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01-46.大爆発

 魔力壁に魔術が接触した途端、以前パティの火炎球を防いだ時と同じようにその場で静止した火の玉は、全てを巻き込んで大爆発を引き起こした。


 以前より遥かに魔力を込められるようになった魔力壁はどうにか爆風を抑え込んではいるものの、ビシリビシリと音を立てながら幾つものヒビが走っていく。



(くっ!このままでは!!)


 爆発は継続しているわけじゃない。

衝撃はすぐに治まるはずだ。後ちょっとだ。

そう自分に言い聞かせて我武者羅に魔力壁の維持を続けた。




----------------------




「エリク!!」


 ユーシャが私を呼んでいる。

体が上手く動かせない。

何故だ?何が起こった?

私は意識を失っていたのか?

皆は無事なのか?

ユーシャ?泣いているのか?

何処か怪我をしたのか?

大丈夫か?


 上手く言葉が出てこない。

まるで自分自身の制御に集中できていないようだ。


 これは魔力を使いすぎた影響だろうか。

もしや、エリクサーの魔力が薄まりすぎたのか?


 どうやら思考だけは段々ハッキリとしてきたようだ。

体の調子も戻るだろうか。

早く声をかけてあげなければ。

ユーシャが心配してしまう。

この子を泣かすわけにはいかないのだ。



「ユ……シャ」


「エリク!!」


「だい……ぶだ……なく……な……」


「エリク!エリク!エリク!」


 違うのだ。

そんな顔をするな。

私は無事だ。ただ少し言葉が出ないだけなのだ。



「びん……を……」


「うん!!」


 ユーシャが豪快に胸元を破いて薬瓶を取り出した。

そのまま人形わたしを押し付けるようにして触れさせた。



『あ~……あ。

 うむ。こちらなら問題は無さそうだ』


「エリク!!」


『大丈夫だ。泣くなユーシャ』


 だがいかんな。魔力が随分と減っている。

どうやら消費が多すぎれば回復も相応に時間が掛かるようだ。この調子だと全回復するには小一時間掛かるだろう。



『奴はどうした!?』


 マズい!

呑気に自己分析なんぞしてる場合ではなかった!!



「生きてるわね。驚いた事に。

 流石に意識は失ってるけど」


 パティが無造作に黒焦げの襲撃者を放りだした。

どうやらここまで足を掴んで引きずってきたらしい。

至近距離で爆発に巻き込まれて吹き飛ばされたようだ。



『本当にそれは生きているのか?』


 一応原型は保ってるけど……だいぶ見た目は……。



「ええ。間違いないわ。

 適切に治療すればまだ助かるはずよ」


 その割にはぞんざいな扱いだったな。

まあ、された事を思えば当然か。

危うく全員死ぬ所だったのだ。仲間のはずのエルミラごと。



『犠牲者は?』


「いないわ。エリクのお陰よ。

 ありがとう。助かったわ。本当に。

 下手をすると屋敷の方も吹っ飛んでいたもの」


『そうか。良かった。

 すまんが私は暫く動けそうにない。

 後の事は任せてもよいか?』


「必要ありません。

 こちらで処理致します。

 どうかパティもお連れ下さい」


 メイド長も現れた。

既に事後処理に動いていたようだ。

忙しいらしく、またすぐに離れていった。



『だそうだ。

 部屋に戻ろう。二人とも』


「……そうね。先に休ませてもらいましょう」


 パティはユーシャの胸元を整えてから、ユーシャの手を引いて歩き出した。



「良いの?」


『良い。後はメイド長に任せておけ。

 私が動けない以上、パティにはユーシャの護衛も任せねばならん』


「逆でしょ」


「逆じゃないわよ?」


『逆だったかもしれんな』


 ついつい忘れてしまうけど、パティは姫なのだ。

本来ユーシャがパティを守るべきなのだ。

別にユーシャは騎士でもなんでもないけども。


 まあ、そんな関係になれるのはまだまだ先の話だな。

私もユーシャも精進せねば。


 今回は魔力を無駄に使いすぎた。

あの襲撃者の魔力量が私以上という事はありえない。

もっと効率よく防げたはずだ。

魔力壁の作り方ももっと研究してみよう。



「パトリシア!!無事だったか!!」


 領主邸に入ると領主自ら迎えてくれた。

どうやら様子を見に行こうとしていたのを周りの者達から止められていたようだ。困り顔の執事長達が側に控えている。



「はい。ご心配をおかけしました」


「いやいい!無事で何よりだ!

 ユーシャも怪我はなっ!?」


 ユーシャの破れた胸元を見て真っ青になる領主様。

いったい何を考えたのだろうか。



「領主様。ユーシャも大事ありません。

 少々破片で服を引っ掛けてしまいましたがそれだけです」


 パティがユーシャと領主様の間に立ち塞がった。



「ああ、うむ。それは良かった。

 エリク殿は?」


 私の体は今はユーシャが抱きかかえている。

ぐったりどころか、完全に生気が無い状態だ。

ただの人形だもの。当然だ。何なら呪いを放ちかけている。


 パティも同じことに気付いたのか、ユーシャの胸元に抱かせるように持ち直させた。呪いは薬瓶と触れ合った事で抑え込まれたようだ。しかもこれなら胸元も隠せて一石二鳥だ。



「少々お疲れのようです。

 私達を守るために力を振り絞って下さいましたので。

 エリク様のお陰で犠牲者は一人もおりません」


「そうか!ああ。本当に良かった!

 エリク殿にはなんと感謝したらいいか。

 いやすまない!引き止めてしまったな。

 今は部屋に戻って休むと良い。

 目覚めたら改めて話をさせてもらおう」


「お気遣い感謝致します」


 パティは領主様に一礼して、再びユーシャの手を引いて歩き出した。

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