07-02.方向性の違い
ここ最近更に豊かになったユーシャの胸の間には空の薬瓶がぶら下がっている。裸体に身につけたものはそれだけだ。あとは指輪もか。服を着なさい。
「パティもどうかしら? とっても気持ちいいわよ♪」
同じく一糸纏わぬディアナが湖から上がってきた。
「勘弁して。そんな特殊性癖付き合いきれないわ」
「あら残念ね♪」
私を飲み干して融合を果たしたユーシャはあれからすくすくと成長していった。身体だけでなく、その力も以前までとは比べ物にならない。私の魂と一緒に回復薬としての特性も引き継いだのだ。今のユーシャは私の本体であり、万能回復薬の器でもある。つまり何が言いたいかというと、今のユーシャはエリクサーの力を自在に扱える。ディアナと共に水底に潜り、酸欠で苦しむディアナの肉体を適度に癒やす事で苦しみだけを長引かせる事が出来るのだ。この変態どもめ。
『ふふ♪ 言葉責めもわるくない♪』
違うから。勝手に人の心読んで悦ぶのはやめなさい。
「空中デートはもういいの?」
「ええ。色々課題も見つかったわ」
「すぐに改修に取り掛からないなんて珍しいわね」
「そうしたかったんだけどね。エリクが付き合えって言うから」
「二人を迎えに来たのだ。デートに行こう。服を着ろ」
「水中デートなんて如何かしら?」
「ディアナ。折角健康を勝ち取ったというのに、どうしてそう破滅的な快楽にばかり傾倒してしまうのだ」
「だからこそじゃないかしら?」
絶対違うと思う。ディアナがドMのド変態なのは本人の性癖なだけだと思う。
「限界を試したいのかしら?」
「パティが研究してくれてもいいのよ♪」
「……しないわよ。するわけないでしょ」
今一瞬悩んだ?
「だいたいディアナは気軽にユーシャの魔力を受け入れすぎだ。成長も止まってしまったではないか」
折角眷属化せずにここまできたというのに。
「そうね。ユーシャとパティはすっかり大人になってしまったものね。一緒に成長したかった気持ちも無いではないわ。けれど同時にこのままで構わないとも思うの。私はエリクに合わせるわ。エリクは永遠の少女だもの。お似合いよね♪」
はいはい。ゆーちゃんも忘れないであげてね。
「私はそろそろ止めてほしいわ。ユーシャもきっと止まるのでしょう?」
「さあな」
ユーシャのことはよくわからんのだよな。体内にエリクサーが流れているから成長は止まるのかと思ったけど、逆に促進されちゃったわけだし。母さんに聞いておけばよかった。
「ユーシャは母さんに似てきたな」
「だから欲情しづらくなったの?」
「……そんなつもりは無いぞ」
「けど最近は頻度が減りすぎだと思う。初めての頃はエリク達だって殆ど服なんて着てなかったのに」
「「……」」
この生活も四年目だぞ? 今でもガツガツしているユーシャとディアナの方がおかしいと思う。
「言っておくがユーシャとディアナは少数派だからな? 私とパティとゆーちゃんが普通だからな? 二人ももう少し落ち着いておくれ。他にやれる事だってあるだろう」
「研究好きの三人と比較するのはおかしいわ」
「そうだよ。私達には三人程熱中できるものが他に無いんだもん。こっちはこっちの研究してるからお構いなく」
微妙に納得せざるを得ない事を言いおって……。
「家庭内別居ってやつかしら?」
「早すぎるぞ」
「けれど身体の相性って大切だと思うの」
「私とディアナはベストマッチだね」
「もうこの話はやめよう」
なんか頭痛くなってきた。
「ダメよ。大切な話よ」
「そうだよ。私このままじゃディアナに取られちゃうよ?」
「……それはいかん」
「ちょっとエリクまで」
いや、だって。
「だからってイヤイヤ付き合うのも違うわよね」
「イヤイヤではないよね? 単に四六時中じゃないってだけで」
「四六時中発情している自覚があるなら落ち着いてくれないか?」
「「無理」」
あっそ。
「ちょっと。諦めないで、エリク。この裸族達に服を着せるんでしょう?」
心折れそう。
「何か娯楽を作ろう。猿どもに文明を与えてやるのだ」
「「言い方ぁ~」」
「悪くない考えね。既に幾度となく失敗した試みであるという点を除けば」
「今度こそ満足させてもらえるのかしら♪」
「何時でも付き合うよ。完成したらまた呼んで」
お猿さん達は森へ、いや、湖の中へと帰っていった。
「ダメだったわね」
「ゆーちゃんにも相談してみよう」
何か刺激的なものを作らないとだな。すっごい速さで飛ぶ飛行機とか。何かそんな感じの。
「バンジージャンプならすぐに作れるだろうか」
最悪クッション代わりにエリクサーのプールでも底に敷いておけば万が一の危険も無いだろう。今更依存性とか気にする者もいないし。
「どうせならジェットコースターってやつはどうかしら?」
「いっそ遊園地でも作るか。どうせ時間だけはあるからな」
それもすぐ飽きるかもだけど。やっぱ十年は長いって。




