07-13.二人の日々
結局結婚式は延期になってしまった。式場の被害も皆無というわけじゃない。パティの発明品達共々修繕が必要だ。
私はパティと二人で工房に籠もり続けた。修繕にはそれなりに時間も掛かったものの、なんとか終わりも見えてきた。
「なぁ~パティ~」
「な~に~?」
「これが終わったら二人で海に出ないか~?」
「もしかして家出?」
「まあそんなところだ」
「皆待ち侘びてるわよ?」
「待たせておけ」
「まだ怒ってるの?」
「別にそういうわけじゃないさ」
「ならどうして?」
「ただのお詫びだ」
「……うん♪ 了解♪ そういう事にしてあげるわ♪」
「ありがとう、パティ」
「ふふ♪ しっかり準備して行かなくちゃね♪」
「そうだぞ。アウルムも置いていくからな。旅行鞄なんかも作らねばならんな」
「そういえば無かったわね。アウルム達が便利すぎて」
「うむ。しかしたまにはよかろう。転移も収納も無しで大海原へと乗り出そうではないか」
「日焼け止めも作らなきゃ♪」
「ならば広い甲板も欲しいな。パラソルなんかも必要だな」
「あら♪ ふふ♪ 塗ってくれるのね♪」
「うむ。私がパティの美肌を守り抜こう」
「ありがと♪」
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「船も今あるものでは足りんな。もう少し大きなものを作るとしよう」
「あんまり大っぴらにやっていたら皆も来たがるんじゃないかしら?」
「どうせ私の思考は垂れ流しなのだ。気にするだけ無駄さ」
「説得は任せておいて♪」
「ありがとう、パティ」
「ふふ♪ どういたしまして♪」
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「楽しみだな」
「そうね♪ 二人だけの新婚旅行ね♪」
「結婚式の後にするか?」
「その時は皆も行きたがるわ」
「なら今回は下見旅行としておこうか」
「そうね♪ 皆で楽しむ為のリハーサルね♪」
「もし無人島を見つけたらどうする?」
「もちろん上陸してみましょう♪」
「たまには魔力を使わない火起こしなんかにも挑戦してみるか」
「キャンプファイヤーね♪ 楽しそうだわ♪」
「今も自然は多いのだが、わざわざ近場でやろうという気にはならんもんな」
「だからこそ貴重な経験になるのだと思いましょう♪」
「そうだな~」
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「どうせなら水着も新しいのを用意しちゃう?」
「そうだな。幾つか揃えておこう」
「お互いに相手の水着を用意しておきましょう♪ 全部それでいくの♪ 毎日サプライズよ♪」
「ふふ♪ 楽しそうだな♪ ゆーちゃんにも協力してもらって新しいのを作っておかねばな♪」
「きっと皆も行きたがるわね♪」
「全員でとは別に個別にか? そうなってくると少し面倒な気もしてしまうのだよなぁ」
「ふふ♪ もう♪ エリクったら♪」
「実際問題、何かしら補填は要求されるだろうさ」
「それもそうね。皆はどこに行きたがるかしら?」
「海以外無くないか?」
「地下も結構広いみたいよ?」
「スライムキングダムより下層があるのか?」
「ええ。アウルムがそんな話をしていたわ。以前調査隊を派遣したんですって」
「まだ全部は回りきっていないのか?」
「らしいわよ」
「それは凄いな。ディアナはそういうの好きそうだな」
「間違いなく行きたがるわね♪」
「何か別の生物もいるのだろうか」
「そこら辺はアウルム達の調査結果を待ちましょう」
「だな」
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「完成ね♪」
「お疲れ様だ。パティ」
「ありがとう♪ エリク♪」
「元はと言えば私のせいだ」
「もう♪ そういうのは言いっこなしよ♪」
「うむ」
「次は旅支度ね♪」
「その前に材料の補充に行こう」
「アウルムにお願いしておいたわ♪」
「やはりアウルムだけでもこっそり連れて行くか?」
「もう。エリクったら」
「冗談だ。たまにはアウルムにも休暇が必要だろう」
「スライムキングダムが更に大きくなってしまうかも♪」
「地下世界の完全支配も時間の問題やもしれんな」
「全員外に連れ出せるのかしら?」
「流石にこの箱庭に永住するのは難しかろう。時間差がえげつなさ過ぎるし」
「折角作ったのになんだかもったいないわね~」
「パティが作ったものだって同じさ。次の皆の為に残しておくのだろう? きっと皆も好き勝手に手を加えていくぞ。パティ達が次にこの箱庭を訪れる時は全く別物になっているやもしれんな」
「ふふ♪ それはそれで楽しみね♪ 少しは寂しいかもだけど♪」
「きっと外の世界でも同じだ。我々は長い時を生きていく。いずれはカルモナド王国だって形を変えてしまうだろう」
「それを見届けられるのって幸せなことなのかしら?」
「どうだろうな。いずれ悲しみを抱く事もあるのやもしれんな。逆に変化を喜ぶ事だってあるだろう。固執せずにあるがままを受け入れていく覚悟は必要になるのであろうな」
「エリクは不安?」
「……いいや。我々が見守るのだから心配は要らんさ」
「ふふ♪ それが神様のお仕事なのね♪」
「月並みだが、人々にとっての明日の世界が、今日より少しだけ幸せな世界であり続ければ、きっと世界そのものもより良い方向へと進んでいけるのではなかろうか」
「エーテルお母様とは違う方針なのね」
「管理者が二人いても構うまい。片方は世界の為に。もう片方は人々の為に。その二人が話し合いを続ける限り致命的な亀裂には至るまい」
「それはエリクが務めるの? それともアニムスさん?」
「なんなら三人でもいいぞ。いっそパティも加わるか?」
「四人は多すぎるんじゃないかしら? そういうのって三人くらいがちょうど良いと思うの」
「何にせよ、人々に寄り添う者として最も相応しい存在はパティだ。間違いなく」
「ありがと♪ 期待に応えられるよう頑張るわ♪」
「うむ♪」




