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01-41.キメラ計画

「あ~ら~パティちゃん♪いらっしゃ~……あら?

 あらあら?あらあらあら?

 エリクちゃん!ユーシャちゃん!

 また来てくれたのね♪嬉しいわ~!!」


 以前パティの言っていた腕の良い職人とはジュリちゃんの事だった。世の中とは狭いものだな。



「ぶーぶー!

 私だけ反応薄くな~い?」


「パティちゃんはしょっちゅう来てるじゃない。

 それにパティちゃんと一緒だから驚いたのよ♪」


 パティは以前からここの工房を度々借りていたそうだ。

魔導杖の製作も殆ど自分でやっていたらしい。

ジュリちゃんの腕も当然信頼しているのだが、パティ自信も技術力には自信があるようだ。本当に何でも出来るなこの姫は。



「ふっふ~ん♪

 私、ユーシャの恋人になったのよ♪

 指輪、作ってくれる?」


 ユーシャと繋いだ手を持ち上げるパティ。

こやつら、屋敷からここまでずっと手を繋いでおったのだ。

まったく。昼間っからイチャつきおって。



「まぁ~!!まあまあまあ!!

 本当に!?いえ!そんな質問必要ないわね!

 指まで絡めて見せつけてくれるじゃない♪

 良いわ!任せて!とびっきりのを作ってあげるわ!」


「お願いね♪」


 私は認めとらんというに。

ちっとも話を聞きやしない。



「それと、今日はエリクの体の件で相談に来たのよ」


「もしかして?」


「ええ。私がパトロンになるわ」


「青天井?」


「もちろん」


「あらあら。ふふふ♪」


「ふふふ♪」


 何やら怪しく笑い合うパティとジュリちゃん。



「エリクちゃん。あなたやっぱり最高よ♪

 まさかパティちゃんまでつかまえてきちゃうなんて♪」


「私ではない。ユーシャだ」


「二人ともよ。

 指輪は三個作ってね」


「あら~♪」


 まったく。



「ユーシャとエリクは少しここで待っていて。

 私は奥でジュリちゃんと話してくるから」


「ダメ」


 ユーシャがパティの離そうとした手を握りしめて引き止めた。



「なら聞いてる?

 でもきっと退屈してしまうわよ?」


「いい。一緒にいる」


「あらあら~♪

 良いわ。今日はもうお店閉めちゃいましょう♪

 パティちゃん、奥に案内してあげて♪」


「ありがとう♪ジュリちゃん♪

 ユーシャ、行きましょう」


「うん……」


「大丈夫よ。我儘言ったなんて気にしなくて」


「うん」


「ジュリちゃんにも損はさせないから」


「うん。ありがとう。パティ」


「うふふ♪こちらこそ♪」


 まあ、ああだこうだ言いつつ、やはり仲が良いのは良い事だな。



 店を閉めたジュリちゃんも合流し、人形作り計画の打ち合わせが始まった。



「これが設計図よ。

 素材は一度見直すわ」


 ジュリちゃんが広げたのは、人体を模した人形の図面だ。

細部まで細かく描かれている。図と文字でびっしりだ。



「ええ。最高の素材を使って頂戴。

 なんなら私が取ってきてもいいし」


「お願いする事になるわね。

 必要になりそうなのは、ワールドトレントの樹皮、エンシェントラヴァドラゴンの骨、ゴルドスライムの被膜、スカイグリフォンの羽毛、デプスクラーケンの目玉、ホラアナイモリの皮、あとは若い女の子の生き血ね」


「いや待て!おかしいだろ!

 お主はいったい何を作ろうとしているのだ!?」


 なんだ生き血って!

その前に色々言ってたわけのわからんファンタジー素材より度肝を抜かれたぞ!?黒魔術でも使う気なのか!?悪魔でも召喚するのか!?



「なにって、エリクちゃんの体に決まってるじゃない」


「え!?

 まさか本気で人の体作ろうとしてる!?

 人形じゃなくて!?」


「人形は人形よ。

 どれだけ人の身体に近付けたって、魂が宿る事は無いわ」


 そこだけドライなの!?

いやそういう問題じゃなくて!!



「安心して、エリクちゃん。

 パティちゃんとユーシャちゃんの二人から少しずつ分けてもらうだけだから。二人の健康に害は無いわ」


「そもそも何に使うのだ!?」


「何って、血だもの。血液よ。

 少し流してあげれば複製出来るの。

 ここを見て。これが血液を産み出す臓器よ」


 図面を示しながら専門的な話を始めるジュリちゃん。

うむ。わからん。


 それに血液って骨で作るんじゃなかったっけ?

ああ、人間じゃないからそこは違うのね。

そもそも複製するもんでもなかろうし。



 いや、そういう話じゃなくて……。



「エリク、触覚欲しいんでしょ?

 これは必要な事よ。抵抗があるなら見なかった事にして。

 今からでも一人でお店の方に行ってて良いから」


 そうか……そうだよな。

常識的な方法で作れるわけ無いよな。

機械のロボット作るんじゃないんだし。



「すまぬ。取り乱した。

 これ以上は言わぬ。続けてくれ」


「そう。ならジュリちゃん、ここの素材は……」


 そこからパティとジュリちゃんは専門的な言葉の応酬を続けた。案の定ユーシャは早々についていけなくなり、寝息を立て始めた。


 ジュリちゃんはともかく、何でパティもこの手の知識を持っているのだろう。いや、ジュリちゃんもおかしいけど。


 触覚って、そんなあっさり実現するものなの?

私的には無理難題言っちゃったなぁって感じだったのに。

しかもなんか、味覚とかも一通り備えさせるつもりのようだ。これは人形ではなく、キメラと言うのではなかろうか。


 私、魔物のキメラになるの?

いっそ血の代わりに私流してみる?

エリクサー由来の再生能力持ち超魔生物とか強そう。

自爆しても完全体になって復活しそう。

あれ?なんか混ざってる?


 なんだかなぁ。

私、このまま流されていて良いのだろうか……。

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