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万能回復"薬"に転生しました!? ~ どうしても飲んでもらえないのでこの子(達)と生きていきます ~  作者: こみやし
07.新婚生活編(仮)

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07-19.困った愛娘

「もうすぐだね……」


『そうだなぁ……』


 もう直休暇は終わりだ。あっという間の三日間だった。流石に短すぎたかもしれない。パティに頼んだら延長できないだろうか。これ以上は厳しいか。その気があるなら最初からもっと期間をくれていただろうし。



「このまま逃げちゃおっか」


『全てを捨てて私だけを持ち逃げするのか?』


 だいたいどこへ逃げるというのか。ここは閉じられた箱庭なのに。出られるのは十年に一度だけなのに。今度は海の底でも探索してみるか? 案外海底神殿なんかもあったりしてな。それはそれで面白そうだ。私の魂の拘束が解かれたら誘ってみるとしよう。



「もともとエリクは私の物だもん」


『そうだったな』


「本当にもう一番じゃないの?」


『何度も言っとるだろ。ユーシャが一番だ』


「嘘つき」


 ほらまた。そういうこと言う。



『他の者達を手放せぬからといって、ユーシャが一番ではない理由にはなるまいよ』


「そういうのは妥協って言うんだよ」


 えっらそーに。



『私の愛が信じられなくなったのか?』


 ユーシャの為に肉体まで手放したのに。魂を曝け出して、手も足も無い薬瓶に戻って、私の全てを委ねているのに。



「本当に私のエリクなら何をしても許してくれるんだよ。そんなことすら知らないなんてあなたは偽物なのかもね」


 むっ……。



『私だって怒るさ。ユーシャの事を疎ましく思う事だってあるだろうさ。お前はもう小さな子供ではないのだ。私の対等なパートナーだ。誰より愛しい人だ。だからこそ見逃せん事もあるものさ。ユーシャがそう思ったように、私のユーシャだってもっと良い子だった筈なのだ。人の心の痛みがわからぬ子ではなかった。人の愛を理解出来ぬ子ではなかった。私は今でもそう思っているのだよ』


「……親バカじゃん」


 まあ流石にちょっと無理があるかなとは思わなくもない。私だって人間だもの。親だもの。



『いつまでも親子は親子だ。それは変わらぬ。どうしても私の目線には母としての感情が籠もってしまう。だからって伴侶として見ていないわけじゃない。複雑なのだ。人の心は』


 だからこそ私だけでは足りぬのだ。



『ユーシャがパティに対して思う気持ちだって同じだ。大好きなパティを疎ましく思う気持ちだってあるだろうさ。時にはぶつけ合うのも大切だ。それが喧嘩なのだ。よかったな、ユーシャ。私以外に本気で喧嘩してくれる相手が出来たじゃないか。どれだけ喧嘩しても愛してくれる人が出来たじゃないか。大切にするのだぞ。それはかけがえのない相手だ。ユーシャを正しく成長させてくれる存在だ。母だけでは喧嘩相手としては不適切だ。パティは私のように甘くはない。それが大切な事なのだ。人が人らしく成長する為にはな』


 ユーシャにとってはこれも初めての事だったのだな。私はつくづく保護者失格だな。ユーシャを一人にしてしまった。過保護に抱え込んでしまった。他者との争いを徹底的に避けさせてしまった。正しい喧嘩の仕方を学ばせてこなかった。仲直りの方法を教えなかった。だからこそこの子は、大人になった今になって酷く落ち込んでいるのだ。大好きな人に本気で嫌われるのが怖くて堪らないのだ。



『これはなにも人に限った話でもあるまい。神であっても必要なのだ。母さんには近くで止めてくれる人がいなかった。心配してくれる人はいても、毎日側にいて喧嘩してくれる対等な相手はいなかった。だから母さんは道を踏み外した。お前は母さんとよく似ている。見た目だけでなく中身もだ。けれどユーシャにはパティがいる。だから大丈夫だ。例えこの先神に至ったとしても、それで母さんと同じように失敗してしまったとしても、必ずパティが喧嘩しにきてくれる。私では止められずとも、私達を止めてくれる人がいるのだからな』


「……うん」


『……どうだ? 頑張れそうか? 明日からまたパティと仲直りする為に努力できるか?』


「……うん」


『よし。良い子だ。私はいつだって応援しているからな』


「……エリクって節操ないよね」


『……何故そうなる』


「日和見、風見鶏、お調子者、八方美人」


 ひどい……。



『もしかして喧嘩を売ってみているのか?』


「うん」


 うんて……。



『いや、そういう意味で言ったのではなくてだな……』


 というか私とだってもう喧嘩したじゃん……。



「私がエリクを正しい道に戻してあげる。だから喧嘩する」


 なる……ほど……。


 筋は通ってる……のか?



「エリクの正しい道は私の前にだけあるの」


『何故前なのだ。普通隣か後ろだろうが』


「エリクは私のお手本なんだよ。エリクがママを止めたみたいに、私だってエリクを止めてあげるの。変な方向に行こうとしていたら正しい道に引きずり戻すの」


『自分で自分の手本を導くのか?』


「うん」


 どうしてそう考えたのかはわからないけど、まあ悪くない考えなのかもしれない。少々回りくどい事を言ってるけど、ある意味反面教師に近いものなのかもしれない。



『それで喧嘩か?』


「うん」


『私は今、道を踏み外しているのか?』


「うん。だってそうでしょ。本当ならパティと同じ立場の筈なんでしょ。それが正しいんでしょ」


 なるほど。私を正しい道に導く事で、間接的に自分の道を正そうとしているのか。自分から素直になるのは癪だから私を間に挟もうというのか。



『私が言いたいのはもう少し素直にだなぁ……』


「私が一番だって証明したいんでしょ?」


 だから断るなと? それは構わんが、やっぱり何か間違ってないか?



「エリクは私の道しるべだよ。あの暗闇の中で道を照らし続けてくれた光なんだよ。ずっとそのままでいないとダメなんだよ。今は身体があるからって私のことを置いてったらダメなんだよ」


『……そうだな』


 そこまで言われたらな。付き合わんわけにもいかぬよな。



「わかったならその邪魔なやつさっさと外してよ」


『おいこら』


 自分で頑張るって話だったでしょうが……。



「それから私に方法を教えて。それで喧嘩は私の勝ちだよ」


『えぇ……』


「完全勝利。ぶい♪」


 えぇ……。

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