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06-34.かつての真相

「来たか。妖精王」


 最初に反応したのは第二王子ニコライだった。私達に背を向けたままでありながら、私達が乱入してきた事に真っ先に気付いたようだ。



「来るのがわかっていたような口ぶりだな。第二王子」


 ニコライは私をエリクではなく妖精王と呼んだ。この場で友人として接するつもりは無いようだ。



「ふん。知れたこと」


「えらく機嫌が悪いではないか」


 念願の王位に文字通りの王手を掛けている割には剣呑な雰囲気だ。やはり目的は王位ではないのだろうか。



「失望したぞ。貴様が気付いておらんとはな」


 気付く? 何にだ?



「役者は揃った! 話してもらうぞ! 父上!」


「……全てお前の調べ上げた通りだ。あの日フラビア・アルバラードを呼び出したのは余だ」


「フラビアだと!?」


 何故スノウの話が!? あの日だと!? まさか!?



「卒業した日か!? スノっ! フラビアが行方を眩ませたあの日の事か!?」


「そうだ」


「おいっ! どういう事だ! 陛下!!」


 王に掴みかかりそうになったベルトランを数人の近衛騎士が慌てて引き止めた。



「どうもこうもあるまい! 全ての元凶はこの男だ! あの子を捕縛し! 非道な実験の果てに記憶を奪い! 裏ギルドなんぞに流した! 証拠を消すために! それが真相だ!」


 ベルトランが近衛騎士達を振り払って王の首筋に剣先を突きつけた。



「「「「騎士団長!!」」」」


 振り払われた近衛騎士達が再びベルトランにしがみつき、どうにか王から引き剥がそうと必死に引っ張るも、ベルトランはびくともしていない。



「よい。好きにさせよ」


 王は静かに騎士たちを制止した。



「「「「……御意」」」」


 騎士たちは僅かばかりの逡巡を見せたものの、王の言葉に従ってベルトランから手を離した。



「説明してくれよ。なあ。嘘だって言ってくれよぉ……」


「全て真実だ。余が命じて攫わせた。お前の名を使って呼び出した。余は警戒されておったからな。あの子は聡い子だ。余の目論見に気付いていた。だから触れてしまった。余の秘密を暴きかけていた。見過ごす事は出来なかった」


「……」


「騎士団長。悪いが首を刎ねるのは待ってもらえるかな?」


 こんどは第一王子が止めに入った。



「陛下にはまだ話してもらうべき事がある」


「……御意」


 ベルトランは第一王子の言葉に従って剣を収めた。正直飲み込みきれていないのだろう。私もそうだ。何故こんな話になっているのだ。まさかニコライはスノウの為にこの騒ぎを引き起こしたとでも言うのだろうか。



「これ以上話す事は無い。斬れ」


「陛下。そういうわけには参りませぬ。ここであなたが逃げる言うのであれば次はダリオに問わねばなりません」


「……奴は関係ない」


「調べはついております」


「後生だ。余の首一つで収めておくれ」


「ならば自らの口でお話しくださいませ。でなければ諸共に道連れと致しましょう。関わっていたと断定された者は一人残らず陛下と共にお送り致します」


「ダメだ。それはならん。お前は次の王だ。その手を無意味に汚すでない」


「玉座が血に塗れていると言うのなら結局は同じ話です」


「……」



 それから王が口にしたのは概ね想定された通りの内容だった。カルモナド王家は二千年以上もの間、魔王の研究を続けてきた。そしてこれは我々も知らなかった事だが、元はと言えばヴァイス王家に連なる王子の一人が魔王に立ち向かい勝利した事で、この地にカルモナド王国を築き上げたそうだ。カルモナド王国は最初から魔王の脅威に立ち向かう為に建国された国だったのだ。


 第一王子が事前に聞き出せていたのは本当に一部だけだったのだな。或いは知っていて私達には伏せたのか。



「二千年前に魔王が現れたのか?」


「そう言い伝えられている」


 どういう事だ?


『あり得ません。ルベド姉さんが討ち滅ぼした筈です』


 まさかとどめを刺しきれていなかったのか? カルモナドの地まで逃げ延びた?


『聞いてくるよ。お母様なら何か知ってる筈だから』


 頼む、キトリ。



「妖精王。お前は何も知らぬのだな。転生者とは女神が遣わした者であろうに」


 やはり気付いていたのか。



「人の王よ。お主こそ誤解しているようだな。既に今代の魔王は我らが退けた。この国に危機は訪れん。そして二度と魔王が誕生する事も無い」


「……そうか。まことであったか」


「もう少し我が子を信じるべきではないか?」


「今更言ったとて詮無きことよ」


「自棄になっておるのか?」


「……」


「フラビアの件は一角に過ぎんのだろう? お主らは散々手を汚してきたのであろう?」


「そうだ」


「何故そうまでして秘密を守ってきた?」


「知れたこと。魔王を生み出したのは神自身であろう」


 ……知っていたのか。意味があるかどうかはともかく、可能な限り秘匿を続けてきた理由としては十分か。



「ならば何故我の言葉を信じる?」


「お前が神に唾吐く者であったからだ」


 復讐しようとしていた事か? 何故知っているのだ?



「なんだ。こんな事も知らんのか。これでは余の眼もとんだ節穴ではないか」


「わかるように話せ」


「妖精族は神と敵対していた筈だ。少なくとも千年前はな」


 なんだそれは。そんな事があるものか。千年前と言えばメグル達が旅をしていた頃だ。シルクはメグルだけでなくマグナ姉さんの事も慕っていたのだ。敵対なんぞするものか。



『いえ。メグルは当初主様を嫌悪していました。無理やり召喚されたと憤っていたのです』


 それで誤解を与えたと? そもそも妖精族の存在を知っておったとはな。何故そんな情報すら伏せていたのだ。かつての戦友を慮ってか? ダメだな。情報が足りなさすぎる。そもそもこの王とて伝聞でしか知らんのだ。代を重ねた事で伝わった情報が歪んでしまった可能性もあり得るだろう。



「少なくとも現代の妖精族は神と敵対なんぞしておらん」


「貴様個人はどうなのだ?」


 あからさまに警戒し始めたな。今更過ぎるだろうに。



「我は神の子だ。母を支えるのは我の役目と心得ている」


「……」


「認めよう。魔王を生み出していたのは我が母だ。だからこそ我らが止めたのだ。だからと言って責任を果たし終えたなどとは言わん。この国の闇は我らにも責任がある。道を正すと言うなら力を貸そう」


「ならば貴様が王となれ」


「何故だ。お主には頼れる息子達がおるではないか」


「責任を持つと口にするならば人の営みを知るべきだ。高みから見物するだけでなく自ら国を動かしてみせよ。貴様が神の眷属だと言うのならば女神めに見せつけよ。二度とふざけた真似をする気が起きんようにな」


 ……尤もだな。我らは国の運営について何も知らん。カルモナド王家の闇がそうであるように、時に大義の為には犠牲すらも必要となるのだろう。それらを知らずして上から目線で好き勝手干渉する強者なんぞ、人間達からすれば厄介極まりない存在だ。


 そうでなくとも魔王なんてものを生み出して多くの人々を傷付けてきたのだ。カルモナド王家に連なる者達は神の行いによって縛りつけられ続けた者達でもある。責任を持つと言うのなら先ずは知れというのも尤もな話しだ。


 真実、神である母さんは人間の営みを重要視していない。そもそも人間一人ひとりに興味がない。時たま興味を惹かれる者もいるにはいるが、それ以外の多くの者達を数ある資源の一つとしか捉えていない。その母さんが人の営みにより強い関心を持つ事で世界はより良くなるのかもしれない。


 しかしまだ気になる事がある。それにこの話に乗るわけにもいかない。悪いが話を変えさせてもらおう。



「お主にコルティスの存在を知らせたのは何者だ?」


「それも伝え聞いた事だ」


 伝え聞いた? 千年前から? 或いは二千年前から? そんな筈はあるまい。シルビアの件は完全な偶然だ。少なくとも母さんとアニムスさんはそう認識している。しかしこの状況でこやつが嘘をつくか? 何の為に? いや違う。何かがまだ足りていない。そんな気がする……。

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