味がわからないわ」
「でしょうね」
理解しようとしていないんだもの。パティはエリクに縋っているの。依存しているの。以前のパティと今のパティは違う。とても弱くなってしまったの。誰かに執着することを覚えてしまったから。手放す事を恐れているから。
「パティは一人旅に出たいのでしょう?」
「……ええ」
理解はしていなくても、心の奥底では気付いているのでしょう? このままではいけないって。だからこそ困惑しているのでしょう。先を歩み続けるエリクに追いつけなくて焦っているのよね。理解したいけど出来ないのよね。エリクのことが。ユーシャやユウコのことが。
「大丈夫よ。パティ。エリクはどこにも行かないわ。パティを置いていったりなんてしないわ」
「……うん」
頑張ってね、パティ。私も応援しているわ。そして追い続けるわ。私の目標はパティなんだから♪ いつだってね♪




