06-25.仲良し?
「流石は竜王の血筋ですね。未だ限界には至りませんか」
「我の事追い返したいの?」
「いいえ。他意はありません。素直に感心しているだけですよ」
「そうは聞こえなかったけど」
「無理はなさらないでください。気分が悪いのならば早々に引き返す事をお勧め致します」
ねえ、この二人本当に仲悪くないの?
『若干自信が無くなってきたわね……』
もうちょい頑張って。
「シスカ。ソラを育てる事になった経緯を教えてほしい」
「託されたからです」
「何故ソラの母君は?」
「わかりません。先程も申し上げた通り私の記憶の一部は抜け落ちています。ただその子を育てている間の私は親友から預かったその子を慈しんでおりました。それだけは間違いありません」
「慈しむなんてあの婆さんには似合わない言葉だったよ」
「親の心子知らずとはまさにこの事でしょうか」
「だいぶ記憶が抜け落ちてるみたいだね。生まれたばかりの我を散々虐待した挙げ句、夜の森に放置して魔物達までけしかけてきたくせに」
「それら全てが教育だとわかっていたからあなたは最後まで付いてきたのでしょう?」
「……他に選択肢が無かっただけだもん」
「ちっぽけな魔物に過ぎなかったあなたが今日この時まで生きてこられたのは私の教育あってのものです」
「だから別に恨んだりしてないってば。優しくなんてなかったって言ってるだけ」
「心を鬼にして我が子を育て上げる事もまた優しさですよ」
「度が過ぎてるの!」
「竜種を育てるのに生半可では意味がありません。それはあなた自身が一番わかっている筈です」
「ならずっと一緒に居てくれればよかったじゃん!」
「……そうですね。私に残された時間もそう長くはありませんでした。短期間の内に詰め込まねばならなかった事も事実です。その点については謝罪しましょう。あなたが望むならやり直しても構いません。今度こそ万全に育て上げてみせましょう。そう約束致します」
「うそつき。ここから出る事も出来ないくせに」
「仰る通り。ぐぅの音も出ないとはまさにこの事ですね」
「そんな話し方やめてよ」
「難しい注文です。今の私にとってあの頃の私は別人のようなものですから」
「婆さんと話してもつまんない。いつもそうやって融通の利かない事ばっかり。他には嫌味しか言わないし」
「あなたは私の事をよく理解していますね」
「っ! 帰るよ! 主様!!」
「う、うむ……。ではまた来よう。またな、シスカ。今度はキトリも連れて来る」
「嫌です。二度と連れてこないでください」
「まあそう言わず」
「どうせならフランを。いえ、あなた達のフランではなく」
「見つけ出せたのなら伝えよう。ここでお主が待っていると」
「ありがとうございます。エリクさん」
ソラと共に鏡を潜って元の部屋に戻ってきた。ソラはすぐさまベットに飛び込んでしまった。
「ソラ」
「来て。主様」
枕に顔を押し付けたまま片手でペシペシと自身の隣を叩いている。その指示に従って隣に脚を伸ばして座ると、すぐに頭を乗せてきた。今度は私の腹に顔を押し付けてきた。
「……」
頭を撫でても特段反応は示さない。それでも私は暫くの間ソラを撫で続けた。
「……うが~~~~!!!!」
「どうした?」
「むかつく!!」
「シスカの方はソラと仲良くしたいようだったぞ?」
「暇つぶしの相手がほしいだけだもん!!」
まあ軟禁状態だからな。それにあの地は人も少ないし。案外とシスカも心細かったりするのかもしれない。
「ソラは良い子だな」
「突然なに?」
「それでも相手をしてあげたいと思っているのだろう?」
「そんな事思ってないもん! 別に恩返しとか考えてないもん!!」
可愛い。
「むかつくから暫く会いに行ってやらないし!」
「次はいつにする?」
「百年後!!」
自分が放置された分と同じだけ待たせるのか。可愛い。
「もう少しだけ構ってやるといい」
「なら来週!!」
急激に縮んだな。ソラもなんだかんだと会いたいのだな。
『話し方がつまらないなんて文句はもっと話したい相手にしか言わないものよ』
そうかもね。嫌なら黙って会話を打ち切ればいいんだし。
「ならまた来週な。次は一人で行ってみるか?」
「主様も一緒に決まってるでしょ!」
「そうか。うむ。勿論付き合うとも」
「ファム呼んで!」
急だな。
「来たよ~♪ ソラ君♪」
早かったな。呼んだらすぐに来た。
「ふふふ♪」
「ちょっと。なんでティナまで来ちゃったのさ」
「クーちゃん様からお声が掛かりましたので♪」
「主様!」
「呼んでない呼んでない。私が声かけたのはファムだけだってば」
「ふふ♪ 照れなくても良いのです♪ クーちゃん様♪」
「摘み出して! 今すぐ!!」
「まあまあ、ソラ君。そう邪険にしないであげて」
「ならいいもん!」
言うなりソラは私を押し倒して唇を重ねてきた。
「あらら。ソラ君たら今日は一段と荒れてるね」
「ふふ♪ 熱烈ですね♪ 私達も負けてはいられません♪」
「しないよ?」
「問答無用です!」
当然マーちゃんがファムに勝てる筈もなく、あっさりと返り討ちにあって縄でぐるぐる巻きにされてしまった。しかもご丁寧に猿轡付きだ。アウルムに何持たせてるのさ。
「む~~!!! むーーー!! む~~~♪」
あれ? なんかちょっと喜んでない?
「はいこれ。クーちゃんの好きにしていいよ」
どさっとベットの上に簀巻きの妹を放り投げたファムは私の上からソラを引き剥がして押し倒した。
「ソラ君♪」
「ファム♪」
ズルい。
「ふっふっふ♪」
「出てきたな。ゆーちゃん」
「む~~~!!!?!」
いよいよ本当に除け者にされると気付いたマーちゃんが今更ながらに激しく暴れ出した。ベットから落ちると危険なので、ミノムシマーちゃんをベットの中央に移し、その両脇を私とゆーちゃん、ソラとファムが固めた。
「クーちゃんたら鬼っ畜ぅ~♪」
いや違くて。別に見せつけようとしたわけじゃなくてね。
「む~~~! むぅう~~~!!!」
マーちゃんは涙目だ。興奮より絶望が勝ったらしい。
「ねえ、銀花。私今ならいけそうな気がするの」
「それは嫌だなぁ……」
というかドン引きだよ。なに言ってるのさ。つまりそれってマーちゃんの涙に興奮したって事でしょ? 挙げ句それを私にぶつけようとしてるんでしょ?
「ゆーちゃんが出てくると奇数になるじゃん」
「なら指咥えて見てろと?」
「そう言ってるんだけど。正直邪魔だよ。私ゆーちゃんには興奮しないもん」
「なっ!? いいわ! 銀花がそんな事言うなら私にも考えがあるわ!」
ゆーちゃんは私を魔力で拘束し、ぐるぐる巻きのマーちゃんの上に覆いかぶさった。
「むふ♪」
「ちょっと! それはシャレにならないってばぁ!!」
マーちゃんもなんで悦んでんのさ! 私への愛はその程度のものだったの!? てか拘束硬っ!! なにこれ!? どうやって破るの!?
「助けてフーちゃん!!」
「ほいきた♪」
虚空から現れたフーちゃんが、私にはどうにもならなかった魔力拘束をアッサリと砕いてくれた。
「ふっふっふ♪」
あかん! 人選間違えた!?
「ルベ」
言いかけた所で唇が塞がれる。
「待っ!」
ダメだ。最後まで言わせてもらえない。今は私の中にネル姉さんもキトリもいない。ルベドとニタス姉さんは母さんの所だ。気付いて助けに来てくれるだろうか。いつもの光景過ぎてまたやってるよと思うのが関の山だろうか。
「あれ? ギンちゃん? 泣いてる?」
「……あれ」
私はいつの間にか涙を流していた。ゆーちゃんの方へと手を伸ばしながら。
「悪かったわ。悪ふざけが過ぎたわね」
ゆーちゃんが優しくその手を握りしめてくれた。気付くと皆が私を囲って心配そうに覗き込んでいる。そう自覚すると途端に恥ずかしさが込み上げてきた。ダメだこれ。きっと顔中真赤になっている事だろう。咄嗟に両手で覆い隠してしまった。折角握ってくれたゆーちゃんの手まで振り払ってしまった。
「「「「「……」」」」」
あれ? なんか静かすぎない?
恐る恐る指の隙間から周囲を覗いてみると、未だに全員が私の顔を覗き込んでいた。
「クーちゃん様の新たな一面を垣間見ました♪」
「今のはズルいよ、クーちゃん」
「ふふふ♪ 銀花が特別な反応を示すのは私にだけよ♪」
「けど負けるつもりは無い。主様は我のもの」
「フーちゃんもなぁ~。ちょっとショックだなぁ~」
えっと……。
「ここは協力致しましょう♪」
「お情けで乗ってあげるわ♪」
「え~。ボクはクーちゃんとソラ君だけでいいんだけど」
「我もファムと主様だけがいい」
「皆仲良くしようぜ♪ 泣いてるギンちゃんなんか見たくないんだぜ♪」
まだ話しが纏まっていないらしい。今なら逃げ出せるだろうか……。
「ならクーちゃんを泣かせたゆーちゃんは退場って事で」
「そうだよ。ユウコが浮気しなきゃ主様泣かないんだし」
「二人は本当にそれで良いのですか? 負けを認めるというのですか? ユウコ様の勝ち逃げを許すと仰るのですか?」
「「そんなわけないじゃん」」
あかん……。
「受けて立つよ!」
「どっちが上かわからせてやる!」
「その意気です♪」
おいこら。
「ふふん♪ 私に勝てるかしらね♪」
「「絶対勝つ!!」」
なんで焚き付けるのさ……。
「フーちゃん知ってるもんね~♪ ゆーちゃんは特別だけど特別じゃないって♪」
そうだ! 言ってやれ! 全ては勘違いだと!
「フーちゃん。後で、ゴニョゴニョ……」
「仕方ないな~」
買収!?
「ふふふ♪ これで話は纏まったわね♪」
「勝負の方法はどうするの?」
「主様に選んでもらえば、ううん。主様が選べるわけ無いから一番夢中にさせた人が勝ちでいいよね」
「持ち時間を定めましょう。ズルは無しですよ、皆さん」
「フーちゃんいっちば~ん♪」
「「「「「させるか!!」」」」」
なっ!? ちょっ!?




