05-59.熱烈歓迎・続
「かんぱ~い!」
もう何度目だろうか。皆とっくにギブアップしてるのに。
「うふふ~♪ 良い飲みっぷりね~♪」
なんだか視線がうっとりしている気がする。デリアさんも相当飲んでいるからな。お酒のせいだろう。たぶん。
「デリア! フィデリア! ズルいわよ自分だけ!」
あれ? また新キャラ? 部屋の外から甲高めの声が聞こえてきた。
「デリア!!」
またもやバーンと扉を開け放って一人の少女が現れた。
「もう! パティ寝ちゃってるじゃない!」
一瞬で状況を見て取った少女は怒り心頭の様子でデリアさんに詰め寄った。
「おかえり~。セリ~ちゃ~ん♪」
「あなた飲み過ぎよ! デロンデロンじゃない! サミーは何してたのよ!?」
サマンタさんは早々にダウンしてしまったのだ。お酒には相当弱いらしい。というかこの酒強すぎなのだ。パティまで寝落ちするとかありえんぞ。普段ならその前にセーブしていた筈だ。サマンタさんが弱い事だって事前にわかっていた筈だ。デリアさんは全て理解した上で強引に飲ませたのだな。
『ギンカに用でもあったのでしょうか』
私が酒に強いなんて事は知らなかった筈だし、回りくどすぎると思うけど。
『いいな~。フーちゃんも飲みたいな~』
すまんな。帰ったらご馳走させてもらうから。
『やったぜ♪』
「あなた凄いわね! デリアを負かすなんて見どころがあるわ!」
なんか褒められた。
「エリクと申します」
「私はマルセリナ! セリナと呼びなさい!」
セリナちゃんはデリアさんの妹さんだろうか。顔つきはよく似ている。姉妹でバルデム家の養子になったのかな?
「付き合わせて悪かったわね! 後は私に任せて無理せず休みなさい!」
気遣われてしまった。
「え~。まだのむのに~。セリ~ちゃんお~ぼ~!」
「いい加減にしなさい! これ以上客人の前で醜態を晒すなんて許さないわよ!」
「む~」
まだ醜態と言う程では無いがな。セリナちゃん的には既にアウトなのだろう。ならここは素直に退散しておくべきか。私としては少し話をしてみたいところだけど。
『酒が惜しいだけでは?』
美味しいけどさ。
『うまうま♪』
もしかして私の記憶食べてる?
『ごち♪』
明日お土産に買っていこうね。忘れずにどこで売ってるのか聞いておかないと。
『愛してる♪』
お酒を? 私を?
『どっちも♪』
正直者だぁ。
取り敢えず魔力手でパティとシルビアを担ぎ上げた。
「あなたそれは!?」
セリナちゃんが驚いている。魔導の事は聞いていないのだろうか。
「驚いたわ! 話に聞いていた以上ね!」
どう聞いていたんだろう。ちょっと不思議な反応だ。
「明日話を聞かせて頂戴! 部屋へは外のメイドが案内するわ! 良い夢を! 妖精王さん!」
興味津々な割には躊躇無く追い出されてしまった。しっかりした子だ。あれは自分に厳しいタイプだな。
『ギンカこそ興味津々じゃないですか』
まあちょっとね。
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「おはよう! パティ!」
「セリナ! 久しぶりね!」
キャッキャウフフと抱き合う美少女が二人。
「むっ」
またもやシルビアに抓られてしまった。解せぬ。
「朝食の後に時間を頂戴!」
セリナちゃんは挨拶と用件を伝えるとすぐさま立ち去ってしまった。どうやら今朝も忙しいらしい。朝食も既に済ませてしまったそうだ。
『残念がっていますね』
『広い愛も狭い愛も、フーちゃんはどんな愛だって愛しちゃう♪』
そっか。ルベドは嫉妬してくれてたんだ。
『今ので気付いたんです?』
『フーちゃんナイスアシスト♪』
自画自賛。
朝食の席にはデリアさんが待ち構えていた。
「おはよう♪ 皆♪ よく眠れたかしら♪」
「ええ。朝までぐっすりだったわ。昨日はごめんなさい。最後まで付き合えなくて」
「うふふ♪ なら今晩も如何かしら♪」
「残念だけどまた今度ね。セリナにも悪いから」
「あら残念♪」
セリナちゃんはあんなに忙しそうにしているのに、デリアさんの方はこんな調子で大丈夫なのだろうか。
『ホストが客を放置するわけにもいきませんから』
『適材適所だぜ♪』
それもそっか。本当ならデリアさんもまだまだ忙しい筈なのだものな。
「エリクさんもまた来てくれるかしら♪」
「ええ。必ず」
「楽しみね♪」
すっかり気に入ってもらえたようだ。この調子でお祖母様とも上手くいくと良いのだけど。




