07-06.不思議な箱庭
結婚式の開催を決定した私達は、まず最初に会場の建造に着手した。やるからには徹底的にだ。それにどうせ他の皆もやりたがるからな。前回の結婚式は全員で合同だったし。個別回があっても悪くはあるまい。
「設計を見直しましょう」
またか。
「流石にこだわり過ぎではないか?」
「そうだよ。いつまで経っても完成しないじゃん」
「けれどこれじゃあ大きすぎるわ。私達だけの結婚式よ? 相応しい規模に抑えないと、かえって寂しいものになってしまうわ」
「前のは逆に小さすぎるだのと言っておったではないか」
「ねえ、お願い。明日までには上げてみせるから」
「それは構わんがな。どうせならもう一週間くらい考えてみろ。それで最終決定としてしまおう」
「ありがとう♪ エリク♪」
「もう。しょうがない。行こっか、ディアナ」
「ええ♪ 今日は私が運転したいわ♪」
「ダメ。ディアナぶつけるもん」
「ユーシャの意地悪♪」
相変わらずラブラブね~。
「ゆーちゃんはどうする? またパティと一緒?」
「ええ。もちろん」
パティとゆーちゃんも工房へと戻っていった。
どうしよう。一人になってしまった。どちらかに合流するかなぁ。それとも一人で散策するか。悩みどころだなぁ。
まいっか。たまには一人で過ごそう。うん。
この箱庭世界は大きく分けて四つのエリアで構成されている。三つのエリアに区切られた島とその周囲を囲う海だ。
一つ目は私達が普段暮らしている【森林エリア】。
島の南に位置するこのエリアは森と湖が大部分を占めており、森の中には家と工房の他、畑などの生活に必要なものが存在している。
畑はいつでも新鮮な実を実らせた不思議植物で溢れている。もちろん水をやる必要もない。虫食いの心配もない。至れり尽くせりだ。
湖の水も常に浄化されている。泳いで良し、飲んで良しの万能水だ。その代わり魚は生息していない。魚は専用の溜め池に生息しており、必要な分だけを釣るようにしている。
二つ目は【海エリア】
他の三つのエリアを囲うようにして、見果てぬ海が続いている。限界を見たことは未だ嘗て一度も無い。なんなら他にも島とかあるのかもしれない。本当にやる事が無くなったら探検してみるのもいいだろう。
今のところは海の魚介類が食べたい時くらいしか利用していない。泳ぎたいだけなら湖の方が色々楽なのだ。ベタつくし。
三つ目は【山エリア】
島の北西に聳える巨大な山だ。鉱石なんかを取りたい時はここを利用する。他にも温泉なんかも湧いている。
最初は毎日のように入りに行っていたものの、次第に面倒になって家風呂で済ませるようになっていった。
なんなら湖に浸かるだけでも綺麗になるし。いっそ魔力を使えば入浴の必要すらないからね。しゃあないね。
四つ目は【草原エリア】
島の北東を占める広大な草原だ。全力で走り回りたい時なんかはここに来る。飛行機の試作機もここで試していた。
エリア内の更に一角には野生動物なんかも生息し、お肉が食べたい時はもっぱらここで調達する事になっている。
今日はどこに行こう。森を彷徨ってまだ見ぬ神秘を解き明かしてみるのも悪くはない。
「!」
「アウルム? なんだ? 山に行きたいのか?」
「◯!」
「そうか。うむ。良いぞ。行くとしよう」
「♪」
お腹空いたのかな? 基本的に私の魔力で満足しているようだけど、偶に洞窟の奥で取れる高純度の魔石が食べたくなるようだ。スライムだからね。本来はそっちの方が正しいのだろう。たぶん。
「今度はオルニス達も連れてきてやろう」
「◯!」
きっと皆も喜ぶだろう。アラネアもポチもぴーちゃんも。ファムが連れてきてくれるだろうな。間違いない。うむ。
「!」
「どうした?」
「←!」
「あれが気になるのか? うん? トロッコ? こんなのあったか?」
「☓!」
「だな。無かった。その筈だ。パティが作ったのだろうか」
わざわざ作る必要は無いと思うのだけど。ゆーちゃんが転移使えるんだし。ここに来てからは私以上にゆーちゃんとパティって一緒に過ごしてるし。
「……試しに乗ってみるか?」
「◯!」
ふふ♪
トロッコに乗り込むと何の操作もしていないのに前進を始めた。アウルムが魔力でも流したのだろうか? そんな様子はない? いったいどういうこっちゃ。
トロッコは段々と速度を上げていき、あっという間に最高速に達したようだ。凄まじい速度で山の中に掘られた洞窟を突き進んでいく。
昔こういうゲームやったなぁ。ゴリラとモンキーのやつ。実際に乗る事になるとは想像もしてなかったけども。
「流石にワニやネズミはおらんのだな」
「?」
「いや。なんでもない」
線路は続く。どこまでも。




