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万能回復"薬"に転生しました!? ~ どうしても飲んでもらえないのでこの子(達)と生きていきます ~  作者: こみやし
01.邂逅編

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01-34.手がかり探し

 ディアナの治療方法を研究する為に領主邸に滞在を始めてから一週間程が経過した。


 その間私とユーシャはパティから魔術、メイド長から戦闘技術をそれぞれ学び、逆に私はパティに魔導を伝授した。

勿論それらと並行して治療方法の研究も続けた。


 修行の成果はイマイチだったが、研究の方には一つ進展があった。



「女神の落とし物か……」


 つまりは私の事だ。

どうやら、他にいくつも落とされていたらしい。

ある日突然、屋内屋外問わずに神器が放り出されているそうだ。それで落とし物などと呼ばれているらしい。



「到底現代の技術では産み出し得ない効果を持った品々よ。

 聖女は何かそんな品物を持っていたんじゃないかしら」


 なるほど。

もしその品が見つかれば、ディアナを治療する事も出来るはずだ。


 とはいえそんなもの、手に入れられるものはとっくに領主様が手に入れているだろう。


 パティ曰く、発見者は国に報告する義務があるそうだ。

ここ数十年新たに見つかったという話は聞かないそうだが、誰も彼もが律儀に国に報告を上げるとも思えない。実際、聖女が使っていたとされる神器は見つかっていないそうだ。


 というか私だって他人事じゃない。

私の存在を国に伝えるわけにはいかない。

もしバレれば回収されてしまうかもしれない。

そうなれば、ユーシャとは二度と会えなくなるだろう。



「パティ。

 喋る、いや、意思を持った神器は存在するのか?」


「……聞いたことがないわね。

 それと、ダメよエリク。

 今の話は二度と口にしないで。

 自分がそうだと言っているようなものよ」


「うむ。気を付けよう」


「エリクは妖精族。あの瓶は関係の無いただのお守り。

 その設定を忘れないで」


「うむ」


 下手をするとこの人形の体も神器かもしれんがな。

やはり知られるわけにはいかんな。



「それと、今の話も他言無用よ。

 女神の落とし物なんて呼び方、一部の者の間でしか通じないわ。国が民に義務付けているのは、あくまで特殊な遺失物に関する報告義務って感じだから」


「ならば誰が使う言葉なのだ?」


「王族の一部は認知しているわ。

 後は専門の管理者や研究者達ね」


「所謂極秘情報という事なのか?」


「ええ。トップシークレットよ。

 だから今の今まで伝えなかったの」


「何故今になって?」


「それは勿論信頼の証よ♪」


 怪しい。何か企んでいやしないだろうか。



「あら?

 何かしらその目は」


「エリク、パティを疑ってるの?」


「……いいや。何も疑う事などなかろう。

 そもそもこの情報を知った所で、どうにかなる話でもあるまい」


 ディアナの件が解決するわけでもなければ、知った私達が始末されるような話でもあるまい。



「当然目的があって伝えたのよ。

 エリクもここで得られる情報には限界が見えてきたでしょ?」


「つまり旅立ちたいと?」


「そうよ。

 女神の落とし物、いえ、神器を探しに行きましょう」


「当てがあるのか?」


「あるでしょ。

 二人も知っているじゃない」


「聖女の話か?

 だが、そう簡単に見つかるものでもあるまい。

 何せ治癒の力だ。誰もが真っ先に求めたはずだ。

 それを国すら把握していないなら、既に失われていると考えるのが妥当では?」


「ノンノン。

 ダメよ、そんな考え方。

 逆よ逆。国が手中に収めていないものなら、私達にも見つけるチャンスがあるって事よ。

 それにもしかしたら、起動に莫大な魔力が必要で、聖女以外には使いこなせなかったのかもしれないじゃない」


「だから効果のない代物と誤解されていると?

 今も市井の何処かで次の主を待ちながら眠っていると?」


「そうそう♪

 そんな風に考えましょう♪」


「だが、それが旅に出てまでする事か?

 今やっている、侵食による治療方法の模索はどうする?

 中途半端に投げ出すつもりか?」


「勿論すぐにとは言わないわ。

 けど、その一手だけに何時までも拘っているわけにもいかないでしょ?」


「次の策という事か。

 よかろう。そういう話ならば付き合おう。

 今の内に、他にもおとぎ話の類を集めてみよう。

 ヒントとなる話しが紛れているかもしれぬ」


「ここの書物は全て目を通したわ。

 今日は図書館に行きましょう」


「ならばついでに店に寄ろう。

 行きたい所があるのだ」


「ええ。構わないわ。

 メアリに伝えてくるわね」


 パティが元気よく部屋を飛び出していった。




 今は私達三人で一部屋を使っている。

パティが私達の部屋に押しかけてきたのだ。

しかも出会った当日に。


 私の魔力に馴染むためというのもあるが、本気でユーシャの事も好いているようで、この一週間殆どずっと張り付いたままだった。


 ユーシャも満更ではないようだ。

毎晩抱き枕にされていても、文句一つ言う様子がない。

むしろ自分からパティの腕の中に収まっている。

なんと羨ましい。私だってユーシャを抱きしめたいのに。

残念ながら、未だ魔力抵抗を緩める事には成功していない。

これはジュリちゃんに触覚付きの体を用意してもらう方が早いかもしれない。


 今日はジュリちゃんの店に寄ってみよう。

メイド長が確認してくれたお陰で疑いも晴れている。

やはり盗難届を出したのはジュリちゃんではなかったそうだ。それ以上詳しい事は教えてもらえなかったが、取り敢えず気にしても仕方があるまい。


 それに今回はパティも一緒なのだ。

そうそう危険な事もないだろう。



「本当にパティと旅に出るの?」


「どうした?

 何か問題でもあったか?」


「ディアナ、心配だから」


「そうだな。

 出来る事なら、私はここに残って治療を続けたいものだ」


 侵食でパティやディアナの体を探っている内に、少しずつわかる事も増えてきた。時間は掛かるだろうが、多少体力を付けさせる事くらいは出来るかもしれない。


 とは言え無理もさせられない。

ゆっくりと進めていくしか無い。

だが、恐らくそんな時間は残されていない。


 せめて時間を稼ぐ方法だけでも見つけたい。

聖女の神器が見つからなければ、最悪私を少しずつ食事に混ぜて飲ませるとか出来ないものだろうか。


 ユーシャが寝ている間に薬瓶ほんたいを取り出すのは難しくなってしまった。今のユーシャは薬瓶を手に持つことはせず、首にかけたまま常に胸で挟み込んでいる。その上で私の人形を抱きしめて、更にそのユーシャをパティが抱きしめている。


 二人を起こさずに薬瓶だけ抜き取るのは至難の業だ。

やるとしてもパティには先に話を通して味方になってもらう他あるまい。


 とはいえ、ユーシャから離れてパティと話をする機会などないのだ。この一週間の私達は常に三人一緒だった。最低でも、私とユーシャが離れる事はなかった。ユーシャはトイレにだって人形わたしを持ち込む徹底ぶりだ。お母さんちょっと心配です。



「私とパティだけで行ってくる?」


「……はぁ?」


「でもダメか。

 魔力がいっぱい必要なんだもんね」


「いや待て!

 お前まさか今私を置いていくと言ったのか!?」


「こっちは連れてくよ」


 薬瓶を指すユーシャ。



「冗談であろう?」


「そうだよね。

 離れちゃったら人形も動かなくなるかもだしね」


「そういう意味ではない!」


「何を怒ってるの?」


「怒ってなど!……いやすまん。

 そうだな。これは娘の成長を喜ぶべき場面であったな」


「えへへ~」


 まったく。私の気も知らないで……。



「あら?

 まだ支度してなかったの?

 ほら、早く動いて二人とも」


「は~い!」


「そうだ、パティ。

 すまんが図書館の入場料を建て替えておくれ。

 ユーシャの財布はからっけつなのだ」


 というか、今回は私の分も必要なのでは?

人形のフリをすれば誤魔化せるか?



「心配要らないわ。

 さ、行きましょう」


 何時もの帽子を被ったパティが、ユーシャの手を引いて歩き出した。



「待って!まだ着替え!」


 今のユーシャはメイド服だ。

何時もの外套すら身に付けていない。

これでは顔を隠す事も出来まい。



「そのままで大丈夫よ。

 むしろそのままがいいわ。

 領主邸のメイドと一目でわかった方が、都合が良いもの」


「でも!」


「安心なさい。

 貴族のメイドにしつこくちょっかいかけてくるバカなんてそうそういないわ。それに何があったって私が守ってあげるもの」


「うぅ……」


「良い機会だ。ユーシャ。

 少し頑張ってみなさい」


「いじわるぅ……」


 とはいえ、流石に目立ちすぎではなかろうか。

魔女っ子学生服にメイド服、更にはゴスロリドール付き。

どんな色物集団よ。


 ほんと、妙なことに巻き込まれないと良いのだけど。

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