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06-62.追求

「エリクさんエリクさん!」


「うむ。あれはだな」


 エイヴァはすっかり警戒を解いてくれたようだ。私の手を引いて子供のように燥いでくれている。魔王城についても随分とお気に召したようだ。



「エイヴァ。ソロソロ夕食の時間デス」


「え!? もうそんな時間!?」


「よろしければ共に如何かな? 一度ご自宅の方へ送らせていただこう。なんならご両親も」


「ううん。一人暮らしだから。そっちは必要ない」


「そうか。それはすまないことを」


「違う違う。普通に生きてるよ。成人したから家出ただけ。夕食の方はお言葉に甘えさせてもらってもいいかな?」


「もちろんだ。どうぞこちらへ」


「ありがとう♪ エリクさん♪」




----------------------




「驚きました。流石は義姉さんです」


 食後のお茶を飲みながらエフィが話題を振ってきた。



「ふふ。エイヴァが良い子なだけさ」


「えへへ~♪」


「エイヴァが? 調子が良い子の間違いでは?」


「うぐっ……悪かったとは思ってます……」


「いやいや。エイヴァの気持ちを考えれば当然の反応だったさ。むしろよくぞわだかまりを解いてくれた。エイヴァは優しい子だな。正直私の方が驚いたくらいだ」


「エリクさん♪」


「私は正直がっかりです。エイヴァはもっと一途な子だと思っていましたから」


「エフィ。そんな事を言って君はどうしたいのさ」


 わざわざ掘り返し始めたエフィをルシアが窘めた。



「私はどうもしません。全ては義姉さん次第です」


 これはエイヴァも家族に誘えって言ってる?



「撤回するつもりはないとも。従業員としてロロと共に働いてくれるのならば喜んで迎え入れよう」


「意地の悪い答えを返さないでください」


「答えを急ぐ必要があるのか?」


「エイヴァは私にとっても大切な幼馴染です。半端は許しません」


「エフィは私を信頼してくれているものと思っていたぞ」


「信頼しているからこそです。義姉さんは優しすぎます」


 つまり優柔不断だと言いたいのか。正直否定は出来ない。流石エフィだ。短い付き合いでも私の事をよく理解してくれているようだ。



「エフィってエリクさんの事が好きなの?」


「私の恋人はルシアです」


「こんな事言ってるよ、ルシア姉。エフィの答えこそ酷いとは思わない?」


「あはは~。そこで私に話を振るエイヴァも中々だと思うよ~」


 なんでこんなギスギスしてんの? 私のせいか?



「エリクさんはどう思ってるの? エフィや私の事も家族にするつもりなの?」


 エイヴァの素直さは良い事だけでもないのかもしれない。



「今この場で言及する事ではなかろう」


「つまりはそういう事なんだね」


 違うし。



「少なくともエイヴァに交際を申し込むつもりはない」


「やっぱり私のこと嫌い?」


「違う。好ましくは思っている。ただそれはあくまで友人としてだ。いいや。今はまだ知人程度のものなのかもしれん。大切な伴侶の大切な友人だ。それだけで尊重したいと思うものだ。そして私はまだエイヴァの事を詳しく知らない。今の時点で答えを出すのは早計だ。これはそういう話だよ」


「じゃあ知ってほしい。優しいエリクさんに認めてほしい」


「甘えすぎです。義姉さんは忙しいんです。いつまでもエイヴァが独占出来る相手ではありません」


「エフィも独占したいの?」


「……しません。そんなこと」


「するかしないかじゃなくて、したいかどうかを聞いてるんだけど?」


「エイヴァ。その辺にしてくれるかな? 私の恋人に何を言わせるつもりなの?」


「ルシア姉も甘いんじゃない? ルシア姉こそエフィを責めるべきなんじゃないの?」


「その必要は無いよ。エリクさんは素敵な人だ。エフィが好意的なのも理解している。けれどエフィの恋人は私だけだ。エフィもそう想ってくれているから言葉に詰まったんだ。私はエフィを信じているよ」


「そう。だけどこの話を始めたのはエフィだよ?」


「そうだね。そこだけは咎めるべきかもしれないね。エリクさんに八つ当たりをしていたのはエフィも同じなんだから」


「……すみません」


「まあ、あれだ。全て悪いのは私なのだ。それは重々承知している。ハーレムを築いた者が近しい人にちょっかいをかけてきたのだ。警戒するのも当然だ」


「「「それはそう」」」


 ごめんて。



「確かにエリクさんはハッキリさせるべきかもしれないね」


 あかん。ルシアまで追求モードに入ったっぽい。



「生涯エフィに手を出す気は無いと誓えるかい?」


 また答えづらいことを……。



「わ、私はともかくとしてだ。リタが」


「リタの話は関係ないよ。私はエリクさんに聞いてるの」


 あかん。ルシアは手強いぞ……。



「……ルシアは言及させたくないのではなかったのか?」


「だから私が聞いてるんだよ。エフィにそんな話はさせたくないもの」


 あ、はい。



「……正直に言うとだな。時間の問題かなぁと思った事が一度たりとも無いというわけでもなくてだな」


「成り行きに任せると? 受動的が過ぎるんじゃない? ハーレムもそうやって増やしてきたんだね」


 ぐぅの音も出ません……。



「そういう半端な気持ちで取られるのは一番困るんだけど」


「仰る通りです……」


「エリクさんに競うつもりがあるなら相手になるよ。私は絶対に負けないよ。エフィは私の恋人だ。その覚悟はある。けど不意打ちはやめてよね。そんな事になれば私は絶対エリクさんを許せなくなるんだから」


 ルシアは強いな……。それに引き換え私は……。


『ギンカも同じ言葉をエイヴァに伝えましたが、その意味はまるで正反対ですね』


 うぐぅ……。正直感覚がズレてる自覚はあります……。


『ハーレムの弊害ですね。今のギンカは相手が自分だけを見ていなくとも、家族全体で一つの共同体となれるなら問題無いと考えています。そもそもギンカ自身、ユーシャやユウコを特別な相手として強調しているわけですし』


 よくないよなぁ……。ルシアやエフィが釘を差しているのはそういう所だよなぁ……。


『不誠実に思われるのも当然ですね。私個人としては悪いこととは思いませんが。家族の仲が良好なのは良い事です♪』


 だからってそこをごっちゃにするのは良くないよなぁ。


『ユーシャがパティとディアナ以外を恋人にするなら間違いなく止めますもんね』


 うん。絶対止める。それにゆーちゃんが誰かと恋仲になっても泣く自信がある。


『しかしシルビアとアカネの事は微笑ましいとすら思っています』


 ハッキリ言うね……。


『ロロがエイヴァと恋仲になっても止めはしないでしょう』


 最低だよね……。


『少なくともエフィとルシアが懸念を抱くのは必然でした』



「エリクさん」


「すまない。私の態度が皆を不安にさせてしまった」


「別に謝ってほしいわけじゃないよ。それが理解出来ないわけじゃない。何せ父上があれだからね」


 そうだった。ルシアやパティの父である、前カルモナド王は私以上のハーレムを築いていたのだった。



「エリクさん程の傑物を一人で独占する方が無茶だよね。それはわかるよ。魔王が多くの伴侶を抱えていたって誰も咎めたりはしない。精々羨ましがるだけだろうね」


 あら? そこで理解を示してくれるんだね。じゃあ何が言いたいの? まさか距離を置きたいという話なのか?



「答えを出すのに時間が欲しいならそれでも構わない。エリクさんは優しいから。きっとエフィの事だけじゃなくて私の事も考えてくれてるんだよね。それはわかるよ」


 ……えっとつまり?



「ただ態度だけはハッキリさせてほしい。エフィには決して手を出さないと誓うのか。私から奪い取ってでも手に入れたいと思うのか。或いは私の事すら欲しているのか。こちらも相応の距離感ってものがあると思うんだ」


「……時間をください」


「……まあ、うん。そう言うと思ったよ」


 呆れられちゃった……。

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