06-23.穏やかな日々
「本日から改めてお世話になります」
「こちらこそ。どうぞ自分の家と思ってお過ごしください」
「お義父様の方こそ我々にかしこまる必要はございません。家長は貴方様なのですから」
「恐れ多いですなぁ……」
まあ追々か。焦る必要は無いものな。
「ハニィ~♪ 城内を案内シマ~ス♪」
ロロはすっかり緊張感が抜けたようだ。先日一緒に来た時はまだ遠慮がちだったものだが。今ではご両親の前でも気にする事なく私の腕に抱きついてきた
「ようこそ義姉さん。お待ちしていました」
何故か反対の腕にエフィまで抱きついてきた。
「ルシアはどうしたの?」
「二手に別れました。義姉さんは私について来てください」
「ム~! 必要アリマセン! ハニィは私が案内シマス!」
「どの部屋を掃除しておいたかなんて姉さんにはわからないじゃないですか。大人しく二人とも私に従ってください」
エフィはロロや父の様子を気にする事もなく、私の腕を抱いたまま歩き出した。
「何か話したい事でもあるのか?」
三人だけになった所で問いかけてみた。
「流石は義姉さんです。ロロ姉さんとは大違いですね」
「嫌ナ感ジデスネ」
「もう少し私を信じてください。別に義姉さんを取ったりしませんよ。私にはルシアがいるんですから」
「ソンナ態度には見エマセン」
「ちょっとした冗談じゃないですか。少し義姉さんを困らせようと思っただけです。まさかロロ姉さんの方がそんな態度をとるなんて思わなかったんです。すみません。悪ふざけが過ぎました」
エフィはそう言ってようやく私の腕を手放した。
「けれど義姉さんも義姉さんです。顔色一つ変えてくれないなんて残念です」
「悪かった。姉妹仲良くやろう」
今度は私からエフィの手を握ってみる。
「ふふ♪ 義姉さんは大変ですね♪」
嬉しそう。よくわからない子だ。
「それで話とは?」
「仕事の話です。私はヴァイス家の権威を回復させるつもりです。義姉さん達も手伝ってください」
そりゃぁお父上の前では話せんな。それにパティ達にも。これは甘えてくれているのだ。私達を姉と見込んで。でなければ頼んだりは出来なかったのだろう。エフィはそれを恥だと思うだろうからな。ただでさえ私達がここに越してきたのは自分達への気遣いだと思っているのだろうし。
「もちろん構わんさ。私達も最初からそのつもりだ」
「ありがとうございます」
「気にスル必要はアリマセン。私達は家族デス」
「なにロロ姉さんまでそっち側に立ったつもりになっているんですか。あなたも私と一緒に頭を下げる側ですよ」
「フフ♪ ソレもソウデスネ♪」
「ロロはもう頼んでくれたのさ」
「でしょうね。もちろん信じていますよ。私は姉さんを」
「私は疑ッテマ~ス。エフィもハニィが大好キデェ~スネ」
「当然じゃないですか。何度も助けてくれた義姉さんです。迷惑かけて自分だけ居なくなってしまった薄情な姉さんとは違うんです」
「スミマセン……」
「冗談です。姉さんが私達の為に距離を取っていた事もわかっています。私はロロ姉さんの事も大好きですよ」
「エフィ~!」
「はいはい。行きますよ。部屋までもうすぐですから」
ふふ♪ 仲良し姉妹だね♪
『私達だって負けてないわよ』
ならゆーちゃんも出てきたら? なんで折角身体を貰ったのにまた私の中で過ごしてるの?
『少し待っていなさい。仕掛けが済んだら私もそっちで過ごすわ』
仕掛けって何さ。人の中で何やってんのさ。
『別に私だけじゃないわよ。他の姉さん達だって。あら? これ言っちゃダメだったやつ?』
ちょっと。
『皆心配性ってだけよ。それから居心地も大切って話』
まあいいけどさ。
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『マカレナ嬢。調子は如何かな』
『こちらは問題ありません。御使様』
いつの間にか妖精王陛下から呼び方が変わってる。マカレナ嬢の中で私の立ち位置がそのように定義されたのだろう。
『彼らは変わらず私を重要視しております。以前よりも待遇が良くなった程です』
マカレナ嬢は回復した加護を示して後一度だけチャンスを与えられたと周囲の者達に告げたのだ。第三派閥の者達はそれはもう喜んだそうだ。自分達が神に認められたのだと勘違いでもしているのかもしれない。
『決行の時はまだ少し先の話となるだろう』
『承知致しました』
『危機が訪れた際には迷いなく助けを求めるのだぞ』
『感謝致します』
この子は少し頑固者というか、自己犠牲も厭わない部分がある。貴族令嬢としての心構えが出来すぎている。こちらも見逃さぬように気をつけねば。それがニアの望みだ。私は絶対にこの子を傷つけさせるわけにはいかんのだ。
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「ねえ、クーちゃん。クーちゃん少し記憶力落ちてない?」
「え?」
「そうだよ主様。あの女が外出てる時って主様のパフォーマンスが低下してるんだよ」
そうなの?
「折角我が育てたのに」
もしかしてキスの話してる?
「ショックだよ。主様があんなのに頼ってたなんて」
なんでソラはそんなにゆーちゃんの事嫌いなの?
「これはしっかり鍛え直さないと」
「ふふふ♪ ボクももちろん付き合うよ♪」
ソラとファムといるといつもこうなるじゃん。ゆーちゃんの件と関係無く。
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「~♪」
『ご機嫌だな。ユーシャ』
「エリクのお陰だよ♪ 久しぶりに二人きりで、しかもこうして薬瓶の姿で歩きたいだなんて♪」
『まあたまにはな。これはこれで落ち着くのだ』
「私の胸が?」
『懐かしいだろ。ユーシャも』
「そうだよ♪」
私は久しぶりに薬瓶に意識を戻してユーシャと二人で聖教国へとやってきた。今日は下見だ。女神モードで歩き回る前に一旅人としてこの国をもう一度見ておきたかったのだ。
『この国は初めてだが私達はいつでもそうだったものな』
「だね。十年も旅を続けていたんだもの」
『だがそれでも随分と狭い範囲だったのだな』
「驚いたよね。世界ってこんなに広かったんだね」
『また二人で旅をしよう』
「もちろん♪ 世界中くまなく歩こうね♪」
『それもいいな。私とユーシャの目標だな』
「永遠に続けられるね♪ ここもまた変わっていくんだし」
『そうだな。変わったらまた来よう。そうして永遠に私達の旅を続けるとしよう。なんならマグナ姉さん達のように世界の外に飛び出したっていい』
「皆と一緒に?」
『方法と気分次第だな。中々戻れんなら皆で行きたい。日帰り程度ならユーシャと二人きりがいい』
「エリクがそういう時間も確保してくれるのは嬉しい♪」
『ならゆーちゃんの事も認めてくれるか?』
「喧嘩はしないよ。仲良くするかはこれから次第」
『それでも十分だ。今の所はな』
「エリク次第でもあるんだけど?」
『すまん。選べん』
「ハッキリ言うようになったね」
『すまん』
「ダメ。いくら謝ったって認めない。浮気は許さない。私を一番として扱う事が条件だって最初に言った筈でしょ」
『うむ……』
「ふふ♪ エリクの覚悟もまだまだだね♪」
『そう、かも……しれんな……』
「~♪」
ごめん、ゆーちゃん。私ではユーシャを説得しきれそうにない……。
『しなさい。絶対に』
なんでこっちに……。私の身体を代わりに動かしてくれてたんじゃなかったの?
『ただの念話よ。デートは許したけど盗聴しないなんて言ってないわ』
盗聴の自覚あるなら遠慮して……。
『無茶言わないで。一つの心を分け合ってるんだから仕方ないでしょ』
私が見えてないんだから方法くらいあるでしょ。
『それよりいつまでも私と話していていいの? 今はデート中でしょ?』
「エ・リ・クぅ~♪」
あかん……。




