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06-46.襲撃

「何のつもりだ! 妖精王!」


 真っ先に向かってきたのは近衛騎士団長ベルトラン率いる近衛騎士達だ。既に刃も抜かれている。突然王の下に乗り込んできたのだから当然だ。……とは思うのだけど、正直想像以上にブチギレてる。作戦に調整が必要だ。私の認識は甘かった。これは徹底的にやらねばわかるまい。私は覚悟を決めたのだ。今更こんな所で怖気づく筈もない。



「王宮魔術師らも呼ぶがいい! 我は王に挑みに来た! 全戦力を以って迎え撃て! 備える時間をくれてやろう!」


 乗り込んだのは私、パティ、ディアナ、ユーシャ、レティ、バルデム家、そしてスノウだ。流石に全員で来ると多すぎるからね。他にも何人か来たがったけど自重してもらう事にした。そもそも伝えてない子達もいるけど。今頃何も知らずに領都でのお祭りを楽しんでいるだろう。後で叱られるかも。




「目的はなんだ! 本気で王位を狙うつもりか!!」


 話を続けたのはベルトランだ。ニコライはただ黙して玉座に腰掛けている。私達を睨んだ後、目を瞑って何か物思いに耽っている。



「要らん! 王位なんぞに興味は無い! 望みはただ我の存在を認めさせる事のみ! 我の自由を妨げる者は何人たりとも存在せん! それが人の王であったとしてもだ!」


「つまり滞在を許せと? その為だけにバルデム家まで引っ張り出したと? それとも唆されたか! 妖精王!」


 ベルトランにまで言われてしまった。私の一貫性の無さは共通認識なのだな。直さなくちゃ。



「これは我の意思だ! 愚かで不器用な兄者達を安心させてやろうという粋な計らいだ! この子に誓って我は何者にも屈しはせんと示そうぞ!」


 同行させたスノウを前に出して指し示す。ベルトランの妹であり、ニコライにとっても親友の妹で幼馴染であるフラビアの現在の姿。既にその記憶は二度に渡って失われ、二度とフラビアとして生きる事は叶わぬが、それでも二人の兄はこの子の為に心を痛めてきた。王位を力尽くで奪い取る程に。


 ならば当然、彼らにとってもこの子の幸せは最優先に守られるべきものだ。彼らを焚き付けるには十分な理由となる筈だ。



「我に勝てたのなら潔くこの子を返そうではないか! 我にこの子を守る資格無しと示されたのなら貴殿らの要求を全て飲むと誓おうではないか!」


「そんなものは既に無い! お前には失望したぞ!」


 スノウを目にしたベルトランは更なる怒りの炎をその目に宿した。それで良い。全力でやってもらわねば意味がない。私を殺す気で来い。私も全てを以って示すとしよう。



 私はスノウをお祖母様達に預け、一人で前に出る。



「貴様一人で挑むつもりか!」


 既に王宮魔術師達も集まりつつある。未だ沈黙を貫く王を守るように、近衛騎士と王宮魔術師達が立ち塞がる。更には謁見の間の中央に陣取る我らを囲い込んでいった。



「私は一人ではない」


 パティやお祖母様にはああ言ったけど、私の一部と所有物なら構わないよね。


『任せなさい♪』


 私の中からゆーちゃんが現れて右隣に立つ。そのまま時計回りに同行人達を囲うようにして、ネル姉さん、キトリ、フーちゃんも後に続く。更には天から降り注いだ光から、ルベドとニタス姉さんが姿を現した。最後にシュテルを背に纏ったユーシャが私の左隣に飛び出した。



「油断するな! あの少女達は全て神器だ! 妖精王の使役する駒だ! 見た目に騙されるな! 全力で迎え撃て!!」


 説明ありがとう。お陰で言い訳する手間が省けたな。



「あら。私は神器じゃないわよ?」


「ややこしくなるからゆーちゃんは黙ってて」


 言い訳のしようがない。流石にベルトランにだって説明はしてないし。



「お互い準備は整ったな。それでは始めようか」


「殲滅せよ!!! 奴らは敵だ! 侵略者だ! 加減は無用だ! 人質を恐れる必要もない! 年端もいかぬ少女達だからと戸惑うな!! 全力で討ち取れ!! かかれぇ!!!」


 騎士団長の全力過ぎる叫びに戸惑う者は誰もいなかった。私達を正しく脅威と認識し、全方位から飛びかかってきた。



「「「「「「うわぁぁあああ!!!」」」」」」


 巨大な魔力手を無造作に振り払って周囲の雑兵達を壁に叩きつける。たったの一手で眼の前の空間が大きく開かれた。しかし敵もすぐにその穴を埋めてくる。今度はその中にベルトランも含まれていた。奴は早々に王の側を離れて私に向かってきた。良い判断だ。だが近衛の団長らしからぬ判断だ。それだけ我らを脅威と認識しているのだ。



「決着をつけよう! ベルトラン!!」


「もはや話す事は無い! 妖精王!!」


 いつもと口調が違う。完全に私を敵と定めたのだろう。やはりあの時が最後だったのだ。我らが友として会う事が出来たのは。もはや惜しいとは思うまい。私が選んだのはそういう道だ。正直もう少し穏便にいきたかったんだけど、ベルトランのあの様子を見る限り一騎打ちに応じてくれそうにもなかったもんね。ならば致し方なし。力尽くでこの国の者達を従えよう。妖精王には何人たりとも抗えぬのだと示してみせよう。我らの望む自由を掴み取る為に。

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