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06-28.献身者の悪巧み

「ふふ♪ うふふ♪ うふふふふ♪」


「ゆーちゃん……何その笑い……」


 ちょっと不気味……。



「失敬ね♪ 普通に楽しんでいるだけじゃない♪」


「何か良い事でもあったの?」


 おかしいな。ずっとここに居た筈なのに。部屋には私とゆーちゃんの二人きりなのに。姉さんズすら側に居ないのに。



「あの子って達とっっっっっっても!! 可愛いわよね♪」


「あの子達?」


「あの三人よ♪ ユーシャとパティとディアナに決まっているじゃない♪」


 まさか覗いてたの?



「そりゃ勿論可愛いけども……。ゆーちゃんが言ってるのって見た目や言動の話じゃないよね?」


「あら? どうしてそう思ったのかしら?」


「惚けないで。事と次第によってはゆーちゃんと敵対してでも向こうにつくからね」


「あらあら♪ うふふ♪ これは早々に決着がついてしまうかもしれないわね♪」


「決着? 誰が一番かって話?」


「流石の銀花でもそこまでニブチンではなかったようね♪」


「何を企んでるの?」


「ただの新人歓迎会よ♪」


「新人? まさか自分の事を言ってるの?」


「別に誰が企画したって良いじゃない♪ 大切なのはこれから仲良くやりましょうって印象づける事なんだから♪」


 ふてぶてしいにも程がある。



「随分穿った見方だね。普通は素直に歓迎する気持ちを込めるものだと思うよ」


「普通じゃ面白くないもの♪」


「変な事ばかりしてると嫌われちゃうよ? ゆーちゃんって私以外に本当に親しい友達はいなかったでしょ?」


「……流石は銀花ね。痛い所を突かれてしまったわ」


「自覚してるなら気をつけなよ。普通にしてれば人気者にはなれるんだからさ」


「何すっとぼけた事言ってるのよ。そこまで気付けたのならわかりそうなものじゃない。私の本当の特別は銀花だけで良いのよ。他を望んだ事なんて一度たりともありはしないわ」


「わざとやってたって言うの? そんなの後付でしょ。単に私に執着してるってだけでしょ。私以外に本気になれないだけでしょ。最初は良くても絶対に見透かされるよ。あの三人はそんな甘い相手じゃないよ。仲良くなりたいなら真剣になりなよ。くだらない策なんて忘れてさ」


「くだらないって何よ! そこまで言う事ないじゃない!」


 ありゃ。少し言い過ぎた? 思ったより大きな反応だ。



「銀花こそ甘く見すぎよ。あの子達が私を本当の意味で受け入れるには多少の荒療治も必要なのよ」


「皆優しい子だよ? ゆーちゃんもそれはよくわかっているでしょ?」


「だから手段を選んでいるのよ。私だって皆と仲良くしたいの。本当の家族になりたいの。けれどあの子達にはどうしても私を認めるわけにいかない理由があるの。私が銀花の隣に居続ける為には必要な事なのよ」


「どうしても分けて考えるわけにはいかないの?」


「無理よ。あの子達は銀花の事が大好きなんだもの。譲る事だけは絶対に出来ないわ」


「皆一番じゃダメかな……」


「今更何言ってるのよ。全部銀花が言い出した事じゃない。あなたが明確に線引してしまったから今があるのよ。だからあの子達は止まれないの。私がユーシャと同じように特別扱いされる事は目に見えているんですもの。そんなの見過ごせる筈が無いじゃない。少しあの子達の立場になって考えてみればわかる事でしょう?」


「はい……仰る通りです……」


「私はあなたの尻拭いをしようとしているだけよ。妙な誤解はやめて頂戴」


「……本当にそれだけ? 楽しんでない?」


「何バカな事聞いてんのよ。そんなの楽しいに決まってるじゃない。まさかそれも悪いってんじゃないでしょうね?」


「そりゃ悪いでしょ。そうやって調子に乗ってるゆーちゃんは絶対やり過ぎるんだから。やるなら真剣にやらなきゃダメだよ。面白半分にちょっかい出したら皆に見透かされちゃうんだからね?」


「そうね。銀花の懸念も尤もね。認めましょう。私のやり方では失敗するかもしれない。その危険はあるわ」


 あら素直。



「銀花も知恵を貸しなさい」


「もちろんそのつもりだけど、ゆーちゃんはどんなゴールを目指してるの?」


「私が一番。ユーシャが二番」


「ダメだってば。絶対にそれは認められないってば」


「もちろん冗談よ。理想とする所ではあるけど無謀である事もわかっているわ」


「ならどうするの?」


「そんなのフラットに戻すしかないじゃない。皆纏めて一番よ」


「それさっき否定してたじゃん」


「今すぐには無理だと言ったのよ。その無理を通す為に準備をしているのよ」


「上手く行くかなぁ……」


「他にあると言うなら聞くわよ」


「それは……無いけどさ……」


「銀花がそんなだから私が危ない橋を渡ろうとしてるんじゃない。下手したら私嫌われちゃうのよ? そんなのあんまりだと思わない?」


「もちろん悪いとは思ってるけどさ」


「罪悪感を感じるくらいなら感謝して欲しいわね」


「してるしてる。感謝してる」


「おざなりだわ」


「そんな事ないって。ゆーちゃんはやっぱり私のゆーちゃんなんだなって思ってるよ。伝わってるでしょ?」


「あなた当たり前に享受し過ぎよ。皆無とは言わないけど薄すぎるわ。私への感謝の念が」


「そりゃそうでしょ。ゆーちゃんは私に無償の愛情を注いでくれる唯一の存在だったんだから。私にとっては当たり前のものだもん。絶対に手放してなんかあげないよ」


「だった。ね」


「やっぱりゆーちゃんも一番が諦めきれない?」


「意地の悪い質問ね。ほんと銀花も大概よね。自分が悪いって自覚が足りないのよね」


「けど感謝はしてるんだよ?」


「今は感謝より愛情が欲しいわ」


「移り気だね。けどそれこそめいっぱい注いでるじゃん」


「対価が安すぎないかしら? 銀花が全身全霊で注いでも到底足りないくらいには尽くしていると思うのだけど?」


「それを言われちゃうとバツが悪いのは否定出来ないね」


「回りくどい答え方しないで」


「なら何が欲しいの? 私は何をすればゆーちゃんの献身に応えられる? ユーシャ達への気持ちを諦めずにゆーちゃんの一番を占有し続けるには何が足りないの?」


「そんなの求めてないわ。足りないというのは言葉の綾よ。銀花の気持ちが足りていないだなんてある筈ないじゃない」


「そっか。それは何より」


「だからわかるでしょ。あの子達が警戒するのも」


「そうだね……」


「作戦を考えましょう」


「わかった。私もちゃんと考える」


「それでいいわ」

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