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05-69.降臨

「「あっれ~?」」


 鏡から双子が飛び出してきた。普段と違う場所に出た事に驚いているようだ。首を傾げて当たりを見回している。



「キスカ、ファスタ。すまんが神器の場所を変えさせてもらった。事後承諾で申し訳ないが許してもらえるだろうか?」


「「う~ん……いいよ!」」


「ありがとう。この家には特別な者も多い。きっと寂しい思いはさせないだろう」


「「うん!」」


 双子は早速走り出した。屋敷の探検をするのだろう。そもそも素質が無い者は認識すら出来ないようだし問題は無いだろう。認識出来なければ倒れる事も無いようだし。



「今のが噂の双子ちゃんね」


「驚いた。リタは見えたのだな」


「ええ。バッチリと♪」


 もしや私の眷属である事とも関係があるのだろうか。後で他の者達にも聞いてみるとしよう。



「あの子達の事も気になるけど話を続けましょう」


「そうだな」


 今日から早速動き出すつもりだ。これはその為の作戦会議だ。



「ラシェルさんとの話はついているわ」


 キトリが話を持ちかけてくれたそうだな。昨日の内に報告は受けている。



「正面から乗り込みましょう。変装したエリクを中心に姉さん達全員を伴って降臨しましょう」


「手の内を明かしすぎではないか?」


「必要な事よ。舐められたらお終いだもの。教会がエリクの力を侮って歯向かおうとしてきたら面倒どころの騒ぎじゃないのよ」


 そりゃそうだろうけども。神器持ちが人海戦術で襲ってきたら流石の姉さんズでも無事では済まんかもしれん。あの大聖堂には転移妨害の結界まで張られているのだ。先に神器を抑えるべきなのは理解出来る。出来るのだけど……。



「空から強襲をかけるわ。保管庫の神器を全て回収したら広間に乗り込みましょう。礼拝の為に集まった人々にその存在を知らしめてあげましょう」


「本当にやるのか? あまり乱暴なやり方ではかえって反発を生むだけではないのか?」


 やはり神器は彼ら自身の意思で差し出してもらうべきではなかろうか。先ずは平和的な手段を取るべきではないのだろうか。



「遠慮する必要は無いわ。エリクは神の代理よ。女神本人から指名されたの。けれど力を示さなければ誰も従わないわ。その為にはエリク自身が神と認識される必要があるの。神の御業を彼らに見せつけてやりましょう。そしてこれからは神器に代わって彼らを直接導くつもりなのだと示しましょう」


「うむ……」


 今更作戦を変えられる筈もないか。既にこのあたりの事は散々話し合った後なのだし。



「作戦開始までにはもう少しだけ時間があるわ。姉さん達と最後の打ち合わせを済ませておきなさい」


「なあ、やっぱりもう数日は」


「ダメよ。決行は今日。これ以上の先延ばしは認めないわ」


 別に先延ばしにする為に出かけてたわけじゃ……。



「やる事っていうのは日々増え続けていくものよ。そして大きなもの程タイミングを逃しやすくなるの」


「わかっているさ……」


「頑張って。台本通りに進めればそんなに時間は掛からないから。エリクはただ微笑んでいればいい。後はニタス姉さんが上手くやってくれるわ」


 ……そうだな。




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「我が名はアーエル」


 眼下に集まった人々に言葉を放つ。私の言葉は神託だ。少なくともこの者達はそう受け取るだろう。フーちゃんはこのやり方に反対していたけど結局は協力してくれた。



「あなた方が神と崇める存在です」


 敢えてそう強調しておくとしよう。私は神ではない。あくまで彼らがそう認識するだけだ。そんな意図を忍ばせて。これで少しはフーちゃんの懸念も払拭出来るだろうか。



「人間よ。我の言葉を聞きなさい」


 言うまでもなくこの場に集まった内の多くの者が耳を傾けてくれている。ようやく降りてきた神の言葉を一言も聞き漏らすまいと全神経を集中させている。けれど全員ではない。まだ私に疑いの目を向ける者も少なからず残っている。



「神のらの言葉を聞きなさい」


 神の子ではなく神の娘。フーちゃん、ルベド、ニタス姉さん、ネル姉さん、キトリ。この五人には私の言葉を更に代弁してもらう手筈だ。私を中心にこの六人で女神様の代理を務める事になる。ユーシャは留守番だ。私のユーシャはこんな場所で晒すべき存在ではない。その力も無い。



「長きに渡る信仰に感謝します。お陰で再び皆の下に姿を現す事が出来ました」


 かつてアーエルが姿を現した事なんて一度もあるまい。しかし二千年前の真実なんて誰も知らないだろう。



「「「「「グォォォォォォオオ!!!」」」」」


 突然竜の鳴き声が聞こえてきた。勿論これは我々の仕込みだ。大聖堂の天井に空間の穴を空けて、数匹の竜が飛び込んできた。彼らは人の形を取ると、信者達の最前列に加わって私の前に跪いた。



「りゅっ竜王だと!?」


 様子を見守っていた者の一人が慌てて膝をついた。それに倣うように他の疑っていた者達も次々と頭を垂れた。この仕込みには想像以上の効果があったようだ。竜王国は舐められているという話だったが、力そのものを侮られているわけでもないようだ。お陰でこの場にいる全員が私を力ある者として認識した筈だ。



 さて。これで準備は整った。

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