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万能回復"薬"に転生しました!? ~ どうしても飲んでもらえないのでこの子(達)と生きていきます ~  作者: こみやし
07.新婚生活編(仮)

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07-12.ドッキリ作戦

「下がれディアナ!!」


 結婚式当日。式の真っ最中にそれは現れた。


 巨大な触手の塊だ。黒く蠢くグロテスクな何かだ。


 それは真っ先にユーシャとゆーちゃんを飲み込んだ。


 誰もその発生に気付けなかった。いきなり背後に現れたのだ。あの二人が抵抗する間もなく一瞬で取り込まれてしまった。果敢に立ち向かうパティも明らかに押されている。


 こんな時に限ってアウルムは側に居ない。あの子は少し離れた所で待っている。ギャラリー役の幼女スライム達を伴って私達が出てくるのを今か今かと待ち構えてくれている。


 騒ぎに気付いて来てくれる様子がない。何かがおかしい。



「パティ! 下がれ! ここは私が!!」


「逃げなさい!! ディアナを連れて!! 早く! アウルムの下へ!!」


「「パティ!!」」


 私が伸ばした魔力手は触手の塊に触れた途端、あっさりと砕かれ、霧散してしまった。糸を使うべきだった! こいつは魔力を食らうのだ!


 届かなかった……。パティも飲み込まれてしまった……。残されたのは私とディアナだけだ……。



「走れ!!」


 それでもどうにか入口への活路を切り開けたのは奇跡だった。ディアナと共に式場の入口から飛び出した。



「なっ!?」


 そこはもぬけの殻だった。アウルムや幼女スライム達が待ち構えている筈だった。けれどあるのは何かが暴れ回った跡だけだ。アウルム達も奴に飲み込まれてしまったのだ。私達に気付かせることもなく。きっと一瞬で。



「エリク!!」


 今度はディアナが私の手を引いて走り出した。いくつもの触手が私達の背中に向けて伸びてくる。私達はがむしゃらに走り続けた。


 今の私達に抵抗の術はない。あれには魔力が通じない。何か対策を考えねば。皆を救い出さなければ!



 ディアナと二人で走って走って走り続けた。いつしか触手の化け物は見えなくなっていた。


 気付くと海岸に辿り着いていた。この日のために用意した正装はボロボロだ。森の木々に引っ掛けたのだろう。葉や枝もつけたまま、私達は砂浜に膝をついた。



「エリク……」


「……大丈夫だ。ユーシャとゆーちゃんの心を感じる。何より私がまだ生きている。全員無事だ。間違いなく」


「そう……よね……」


 私の本体はユーシャだ。私が無事ならユーシャも無事だ。今引き返せば間に合う筈だ。奴を倒して全員取り戻す。たったそれだけの話しだ。



「っ!? エリク!? 待って! どこに行くの!?」


「決まっている!」


「どうやって!? 魔導は通じなかったじゃない!」


「たった一度失敗しただけだ!」


「パティだって何も出来なかったのよ! 見てたでしょ!」


「私にはこの身体がある! 莫大な魔力がある!」


「糸も毒霧も使えないじゃない! パティ達が人質になってるも同然なのよ!? 力尽くで攻撃すれば皆だって無事じゃ済まないわ!」


「ならばどうすればいい!」


「落ち着いて考えましょう! 焦っても上手くなんていかないわ!」


「時間が無いのだ! 奴は魔力を食らっていた! パティ達の魔力が吸い尽くされてしまう!」


「なら尚の事じゃない! 今のエリクが行ったってどうにもならないわ!」


「いや! 手ならある!」


「え!? ちょっと! エリク!!」




----------------------




「ねえ、これ失敗じゃないかしら?」


「誰か思いつかなかったの? エリクって脳筋だよ? ああいう解決手段に走ることなんて想像つきそうなもんじゃん」


「そういうユーシャこそ気付いてなかったじゃない」


「まぁすたーかしこー!」



「あれは果たして賢いと言えるのかしら?」


「下手すると私達ごとボコボコにされるね」


「最悪治療すればいいと開き直ってるわね」


「むむむ~」



「出来れば勘弁してほしいわね。あのバイクだって折角作ったのに」


「確かに物理的な手段なら攻撃も通るけどさぁ」


「だからってパティの発明品を片っ端からハンマーにして殴りつけてくるなんてね。緊急事態とは言え手段を選ばなすぎよね」


「も~だめそ~」



「「「あっ」」」




----------------------




「おい。これはどういう事だ」


「それはこっちのセリフよ! 酷いわエリク! 全部壊してしまうなんて! ああ……本当になんてこと……」


「あ~あ。泣~かした~」


「流石にこの惨状は私も心に来るわね」


「ごめんなさ~!」



 触手お化けを物理的にボコボコにしたら突然弾けてスライム達が散らばった。あの化け物はスライム達が化けていたものだった。つまりドッキリだ。パティ達は仕掛け人に過ぎなかったわけだ。



「舞い上がるのはわかるがやりすぎだ」


「泣いてるパティを見てもなんとも思わないのかしら?」


「思ってないわけじゃないよ。今は苦言を呈したいだけで」


「怒り一、戸惑い一、罪悪感二、安心六、って所かしら」


「まぁすたー……」


 まったく……。



「そうかそうか。アウルム以外は反省しておらんのだな?」


「誤解よ。舞い上がっていたわけじゃないわ」


「全部エリクの為。エリクの内なる力を目覚めさせようとしただけだよ」


「だからってなにもこんな大切な日にやらんでもよかろう」


「だからこそじゃん」


「銀花が本気になれるシチュエーションだと思ったの」


 だからってなぁ……。



「ごめんなさい、エリク」


「「ごめんなさい」」


 ディアナが頭を下げると、ユーシャとゆーちゃんもあっさりと追従した。どうせこの二人のことだから本気で反省しているわけでもないのだろう。ディアナがこの場を収めようとしたから倣っただけだ。



「パティ。すまなかった」


「……ううん。私達が悪いの。ありがとう、エリク。私達の為に立ち向かってくれて。助けようとしてくれて。嬉しかったわ。本当よ?」


「修理は私も手伝う。どうかやらせておくれ」


「うんっ♪ 一緒にやりましょう♪」

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