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05-57.里帰り

 聖女との思い出話と共に、キトリが見て回った世界の様子を語り聞かせてくれた。



「シスカは頑固者でね。一度こうと決めたら絶対に譲らないんだ」


 それきっとキトリの同族だよね。



「とある村で疫病が流行っていた時なんか一時も手を止めずに働き続けていたよ。どれだけ回りが休めと言ったって聞きやしない。結局私が無理やり眠らせたんだけどね。その時の怒りようと言ったらもう。暫く口聞いてくれなかったよ」


 それでもキトリはしつこく付き纏ったのだろうな。きっとシスカが根負けするまでいつもの調子を崩す事もなく。



「二人はどうして別れてしまったのだ?」


「別に大した理由は無いよ。ただ選んだ道が違っただけ」


「もう一度会えたのだろう?」


「うん。何度かね。再び交わる事もあったから」


「キトリは誰かを求めなかったのか?」


「いつでもネルちゃん達が見守ってくれていたから」


「そうか……」


「想像しちゃった?」


「……そうだな。私達の内の誰かは道を違えるかもしれん」


「いつまでも一緒に居続ける事の方が難しいよ。皆自分のやりたい事を見つけるものだからね。家族や親友と別れてでも優先したい事って案外簡単に見つかるんだ」


「そうだな……」


「たかだか数百年程度しか生きていない貴方達がわかったような事を言いますね。家族は大切です。何よりも優先するべきものです。時には人生を賭けた夢を放り出してでも選び取るべきものです」


「それがルーちゃんの答え?」


「はい。私は二度と間違えません」


 ルベドの誓いを聞いて、ニタスが悲しげに目を逸らした。



「フーちゃんはどうなのだ?」


「フーちゃん? フーちゃんは~♪ ふふふ♪ 欲しいものは皆フーちゃんのものだぜ♪ もちろんギンちゃんも♪」


 ふわふわ浮いたままのフーちゃんが私の肩に纏わりついてきた。



「逆だ逆。フーちゃんが私のものなのだ」


「あはは♪ なまいき~♪ けどいい度胸だぜ♪ その挑戦受けて立っちゃうぜ♪」


 挑戦状を叩きつけたつもりは無かったのだがな。



「逃がさないYO♪」


「っ!?」


 この姉ナチュラルに唇を重ねてきた!?



「う~ん♪ ふふ♪」


 あかん。食われる。



「すとっぷです!! フーちゃん姉さん!!!」


 ネル姉さんが私を庇って間に割り込んだ。



「ネ~ルちゃ~ん♪」


「!?」


 あ~あ。




----------------------




「出発しましょう」


 パティ、シルビア、私(inルベド、フーちゃん)、の三人+αは、転移門を使って直接セビーリア領へと乗り込んだ。結局タマラとソラは無しだ。タマラと話した際に人員を見直す事にしたのだ。向こうは未だ戦争中だ。ドラゴンに乗り込まれては敵味方問わず混乱するだろうし、一度は戦場を離れたタマラも再び参加を強要されるかもしれない。それは当然避けるべき事態だ。ならばいっそと最低限のメンバーで手早く済ませる事にしたのだ。


『しゅっぱ~つ♪』


『大人しくしていてくださいよ、フーちゃん。戦争への介入は無しですよ』


『わかってるわかってる♪ ネルちゃんに代わってしっかりギンちゃんを守らないとね♪』


 ネル姉さんはキトリとニタス姉さんを相手に私に明かせない話をするようだ。キトリ達の昔話で盛り上がっている内に随分と落ち着いた様子ではあったけど、出来る事なら私も側に居て安心させてあげたい。今回の里帰りが妙な感じに長引かない事を祈るばかりだ。また何かに巻き込まれないと良いのだが。



「あら? エリクったら不安なの?」


「違うぞ。パティの考えているような理由じゃない」


 別に気が強いと噂のお祖母様にビビってるわけじゃない。少し気がかりが多いだけだ。



「先生、今日は私の両親にも挨拶してくれるんだもんね♪」


「そうだな。後程シルヴィのご実家にも伺わせてもらおう」


 コルティス家の方々とお会いすればシルビアの秘密も何かわかるだろうか。



「しかしいきなり来てしまって本当に面会なんぞ出来るものなのか? 祖母殿は戦場に立たれているのでは?」


 私達が訪れたのは領都の方だ。しかも先触れも何も出していないから領主の屋敷に真正面から乗り込む事になる。いくらパティがこの地の領主の孫娘だからって、門前払いされる可能性も無いでもない。そもそも祖母殿が不在なら意味すら無い。流石に行き当たりばったり過ぎただろうか。



「心配要らないわ。私は一度来たことがあるもの」


 一度だけじゃなぁ。その時は王家なり、デネリス家なりのそれと分かる馬車やら兵士達やら込みで乗り付けたんだろうし。姫が単身乗り込んで来たって普通は信じてもらえないものだ。



「まあ私に任せておきなさいな♪」


 そう言い切るパティに従って領主の屋敷を訪れた。門番はパティの話を聞く前に正体を見破ったようだ。恭しく招き入れてくれた。



「そっか。魔力だね」


「シルヴィ正解♪」


 ただの門番が魔力視持ちだと言うのか?



「ふふ♪ エリクの考えている事もわかるわよ♪ けど色々間違ってるわね。お祖母様は確かに一騎当千の強者ではあるけど、だからって領主がずっと戦場に出ているわけにもいかないじゃない。前線で指揮を執るのは別の者よ。当然将軍だっているんだから。そして暗殺なんかの危険性も考慮するならこの屋敷が厳重に警備されているのも当然の話よね」


 そりゃそうかもだけど……。なんか納得いかない。事前に聞かされていた話と違うし……。



「もう一つ誤解しているのは、と言うかこれは私もついさっき気がついたところなんだけど、どうやら戦争は終わったみたいよ」


 え? そうなの?



「流石はパトリシア様。相変わらず察しの良い事で」


「久しぶりね! サマンタ!」


「はい。お久しゅうございます、パトリシア様。お変わりないようで何よりにございます」


 メイドさん?

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