06-56.空回り
『結局日和ったわね』
だってぇ……。
『もったいない。折角ミカゲの喜ぶ顔が見れたのに』
「喜ぶ」じゃなくて「悦ぶ」でしょ?
『今からでも伝えてきなさいな』
けどなぁ……。
『内緒で探るなんて悪趣味でしかないわよ』
うぐぅ……。
『何を怖気づく事があるのよ。あの子が信じられないの?』
そんなんじゃないし……。
『じゃあ何? 私がミカゲを見誤るとでも?』
……ゆーちゃんってミカゲ大好きだよね。
『だってあの子可愛いじゃない♪』
それは同意するけど、皆可愛いって言うよね。ゆーちゃんって。
『当然でしょ♪ 私の銀花を好きになってくれた子達ですもの♪ そして何より銀花が集めた子達なのよ♪ 私が好きになる要素はこれでもかってくらい詰め込まれているわ♪』
だからって……。ゆーちゃんの浮気者。
『まためんどくさい銀花が出てるわよ』
うわ。ひっど。めんどくさいとか思ってたんだ。
『知らなかったの? 私はめんどくさい子が好きなのよ?』
はいはい。悪かったですね。めんどくさくて。
『私だけじゃないわ。皆そうよ。ミカゲだってそんなめんどくさい銀花が大好きなのよ』
……もう。わかったってば
『最初から素直にそう言いなさいな♪』
ゆーちゃんの意地悪。
『後で後悔するよりずっと良いでしょ。妙な事知ってからじゃ余計に伝えづらくなるんだから』
そうだけどさ……。
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「というわけでな。ミカゲの過去を知っていそうな者達を追ってみようと思うのだが」
「おやめください」
え?
「あ、えっと。すみません。主様のお気持ちは嬉しいのですが、ある意味その者達は私の親代わりとも呼べる存在なわけでして……。黒幕がどのようなつもりであったにせよ、私の近くにいた者達は私を必要以上に傷つける事はありませんでした。なので私は恨んでなどいないのです。折角逃げ延びて平穏を掴み取ったと言うのならこれ以上の追求は控えたいのです。どうかお聞き届けください。主様」
「……本当にそれで良いのか?」
「はい。でなければいつか私の下にも同じような動機を抱いた者が訪れるかもしれません。そうなれば私は主様や他の家族に迷惑をかける事になります。自ら因縁を引き寄せる必要はありません。後ろ暗い過去は私のものでもあるのです」
そうか……。
「わかった。ミカゲの過去についてはこれ以上言及せんと約束しよう」
「感謝致します。主様」
……よかったね、ゆーちゃん。ミカゲの笑顔が見れたよ。
『私に八つ当たりしないでよ』
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「エリクちゃんの方からお姉ちゃんに甘えに来てくれるなんて珍しいですね♪」
「もしかして怒ってる?」
「いいえ。素直に喜んでいますよ? 今日はいったいどうしたんですか?」
「ちょっと同居人に虐められて」
『はいはい。私が悪ぅござんした』
……ごめん。
『謝るくらいなら言わなきゃいいのに。まあいいわ。私は暫く黙っていてあげる。今はレティの方に集中なさいな』
「同居人? ユウコちゃんですね。姉妹喧嘩ですか?」
「ううん。ちょっとした軽口だから気にしないで」
「そうですか。けどユウコちゃんと何かあったのは間違いないみたいですね。話し方が戻っていません。それが妹モードのエリクちゃんですか?」
「……そうかも」
「なら光栄ですね♪ 甘えてくださるなら大歓迎です♪」
「うん……」
レティが優しく抱き締めてソファへと導いてくれた。
「ふふ♪」
「……レティはどう」
「後にしましょう」
人差し指で唇を塞がれてしまった。レティは無言で私を撫で続けた。
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「……」
「レティ」
「はい。エリクちゃん」
「もう大丈夫」
「そうですか。元気が出たのなら何よりです♪」
「ありがとう」
「はい♪」
「レティの方は最近どうだ? 爺様とは話せたのか?」
「いいえ。私も職を追われてしまいましたから」
「……すまんな」
「心配は要りません♪ エリクちゃんはとっくに責任を取ると誓ってくれたのですから♪」
「……そうだな」
「それよりエリクちゃん。王宮魔術師達が度々魔王城にちょっかいをかけている事はご存知ですか?」
え? そうなの?
「その様子では知らなかったようですね。魔王城のセキュリティは完璧ですから。例え飛行魔術で近づいて来たとて、侵入する事は不可能です」
だよね。ゆーちゃんがそんな話してた。
「もしや爺様も?」
セキュリティ一時的に解除する?
「いいえ。お爺ちゃんは一度も現れていません」
そっか。
「ですが何時でも来れるのです。その時はエリクちゃんが門を開けてくれるのですから」
そうだね。次から気付けるようにしておこう。
『もうしてあるわよ。登録した者が近づけば通信が入るようにしてあるの』
ありがとう、ゆーちゃん。
「きっと来るさ。爺様がこの城に興味を抱かぬ筈はない」
「はい♪ ですからどうかお気になさらず♪」
「ありがとう、レティ」
「ふふ♪ こちらこそ♪」




