07-21.温度差
「それでね、エリク。次は私の番だと思うの」
「何の話だ?」
「パティって一番組に昇格したわよね?」
「……」
「正直に答えて。パティにはユーシャやユウコと同じくらい強い想いを抱いているわよね? そういう意味でも魂を掴まれてしまったのよね?」
「……まあな」
「私だけ出遅れてしまったわ」
「そもそもそれが目的の十年であろう。そしてディアナの番はまだこれからだ。焦る必要はあるまい」
「たった一年程度で至るなんて、エリクはチョロすぎないかしら?」
「……一年半だ」
「嘘ね。実際には最初の半年程度で逆転していたわよね」
「……」
鋭い……ディアナ鋭い……。
「やっぱり必須条件は二人きりになる事かしら」
うん、まあ。急激に関係が進んだのは間違い無いよね。
「今から駆け落ちしない?」
「ユーシャが泣くぞ」
今度こそ立ち直れんだろうが。
「いいえ。ユーシャはそんな子じゃないわ。いっぱいイジケてからエリクに怒りを抱くだけよ。それからユウコやパティに依存するでしょうね」
それもある意味仲直りか? いくらなんでも強引過ぎるけど。
「流石に冗談よ。次は私の番なんだから大人しく待っているわ」
それは何より。別に次の十年に入らずとも、ユーシャの後はディアナを優先して過ごす予定だものな。その後はゆーちゃん、アウルムの順だ。それから最後にまた皆で過ごして最初の十年が終わるのだ。まだまだ先は長いなぁ……。
「けれど他の手段は試してみたいわね」
ディアナは再び私に絡みついてきた。
「その手のゴリ押しは通じんぞ」
「本当にそうかしら?」
「何か秘策があるのか?」
「逆を目指してみようと思うのよ」
「逆? それはどういう意味だ?」
「パティには大人の色気が備わったわ。だから私は幼気な魅力を磨こうと思うの」
「私はロリコンじゃないぞ」
だいたい今更ディアナが幼児になったとしても、シュテルとキャラが被るだろうが。あの子は幼女モードと大人モードを使い分けてるんだから。
「ふふ♪ 私とシュテルでは前提が違うわ♪」
「つまりなんだ? 私が特別に惚れているディアナだからこそ先に進めるとでも?」
「ええ♪ エリクの新しい扉を開いてみせるわ♪」
「方向性が間違っておるだろうが。だいたいディアナは私と同年代の容姿を維持すると言っておったろ」
「同年代はユウコとアウルムもいるじゃない」
「だからってだなぁ」
何か根本的に間違ってるぞ。
「もう少し他の手はないのか?」
「今更関係ってそう大きくは変わらないと思うの。何か大きな切っ掛けがないとね」
「それもわかるがなぁ……」
「肉体改造が嫌ならもっと精神的なものかしら? 私のことを調教してみるのはどう? なんでもやらせてあげるわよ?」
「勘弁してくれ」
どうしてそう、アブノーマルな方向にばかり走りたがるのか。このお嬢様は。
「いえ。ダメよね。こんな受け身な考え方は。私が導くのよね。エリクが私を調教するように」
「やめんか!」
もう! 誰か助けて!
「エリクも真剣に考えて頂戴。エリクの希望には出来るだけ沿うようにしてあげるから」
えぇ……。何も案出せなきゃ調教させられるのぉ……。
「素直に修行を進めよう」
「もちろんそれもやるわ」
「一本に集中しよう」
「ダメよ」
「今はユーシャの番だ。今日の別行動は特別だ」
そう考えるとパティも少し冷静ではなかったな。とはいえ私と二人でいればユーシャが前に進めないのも事実だ。困ったものだな。本当に。
「本格的に始めるのは私の番になってからで構わないわ。二人だけの秘密を作りましょう」
「なら今考えても仕方があるまい。先ずは心を繰る術を学ぶのだ。心を閉じるのは並大抵のことではないのだぞ」
「ふふ♪ 楽しみね♪」
その内容すら決まっておらんだろうに。
「心を繰る術ね……ふふ♪ そういう手もあるわよね♪」
何考えてるんだろうなぁ……。
「ごめんね、エリク。もう用事は済んだからアウルムと変わってきてくれるかしら?」
えぇ……。
「ディアナはパティと私を離す為に名乗り出たのだろうが……」
ディアナがアウルムと悪巧みを始めたら、私が代わりにパティと過ごすことになるだろうが。
ユーシャの手前、今パティと過ごすのはマズいだろうに。最悪また機嫌を損ねてしまうぞ。
「大丈夫よ。もう二人とも頭は冷えたでしょ。パティもきっと後悔してるわよ。本当はずっと仲直りしたがってるんだから」
「だからって私が慰めればユーシャが良い気はせんだろうが」
「心配は要らないわ。ユーシャにはユウコがついてるんですもの。エリク達を完全に見失ってからの一年間だってユウコがユーシャを支えていたのよ。あの子の扱いはお手の物よ」
フォローしきれていなかったから引き籠もったんだろうが……。
今のこの状況もその結果だ。喧嘩して締め出した私が言うのもあれだけど。




