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01-43.追跡者

「じゃあねよろしくね♪

 ジュリちゃん♪」


「パティちゃんもね♪

 素材、待ってるわ♪」


 気安くハグを交わすパティとジュリちゃん。

ユーシャがむっとして私をきつく握りしめた。



「さ、行きましょう二人とも」


 パティは気付いているのいないのか、ユーシャにもハグをしてから手を繋いで歩き出した。



「ねえ、エリク」


 暫く歩くと、パティが声を潜めて問いかけてきた。



「なんだ?」


「付けられているわ。

 心当たりある?」


「!?」


 反応するなユーシャ。気付かれるだろうが。


 にしても、付けられているだと?

まさか人形の盗難届を出した者に関係があるのか?



「……手練れか?」


「ええ。それなりにやりそうよ」


 まさかあの襲撃者か?

メイド長ではなかったのか?



「誘い出せるか?」


「……やってみましょう」


「(こくこく!)」


 首を振るな。バレるだろうが。



「別れるか?」


「その方が良さそうね。

 後は任せるわ。エリク」


「うむ」


「あ!忘れ物しちゃった!

 先に帰ってて!ユーシャ!

 私ジュリちゃんの店に行ってくるから!」


「え!?」


 お前まで騙されるな。


 パティがユーシャの手を離して駆け出すと、ユーシャは寂しそうに自分の手を見て落ち込んでしまった。



「落ち着け。大丈夫だ」


「うん。行こうエリク」


 何かを決意するように手をぎゅっと握りしてめて、ついでに私を抱える腕にも力を込めたユーシャ。そのまま屋敷の方角を真っ直ぐ見据えて歩き始めた。



「しまった。

 これではわからぬな。

 敵は変わらず付いてきているのだろうか」


 パティが走り出した事で逃げ出してしまった可能性もあるだろうに。まあパティなら逃がすようなヘマはしないだろうが。



「もう喋っちゃダメだよ。エリク。

 ちゃんとやることやろう」


 何だと!?

突然どうしたんだユーシャ!?

悪いものでも食べたのか!?


 は!?まさか!?

いつの間にか魔物素材を!?



「私頑張る。

 パティに相応しくなれるように」


「ユーシャ……」


 ついさっきまで居眠りこいてた者の発言とは思えんな。

まあ余計なことは言うまい。折角愛娘がやる気を出しているのだ。



「ならば精々、完璧に囮役をこなすとしよう」


「うん!」


 更に少し歩いてから路地裏に入り込む。

果たして賊は付いてきているのだろうか。



「待ちな!嬢ちゃん!」


「へっへっへ!こいつぁ上玉だぜ!」


 賊は背後からではなく正面から現れた。

小汚い男二人組だ。ユーシャの行く手を阻むように、道を塞いでいる。


 いやこれ、どう考えても追跡者とは別物でしょ。

運悪く目をつけられてしまったようだ。紛らわしい。



「失敗しちゃったね」


 落ち着いたまま呟くユーシャ。

メイド長に扱かれた賜物か、この程度のゴロツキに負ける気はしないのだろう。


 私もパティとメイド長が相手でなければ十分応戦出来るはずだ。どうせこんな奴らが魔力視とか持ってるとも思えんし。



「悪いことは言いません。お引き取りを」


 私は一人で浮き上がって、ユーシャとゴロツキ共の間に入る。



「「な!?なんだコイツ!?」」


 それはこちらのセリフだ。



「手荒な事はしたくありません。どうかお引き取りを」


 再度促してみる。



「んだとぉ!?

 ガキ二人で何が出来るってんだぁ!?」


 何故か激昂した男達が手を伸ばしてきた。

瞬間湯沸かし器かなにかなの?


 私が言うのもあれだけど、よくこんな得体の知れない存在に向かって来れるものだ。もしかして普通の幼女だと思われてる?空飛んでるのに?



「「げぶっ!?」」


 私は魔力手で作った握り拳を放ち、二人纏めて吹き飛ばした。



「っ!?」


 直後、背後からも物音が聞こえてきた。

どうやらパティが追跡者に仕掛けたようだ。

何やら争う音が聞こえてくる。



「エリク!行くよ!」


 ユーシャは私を回収する事なく一人で走り出した。

ゴロツキ共は気を失っているようだ。

私もユーシャを追いかけよう。



「パティ!」


「こいつよ、ユーシャ。

 見覚えある?」


 既にこちらも終わっていたようだ。

パティが黒尽くめの女性を組み伏せていた。



「間違いない。

 以前襲ってきた者だ」


 どうやらメイド長では無かったようだ。

前回はここまでマジマジと見る余裕は無かったが、こうしてよく見てみれば若干体格も違う。メイド長にはあらぬ疑いをかけてしまったな。



「その話、私聞いてないんだけど?

 なんで言っておいてくれなかったの?」


「説明は後だ。

 おい、お前。

 何故瓶を狙う?」


 私は魔力手で黒尽くめの顔を覆う布を引き剥がした。

黒尽くめの正体は二十代前半くらいの若い女性だった。

この顔には見覚えがない。いったい何処で私に目をつけたのだろう。



「……」


「答える気は無いか。

 パティ。こやつを連れて行こう。

 色々と吐かせる必要がありそうだ」


「ええ。そうね。

 エリクにも吐いてもらうわよ。色々と」


「うっ!」


 言いながら襲撃者の意識を奪うパティ。

何故こやつ、こんな事まで手慣れておるのだ?

パティにこそ、まだまだ吐いてもらわねばならんのでは?



「私だって大した事は知らんさ」


「二人共。喋ってる場合じゃないよ。

 暴れすぎたから。人集まっちゃう」


「そうね。行きましょう」


 魔力手で襲撃者を担ぎ上げ、極力人目の少ない場所を選んで領主邸へと向かった。

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