06-69.再会と別れ
なんだかんだと慌ただしくしている内に、ディアナ達の卒業が近づいてきた。そんなある日。
「メグル!!」
「あら、マグナ。随分久しぶりね」
二人の少女が感動の再会を果たしていた。
「言う程感動する場面かな?」
「メグルの方は数千年ぶりだそうだぞ。あんな澄ました顔をしているが、内心歓喜に打ちひしがれているのだろうさ」
「やめたげなさい。そういう野暮な事を言うのは」
だな。
「ちょっと。全部聞こえてるわよ」
「メグル! メグルメグルメグル!!」
「はいはい。わかったから。私も会いたかったわ。よしよ~し。良い子だから大人しくなさいな」
まるで大型犬にじゃれつかれているみたいだ。
「見世物じゃないわよ」
「なに。気にするな。我々は順番待ちだ。マグナ姉さんを待ちわびていた者は他に二人もおるのでな」
「あら。マグナだけなのかしら?」
「もちろんメグル姉さんの事もだ。誰だかわかるか?」
「……」
「もちろんわかるわよ。大きくなったわね。シルク」
「メグル、さま……」
「あら。泣き虫は変わらないのね。いいわ。いらっしゃい」
「!!」
メグルの広げた腕にシルクが飛び込んだ。メグルは泣き続ける二人を抱き締めて愛おしそうに微笑んでいる。
「ネル姉さんはいいのか?」
「はい。私は後で構いません」
ふふ♪ 姉さんも嬉しそうに泣くものだな。
「テミスちゃんありがと~♪」
「我は約束を果たしただけだ。早速で悪いがトリスメギストスの件で話がある」
「こちらへどうぞ~」
私達も母さん達の方へ行くとしよう。
少し離れた所に場所を移すとテミス叔母様が話を切り出した。
「先ずは後始末だ。トリスメギストスはお祖母様の管轄となった。無断で利用すればどうなるかはわかる筈だ。大人しく手を退くことだな」
「あら~。酷いわ~。そこまでしなくたっていいのに~」
「バカを言うな。お前はやはり反省する気がないのだな」
「「「「すみませんでした!」」」」
ルベド、私、ゆーちゃん、ネル姉さんが、慌てて頭を下げた。
「よく言って聞かせておきますので! どうかご容赦を!」
「うむ。お前達の事は信頼している。実際ここ最近のエーテルは随分と大人しかった。思考まで変える事はそもそも期待しておらん。あまり気負うな。お前たちはよくやっている」
テミス叔母様!! なんて出来たお方!! 大好き!!
「ふっふっふ。よせ。照れるではないか」
「フーちゃんもな~♪ テミスちゃん大好きなんだ~♪」
「よいよい。近う寄るがいい。許すぞ」
「えっへへ~♪」
「なら私もお隣失礼して」
ゆーちゃん!? いつの間に!?
「叔母様。こちら銀花お手製の焼き菓子です。よろしければご賞味ください」
ゆーちゃんが若干キャバクラみたいな距離感でお酌を始めた。しかも随分と手慣れた様子だ。
「そうかそうか。うむ。是非とも頂こう」
叔母様は躊躇なく私の焼いたクッキーを口に運んだ。
「美味い!! 流石我が姪だ!」
「光栄に存じます」
「よいよい♪ お主も近う寄れ♪」
あ、はい。でもどこに? あ、フーちゃん膝に座るんだ。おっけい。じゃあ私はフーちゃんが抜けた所に。
私とゆーちゃんで両隣に座り、フーちゃんが叔母様の膝でお菓子を頬張っている。あれ? 自分で食べるの? フーちゃんはこんな時でもマイペースね~。
「テミスちゃん、いいの~? 賄賂にならない~?」
「……はぁ~」
そりゃあなるに決まってるよね。もう。母さんたら。どうせ私達にチヤホヤされる叔母様が羨ましくなったんでしょ。
「お前達にも苦労をかけるな」
「お気遣いありがとうございます。お陰様で楽しく過ごしております」
そうだね。私たちが変わらず一緒に過ごしていられるのは叔母様が色々と便宜を図ってくれたお陰だ。この楽しい日々に感謝こそすれ、苦労だなんて思ったことも無かった。
「うぅ……お前たちは良い子だなぁ……」
あらら。泣き出しちゃった。苦労されているのは叔母様の方なのだろう。どうかお気を確かに。
「テミスちゃん~。そろそろ仕事しないと~」
「「「「「……」」」」」
母さん。それはよくないよ。よくない。
「まあ、そうだな。仕事は先に済ませるとしよう」
あら? もしかしてお仕事の後も一緒に居てくれるの?
「くっ……可愛い……」
悶えてらっしゃる。
「残りの仕事は一つだ。わかっているな、エーテル。お前の処分が決まった」
あら。もうなの? 今回はマグナ姉さんの機能を止めて、暫くは例のシステムの利用状況を確認するのかと思ってた。
「すまんな、銀花。そのマグナに関わる事だ。マグナは現状のまま引き渡してもらう。それがエーテルへの罰だ。此度の再会も罰の一環だ。今後二度とお前達が会う事は無い。それを心に刻み込ませる為の措置だ」
そんな……。
「嫌。どうにかして。テミスちゃん」
「無理だ」
「そんな筈ないわ。テミスちゃんなら」
「諦めろ」
「ならお祖母様に直接頼み込むわ。あの子を引き取るのはお祖母様なんでしょう?」
「ダメだ。忘れたのか。お前はこの世界から出られない。お祖母様は決してお前の下には現れない。それが約定だ。あのお方は決して約束を違える事はしない」
「お願い」
「くどい。ここでゴネるくらいならば娘の下へ疾く走れ。残された時間は少ないぞ。私が何の為に時間を稼いでいるのか気付かんのか」
「……っ」
母さんはマグナ姉さんの下へと駆け出した。
「……すまんな」
「いいえ。叔母様のせいではありません。ささ。お気を取り直して。どうぞこちらを」
「うむ。結心は賢いな」
「ネル姉さんも。こっちはいいから行ってきて」
「はい」
「暫しの別れを告げてこい。お前達だけならばいずれ私が引き合わせてやる。そう約束しよう」
「ありがとうございます。テミス叔母様」
今度はネル姉さんが駆けていった。
「ふっふっふ♪ フーちゃんは諦めないぜ♪」
「む? 何を企んでいる? いくらフーちゃんの頼みでも、今回ばかりは聞けぬのだぞ?」
「フーちゃんと交代制」
「ダメだ。永遠の別れこそが罰なのだ」
「スマホちょーだい♪」
「それもならん。たとえ声だけのやり取りでも認めはせん」
「じゃ~ね~♪ フーちゃんが叔母様のものに」
「バカを言うな。フーちゃんには銀花がいるだろうが。そもそも此度の決定は私個人の裁量によるものではない」
「叔母様。神の転生について教えてくださりませんか?」
「……不可能だ。そのような手段は存在しない」
「心当たりのありそうなお方はいらっしゃいますか?」
「……お祖母様ならば或いは」
「ならばマグナ達に伝言を頼みましょう。或いはマグナの奇跡がそれを成し遂げてくださるやもしれません」
「仮にその方法が見つかったとしてもだ」
「わかっております。必ず罪は償わせます。全てはそれからです」
「ならばよい。……ふふ。本当に賢い子達だ」
「恐れ入ります」
「結心。エーテルに愛想を尽かした時は我の下に来い。我が片腕として使ってやろう」
「その際は是非♪」
こらこら。




