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01-49.お節介親父と頑固娘

「遅かったわね。エリク」


『すまぬ。少々話しが盛り上がった』


 どうやらユーシャは耐えきれずに寝てしまったようだ。

二人には悪いことをしてしまった。


 だがまあ、これで仕込みはバッチリだ。

明日にはパティとディアナの関係も多少改善されるだろう。



「まさか余計な事言ってないわよね?」


『なんだ?

 余計な事とは』


「むやみに期待を持たせるような事よ」


『……』


 思い返すと私の振る舞いはマズかったかもしれない……。

重い病を患う少女に話す事ではなかったかもしれない……。



「ねえ?

 何で黙ってるの?」


『いやその……』


「何をどこまで伝えたの?」


『……具体的な事は何も言っておらぬ。

 ただパティを信じろと。それだけだ』


「はぁ……。

 ねえ、あの子に何も言わない理由は説明したわよね?」


『……うむ』


 自分には負い目があるからと。

だから今はまだ明かせないのだと。

あの子を救ったその時にこそ立場を明かすのだと。

そう言っていたな……。



「わかってくれたんじゃなかったの?」


『いや……しかし……』


 だが見てはいられなかった。

あの子はパティの事を全く知らぬわけじゃない。

見ないふりをしてきただけだ。

勇気が無かっただけなのだ。


 パティが報われぬ事も、ディアナが罪悪感を感じるのも、放って置くべきではなかった。私はそう思ったのだ。



「しかしじゃないわよ……。

 他に余計な事してないでしょうね?」


『……』


「何やらかしたの?」


『……約束したのだ。

 パティとディアナが本音で語り合える場を用意すると』


「……冗談でしょ?」


『……すまぬ』


 せめて先にパティと話をするべきだった。

パティの想いを無視したのは私も同じだ……。



「はぁ……」


『なあ、パティ。

 頼む。ディアナと話をしてやってくれ。

 なにも立場を明かせとまでは言わん。

 パティが何をしているのかだけで良いのだ。

 それをお主の口で説明してやってほしいのだ。

 同じような事はメイド長からも言われていたのだろう?』


 パティは知らぬが、既にそれはディアナも知っている。

ディアナなら無理やり理由まで聞き出そうとはせんだろう。

それでも救われるはずだ。報われるはずなのだ。

ディアナもパティも。二人ともが。



「……メアリだけじゃないわ。

 叔父様からも言われたもの」


『皆お主の事が好きなのだ』


「……エリクも?」


『当然だろう。今更何を聞いとるんだ?』


「どれくらい?」


『ユーシャを託せる程だ』


「それは勿論嬉しいけど、今はエリク自身の事で説明して」


『……我が伴侶と認めよう』


「ふふ。なんだか偉そうだわ」


『許せ。柄ではないのだ』


「ダメよ。ハッキリ言葉にして」


『……まあ、待て。

 そういう事はユーシャが起きている時にするべきだ』


「言ったわね?

 約束よ?」


『いや……』


「自分の言葉に責任を持ちなさいな。

 勿論ディアナの事もよ。必ずやりとげるのよ」


『うむ』


「なら良いわ。

 私も少しだけ歩み寄ってあげる。

 それがディアナの為になるとは思えないけれど」


『お主は頑固過ぎるのだ。

 確固たる自分を持つのは良い事だが、偶には周囲の大人の話に耳を傾けるべきだ。それは若人の義務でもあるのだぞ』


「はいはい。反省してるってば。だから話はするって言ってるでしょ。お節介親父みたいなお説教はおしまいよ。そんな事より、ディアナにどんな話をしてきたのか教えてくれる?

 明日頑張ってみるから。これは決して失敗出来ない事なんだから。その為の準備をしておきましょう」


『ぷっ!』


「な!?」


『ククク!あっはっはっは!』


「何がおかしいのよ!?

 ここ笑うとこ!?

 それが大人のやることなの!?」


『いや、すまぬ。ふふ。

 違うのだ。何もバカになんぞしとらんぞ。

 お主とディアナが同じことを言うのでな。

 余計な心配だったと安堵したのだよ。

 これはただそういう事だ。ふふ』


「なによ!もう!

 意地悪エリク!」


『ぷっ』


「また!?」


『クク、待て、笑わせるな。

 本当にお主らそっくりだな。

 歩んできた人生はまるで違うのに。

 これは血の繋がりが為せるものなのだろうか。

 それともお主らの父であるあの御仁の影響だろうか。

 なかなか興味深いものだな。フフ』


「……はぁ」


 パティが呆れ眼だ。所謂ジト目だ。

折角決意したのに急に笑われて良い気はしないだろう。

ディアナとの類似点を指摘されて照れくさいのもあるのやもしれぬ。



『悪かった。

 話してやるともさ。丁度ユーシャも目覚めたようだしな。

 ついでにユーシャにも聞いてもらうとしよう。

 きっとこの子も役立ってくれるはずだ。たぶんな』


 自分で言っておいてなんだが、本当に役に立つか?

ディアナとはまだまともに話も出来ないのに?

まあ、時間の問題とは思うがな。

パティとはこんなに仲良くなれたのだし。



「エリク、パティイジメちゃ、めっ……」


 まだユーシャは寝ぼけ眼だ。

こんな夜中に起こすつもりはなかったのだが。

私とパティが至近距離で騒ぎすぎてしまったからな。



『ユーシャも悪かったな。起こしてしまって。

 それに約束も破ってしまった。すまん。許せ』


「うん……」


 これはすぐにまた寝落ちするかもしれんな。

まあ良い。パティの抱き枕になっているだけでも十分だ。



『さて、ディアナに伝えた事だったな。

 まあ随分と色々と語って聞かせてはしまったのだが。

 例えばだな、』


 案の定ユーシャは早々に寝落ちした。

パティはまたキレた。話し過ぎだと。

これはお伽噺の方は聞けそうにないな。

隙を見てあの本を読んでしまう事にしよう。うむ。

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