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万能回復"薬"に転生しました!? ~ どうしても飲んでもらえないのでこの子(達)と生きていきます ~  作者: こみやし
06.王都編・最終章

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06-55.無意味な悩み

 ミカゲ、かつてのエルミラは、物心ついた頃には裏ギルドに所属していた。小間使のような扱いではあったものの、決して劣悪な環境という程でもなく、陰ながらに保護されていた事も見て取れた。



「これ以上は遡れんのか」


 リリィは生まれた直後の記憶も引き出せた。ミカゲだって思い出せないだけで記憶そのものが存在していないわけではない筈だ。



『スノウと同じです。記憶が破損しています』


 なんだと? それはつまり……。



『これ以上は引き出せません』


『お母様に聞いてくるよ』


『フーちゃんはアニちゃんとこ行ってくる!』


 そうだな。頼む。キトリ、フーちゃん。



「主様。私の過去はわざわざ調べて頂く程のものでは……」


「やらせておくれ。これは単なる自己満足だ。そうとわかっていても出来る事はしておきたいのだ」


「感謝致します。主様」


 すまんな。おそらくこのタイミングを逃せば調査は難しくなるだろう。余計なお節介にしかなり得ぬのだとしても、今が最後のチャンスなのだ。そうでなければ新王ニコライが全てを終わらせてしまうのだから。




----------------------




『集めた情報を纏めてみましょう』


 お願い。ゆーちゃん。


 私達はミカゲに伝える前に内密で確認する事にした。



『先ずミカゲの出生についてだけど、これについては判明したわ。母親はカルモナド王都を訪れた冒険者よ。既にこの女性は亡くなっているわ。孤児として引き取ったのはこの国の孤児院。そして孤児院から巻き上げたのが』


 カルモナド王家か……。



『ええ。当時はまだ第三王子の管轄ではなかったから、その先代が手配したみたい。ちなみに第三王子の代になってからは赤子を使った実験はされていないみたいよ』


 その先代は?


『亡くなっているわ。当事者達が既にこの世にいないのも致し方ない事なのかもしれないわね。なにせ二十年も前の事なんですもの』


 そうだね……。



『ミカゲにとって幸いだったのは……と言っていいのかはわからないけれど、彼女は魔力を持っていなかった。だからそう長い間研究対象とされる事は無かったみたい』


 それでも記憶が……。


『それはたぶん研究の内容自体に問題があるんじゃないかしら』


 そこも詳しく調べてみないとだね。


『ええ。気は乗らないけどね』


 スノウもミカゲも同じ状態に陥ったって事は、何かしら共通の実験を受けていた筈だ。その内容を知ることが出来れば治す事だって出来るのかもしれない。可能性は限りなく薄いけど。



『所属していた裏ギルドもとっくに解体されていたわ。おそらくこれは第三王子の手配でしょうね。元々スノウは騎士団長に見つけさせるつもりだったと言っていたでしょ。その線で第三王子にまで調査の手が伸びれば問題になるわ。スノウをミカゲに預けた時点で痕跡を消していったのでしょうね』


 何もかも後手に回っちゃったね……。


『そうね。まあ仕方が無いわよ。こればかりは』


 せめて王都を訪れた直後なら痕跡くらいは……。


『情報も伝手も足りなすぎるわ。見つけていたところで意味がないでしょ』


 そうかもだけどさ……。


『解体された組織の元構成員を追ってみる? 既に国外に逃げているけど、そっちならまだ何人かは生きているわよ』


 どうするかなぁ……流石に一度ミカゲに聞いてみるかな。伝える内容には気をつけないとだけど。


『ミカゲは興味が無いんじゃないかしら? 聞いても追う必要は無いと言う筈よ』


 そうだね。エルミラとしての過去には大した未練も無いみたいだもんね。残念がっているのもスノウが共に暮らした日々を忘れてしまった事だけみたいだし。


『昨晩の時点でその件にも区切りがついたものね』



 わかってる。諦めきれないのはミカゲではなく私の方だ。私はこれ以上ほじくり返して何が知りたいのだろうか。正直それすらハッキリとはしていない。


『銀花はただ知りたいだけよ。大切で大好きな家族の事は把握しておきたいものでしょ。それが不穏な過去であるなら尚の事見てみぬふりは出来ないものでしょう。これは良し悪しを脇に置いた感情の話よ』


 そうだね……。


『本人が望んでいない事を掘り起こすなんて家族にだって普通は許されない。全てが詳らかになったところで、銀花はただミカゲを傷付けてしまうだけかもしれない』


 うん……。


『けどそれでも銀花は気になるのでしょう? 具体的なゴールがどこかなんか定めずに進み続けるのでしょう?』


 やっぱりダメかな……。


『褒められた事ではないわね。きっとミカゲも困るでしょうね』


 だよね……。


『だけど同時に喜んでくれるとも思う』


 そうかな……。


『当然じゃない。ミカゲだって銀花の事が好きなんだもの。好きな人が自分に興味を持って悩んでくれているんだもの。そんなの嬉しいに決まっているじゃない』


 ……かもしれないね。


『だからどうせならミカゲに相談してみなさいな。理由なんて自分が知りたいからでいいじゃない。ミカゲの全ては銀花のものだって言うなら、その過去も余さず捧げるよう言えばいいのよ。そうしたらきっと喜んで賛成してくれるわ』


 私の自己満足の為に傷付けって命令するの?


『そうよ。ミカゲはそれを何より喜ぶのよ』


 ……否定は出来ないかも。


『どうせなら楽しくいきましょう。銀花は謎が解けて満足。ミカゲは銀花に求められて幸せ。これはただの余興よ。何の意味もない自傷行為よ。互いの刹那的な快楽の為に傷をほじくり返しましょう』


 アブノーマル過ぎるよ。だいたいほじくり返すのはミカゲの傷だけだし。そんなの不公平だよ。


『なら銀花も秘密を明かしてみたら? 後悔ならいくらでもあるでしょう? ミカゲに見せつけて、泣きついて、慰めてもらえばいいじゃない。きっと絆が深まるわ』


 わざわざほじくり返して傷を舐め合うの?


『銀花がやろうとしているのはまさにそういう事じゃない』


 なるほど……。酷い主だね。


『けれど大切な執着よ。同時にミカゲ本人が気乗りしないならやめたって構わない。その程度のものでもあるの。深く考える必要は無いわ』


 かえって混乱してきたよ。


『ふふ♪ 精々悩んであげなさい♪ ミカゲの為にね♪』

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