07-08.心の境界
「家族会議よ」
「はい……」
「先ずは前提の確認よ」
私たちは今現在、新婚生活を送っている。
新婚と言うにはだいぶ長い期間だが、ともかくこの期間は共に箱庭世界に入った相手の事だけを考え続ける決まりだ。
「流石に途中で増やすのは無しでしょ」
「アウルムは元々……」
「次回からアウルムの同行は禁止よ。アラネア達もよ」
流石にアラネアは無いだろう……。人化する魔物はソラとアウルムだけだと思う……。
「代わりに別の機会を設けましょう」
そっか……そっちも増えるのか……頑張ろう……。
「三百四十年だっけ? アウルムも追加で三百五十年だね」
うぐ……。
「まだ四年も経ってないのよね。残り三百四十六年以上。下手をすればもっと伸びるわね」
「いや流石に……」
「ともかくしっかり修行しておきなさいよ? 収納くらいは使えないと困るでしょ?」
そうだった……私は殆どアウルム任せなんだった……。
「アウルムのいない銀花って何が出来たかしら?」
「ざぁ~こざぁ~こ」
うぐっ……。
「残り六年ちょっとでどこまで身につくかしら?」
「大丈夫よ。エリクはすぐ……ああ、いえ。それはユウコがサポートしていたからなのよね」
「そうよ。銀花本人は特別にセンスや記憶力が良いってわけでもないわ」
くっ……。
「けどまあ、心配は要らないでしょ。今は私もユウコもアウルムもパティもいるんだし」
いつの間にか私がユーシャに教わる立場になっていたのだなぁ……。子供の成長って早いものだなぁ……。
「私は? ねえ、ユーシャ。私は?」
「ディアナには私が付いてるよ」
「それはどういう意味かしら?」
「時には諦めも肝心ってこと」
「これでも首席だったのよ!?」
ディアナは頑張ったよ。本当に。
「水準が高すぎるのだ。転移だとか収納だとかは普通の天才が努力を重ねた程度で習得できるようなものではないのだ。特別な才能と特別な教育のどちらか、或いは両方が必要だ」
「言い訳は見苦しい」
くっ……違うし……ディアナを慰めようとしただけだし……。
「銀花に才能が無いってことはないわ。ただそれを使えていないだけよ」
「私は?」
「ディアナには才能自体無い。水上バイクをぶつけてるうちは転移なんて使えるはずもない」
「がぁ~ん!」
ユーシャよ……もう少しだけ手心をだな……。
「空間把握能力は大切よ。大丈夫。ディアナにもきっと出来るわ。あなたには人より多く、努力する時間が与えられているんですもの」
「そうよね! 私頑張るわ!」
流石だな。その前向きさと立ち直りの早さは間違いなくディアナの長所だ。
「エリクは先ず私達のリソースを自分のものとして扱う訓練をすべき。私が成長出来たのもそれが理由だよ」
なるほど……勉強になります……。
「銀花の弱さはそこよね。口でいくら心は一つって言っても無意識に境界を作ってしまっているのよ。心の底から一つだとは思えていないのよね」
「それも仕方ない。エリクは私とユウコが好きすぎるから。自分の一部として受け入れるより個として愛していたいの」
「そうね。けれどいつまでもそれではダメなのよ」
「そう。事実は事実として受け入れないと。でないとエリクの成長は止まったままだよ」
「うむ……」
難しい事を言う。それが出来るなら苦労はしていない。むしろユーシャとゆーちゃんだって同じだろうに。私の事を誰より愛してくれているんだもの。
「銀花がそんな調子では私達も神の力を扱えないの」
「三人で力を合わせないと無理。この先に進むには足並みを揃える必要があるの」
「そうだったのか……」
全然知らなかった……。
「私達は三人合わせて一人前よ。どうかそれを忘れないで」
「これはなにも悪い事ばかりじゃない。普通の人間はそもそも神の力を分け与えられたからって使える筈もない。私達だから出来る事だよ」
「うむ。そうだな。私も頑張るぞ」
「その意気よ♪」
「エリクなら大丈夫。必ずまた私を越えられる」
「パティ、なんだか羨ましいわ。私達も一つになれないかしら?」
「無茶言わないで。……いやでも、アウルムを介せば……」
ダメだからね?
「少し聞きたい事が出来たわ。私、アウルムのところに行ってくるわね」
「私も!」
「待て待て!」
行ってしまった……。どうしよう……三人で一つの巨大スライムになって戻ってきたら……。
「「ぷっ」」
いや、笑い事じゃないからね?




