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06-64.難航

 翌朝、ユーシャと二人で再びヴァイス家の城へと降り立った。



「あ! エリクさん!」


 あら。エイヴァはもう来ていたのだな。


「おはよう、エイヴァ、それからルシアも」


「おはよう、エリクさん、ユーシャ。まさかもう答えを持ってきてくれたの?」


「まあな。少し話せるか?」


「もちろん構わないよ。エリクさん」


「エフィはどうした?」


 ロロもこちらにいる筈だが。エフィと一緒か?



「キャロちゃんと一緒に拗ねてるよ。昨晩エリクさんが魔王城で寝るって言い出してからずっとね」


 えぇ……。いや確かに、釘は刺されていたけども。



「すまんな。少しばかり相談事があったのだ」


「わかってるよ。エフィにもそう言ったんだけどね」


 ありがとう、ルシア。何から何まですまないな。



「安心していいよ、ルシア。エリクが全部責任を持ってくれるから」


「そう。エリクさんはそうやって流されるんだね」


 あかん。ルシアの声のトーンが一段下がった。



「ユーシャ、少しエイヴァと待っていておくれ」


「無茶言わないでよ」


 そうだった。この子ったら人見知りなんだった。最近は随分と改善されていたけど、いきなり見ず知らずの人と二人きりは厳しかろう。それはわかるのだけど、何故こんなにも堂々としているのだろうか。以前はこんな開き直り方もせんかったのだが。逞しくなったものだと喜んで良いのだろうか。


『親バカが過ぎませんか?』


 はい。自覚はあります。



「いいよ。皆で話そう。二人とも関係のある事だからね」


 ユーシャはともかくエイヴァは……いや、時間の問題かもだけどさ。



 そこからは誰も口を開かなかった。奥の部屋に辿り着き、エフィ達が合流するまでの間、奇妙な緊張感が漂っていた。



「それじゃあエリクさん。答えを聞かせてもらおうか」


 ルシアは一見するといつも通りだ。けれど内心どう考えているのかは不明瞭だ。正直怒っている可能性も高いと思う。



「ルシア。エフィ。二人も眷属に加わってほしい。私達の家族になってくれ」


「「……」」


 あら? 反応がない?



「それだけ?」


 そうか。簡潔すぎたか。



「眷属になれば二人も悠久の時を生きる事になる」


「違うよ。聞いているのはそういう話じゃないよ」


 えっと……。



「もう一度出直して来てもらえるかな? 別に義務や同情で仲間に加えてもらう必要は無いからさ。今まで通り義理の姉妹として仲良くやっていこうよ」


「違うのだ。私は」


「今は聞きたくないかな。それがエリクさんの意思とも思えないし。少なくとも強い熱意は感じられないよね」


「それは……」


 そうだな。ルシアの言う通りだ。この期に及んで私の覚悟は定まっていない。けれどルシアとエフィは全力でぶつかってきてほしいのだ。私が全力で求めるなら話を聞くと言ってくれているのだ。今の私では土俵に立ってすらいないのだ。



「こうなると思ったよ」


「だからユーシャが来たの?」


「うん。悪いけどこれ以上エリクの手を煩わせないで。二人とも大人しくエリクのものになって。なんて口で言っても納得しづらいだろうから、私は決闘を申し込むよ。私に負けたら二人ともエリクのものね。どう? 受けてくれる?」


 ユーシャ? 何を言っているんだ? お前までカルモナドの流儀に染まってしまったのか? 私が悪い手本を見せすぎたのか?



「ユーシャが負けた場合は?」


「好きにして。絶対負けないもん」


「待て待て待て! ダメだそんな決闘! ユーシャには絶対やらせんぞ!」


「ならエリクが決闘する? それだと二人とも受けてくれないんじゃない? 勝てるわけ無いんだしさ」


「いや。それで構わないよ」


 ルシア!? お前まで何を言い出すのだ!?



「ユーシャと決闘したって意味がない。どうせならエリクさんに挑ませてもらうよ。ふふ♪ 心配しないで♪ 私もそういうの嫌いじゃないんだ♪」


 カルモナドの血が騒いでる!?



「私はあまり気乗りしません。そもそも戦うのが好きではありませんから」


 いやいや。普段好戦的なのはむしろエフィの方だろうに。



「それに私達程度が義姉さんの本気を引き出せるとも思えません。それでは意味がありません」


 そうだな。感情のぶつけ合いがしたいだけなら他にも手段はあるものな。



「代案があるなら聞くよ?」


「ここは順当にデート勝負で如何ですか? 誰が最も義姉さんを楽しませたかで勝敗を決めるのです」


 あら。意外と乙女な提案ですこと。



「それだと結局エリクさんは流されるままになってしまうよ?」


「いいえ。そうではありません」


「エフィは自分から名乗りを上げるって言うんだね?」


「ルシアと共に永遠を生きられるのです。悪い話ではありません」


「そうやって自分を誤魔化すの? エリクさんを利用し続けるの?」


「それでいいんです。その分義姉さんの事も幸せにすればいいんです」


「ダメだよそれは。エフィは私が信頼出来ないって言っているようなものだよ。私ではエフィを幸せに出来ないって、そう言われているようなものなんだよ?」


「そこが先ず勘違いです。私だってルシアに甘え続けるつもりはありません。ルシアが私をではなく、私がルシアを幸せにするのです。手段は私が選びます」


「だから勝負で決めようって言うんだね」


「はい。私はルシアにだって負けません。ルシアは私のものです。当然義姉さんにだって譲りません」


「そっか。うん。わかった。その勝負、受けて立つよ」


「はい♪」


 ありゃ……なんか決まっちゃった……。


『また流される事になりそうですね。先日魔王となって好き勝手やると決めたばかりなのに』


 言わないで……自覚してるから……。


『本当は皆ギンカに主導権を握ってもらいたいのです。ですがギンカはそれを望みません。だから奪い合いが起きるのです。ギンカがどうしても選べないのなら自分達で先頭に立つつもりなのです』


 姉さんまでお説教モードに……。



『まったく♪ ギンカはしかたがないですね♪ 安心してください♪ ここからでも逆転する手はありますよ♪』


 まさかデートで全員メロメロにしろとでも?


『その通りです♪ 不倫デートを楽しみましょう♪』


 嫌だよ!? その言い方は!! というか最近ネル姉さんまで開き直ってない!?


『ギンカのせいです♪』


 でしょうね!



「ごほん。まあ待て。落ち着け。冷静に考えてみろ。デート勝負でユーシャに勝てる筈がなかろう」


「「……」」


 何さその目は。


 いえ。余計な横槍を入れたのは私だもんね。すんません。



「まあ、うん。言われてみると確かに」


「業腹ですが」


 エフィもう落ちてない? 大丈夫? まだ許可とか降りてないよ? 恋人ルシアの眼の前だよ?



「もう。余計な事言わないでよ。折角纏まりかけてたのに」


 あかん。ユーシャまでご立腹だ。ごめんて。

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