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06-37.理想の王

「そうか。私を止めに来たんだね」


「予想外か?」


「いいや。ただ君の行動には一貫性が無いと思っただけだよ。一人で来た事にも少しは驚いたけどね」


「そうだな。自覚はあるさ」


「君は私を勝たせたいのではなかったのかい?」


「勝ち方が気に入らん」


「おかしな事を言うね。全ては予定通りじゃないか。元々陛下とダリオはこうするつもりだったんだよ?」


「いいや。彼らは生きるつもりだったさ。その為に聖教国と手を組んだのだからな」


「……よく調べたね」


「お互い様だ。フラビアを巻き込んだのはお前だな?」


「そうだよ。正解だ。本当によくぞ気付けたものだね」


騎士団長ベルトランが邪魔だったか」


「ああ。もし陛下の気が変われば彼の存在は厄介だ。確実に味方につけておきたかったんだよ」


「何故正直に答えた?」


「だって君は伝えないだろう? この国には私が必要だ」


「……そうとも限らんぞ」


「ならパティに取らせるかい? 正直な所私はそれでも構わないんだよ」


「お前の目的はなんだ?」


「おかしな事を聞くんだね。王位以外の何があると思うんだい?」


「それがわからないから聞いている。少なくとも王位にそれほどの興味は無い筈だ。たった今自分でそう言ったではないか。パティが取るのでも構わないのだと」


「そうだね。全て君の言う通りだ」


「話す気はないのか?」


「困ったねぇ」


「何がだ?」


「きっと君の納得出来る答えは用意できないよ」


「そんなものは必要ない。私が聞いているのはお前自身の目的だ。お前の本心はどこにある?」


「全て本心さ。少なくとも今話した事についてはね」


「ならば質問を変えよう。お前はどんな王になるつもりだ?」


「平和な国の王。かな」


「自ら家族を手にかけて築き上げた者がなれるのか?」


「特段珍しい事ではないよ。それ自体はね」


「家族に家族を葬らせる事もか?」


「ああ。ようやくわかったよ。君が何に憤っているのか」


「お前は卑怯者だ。常に裏に潜み自身の手は汚さない。そうしてフラビアを罠に嵌め、第三王子の始末はニコライに任せた。あげく派閥の運営は娘に任せきりだ。そのくせ娘に都合の悪いことは何一つ教えない。結局真実を語る事もなく切り捨てた」


「そうだね。君の言う通りだ。私は安全な場所から指示を出すだけだ。それが私の思う理想の王の在り方だからね。だがこれは本当におかしな事かな? 王がいつも前線に立つ方があり得ないとは思わないかい? 陛下だってそんな事はしていない。君は知っている筈だ。アルナスカ帝国との戦争を。それといったい何が違うんだい? バルデム辺境伯に任せる事はおかしな事だとでも言うのかな? それともニコライとは血の繋がりがあるから特別だとでも? それは本当に国や民の生活よりも大切な事なのかい?」


「ならばニコライには全てを話していたのか?」


「そんな事はしないよ。ニコライ自身が長年追い求め続けてきた事だ。その努力を無駄にするような無粋な真似はしないよ。だから私はただ助力するに留めたんだ」


「それを本気で言っているのか?」


「これでも手段は選んでいるつもりだよ。選んだ上で最小限の犠牲と最大限の成果を求めてきた。そう自負しているよ」


「本当に気付かないのか? お前がフラビアを罠に嵌めたからニコライは探っていたのだぞ? それを助力しただと? 努力を無駄にさせないだと? お前はあいつの思いを何だと思っているのだ? やつがどんな思いで弟を討つと考えているのだ? それも仕方のない事だと言うつもりか?」


「ダリオの為だ。あの子もこれ以上」


「ふざけるな!」


「……」


「お前は常にそうして誰かに責任を押し付けてきたのか!? それがお前の言う理想の王の在り方か!? 手を汚さないどころか責任すら持たぬと言うのか!? そんな王がいてたまるか! 王どころか人を導く者としても失格だ! もっと早く気付くべきだった! ニアはお前のそんな後ろ姿を見て育ってきた! だからあいつも嫌われ者なのだ! 勝負のしかたが汚いのだ! 王族だから! 民の為だからと! 何をしても許されるとでも思っているのか!? そんな筈は無かろう! 王がお前に何も語らなかった理由はそこなのだ! お前は卑劣者だ! 信頼に値せん!! お前はとっくに見限られていたのだ!」


「父様……」


 姉さんの術で姿を消していたニアが現れた。



「……ジェシー? いつからそこに?」


「……最初からいたわ。全部聞いてた」


「そうか……」


「愚兄」


「ニコライ。君もなのか」


「殿下。洗いざらい吐いて貰います」


「驚いた。騎士団長まで」


「……」


「陛下までいらしていたとは。よくぞ味方につけられたものだね。妖精王」


「何も話してなんぞおらん。ただ声が届くようにしておいただけだ。ニアと違って彼らは最初からこの場に居たわけではない」


 小さな転移門を開きっぱなしにしていただけだ。彼らはその穴からこちらの様子を覗いていた。そしてたった今穴を広げたのだ。私が招かずとも彼らは自らこの場に足を踏み入れた。



「君のやり方は私とは違うのかな?」


「どうだろうな。正直私にもわからん。だが少なくとも私はお前のやり方が気に入らん。だから断罪する。それだけだ」


「そうか。うん。これは仕方がないね。完敗だよ。当然後の事は君が責任を持ってくれるんだよね? 私を断罪するからには覚悟の上で動いた筈だ。そう君が言ったのだから」


「必要ならばな。だがこの国は、私なんぞに頼らねばならぬ程弱き国でもあるまい」


「ズルい答えだ。やっぱり君は王に向いているよ」


「そうだな」

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