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05-54.緊急姉妹会議

「というわけなのだ」


「いいわ。私が説得してあげる。リタも協力して」


「勿論よ♪ ふふふ♪ これは忙しくなりそうね♪」


 なんでそんなウッキウキなの? こっちは勝手な事言って悪かったかなって心配してたんだけど。



「エリクはお姉さん達に許可を貰っておいて。今後は転移が必要になるわ」


「本気で拠点を二つに分けるつもりなのか?」


「エリクだってそのつもりだったのでしょう? 良いじゃない。人数も増えてきた事だし。やっぱり勝手に三十人弱も住まわせるのは心苦しいものね。叔父様相手じゃ家賃を収めるわけにもいかないし」


 ヴァイス家もそこは大差無いかもしれんが、それでも城の警備や修繕等の面では力になれる筈だ。時間稼ぎも出来るだろう。私達が支えている間に人を雇い入れてもらえれば以前の生活を取り戻す事は出来る筈だ。



「アリガトウゴザイマス。パティ」


「ふふ♪ ロロ先輩までそんな水臭いじゃない♪」


 なにはともあれこれで一件落着だな。エフィ達とも相談は必要だが、きっと喜んで協力してくれるだろう。あの場でもお礼を言われたし。なんなら乗り気だったし。一緒にお父上を説得してくれたし。頑として首を縦に振る事は無かったけど。


 やっぱりご迷惑かしら? 男性の立場からすると色々とやりづらくなりそうだし。でも城は広いから。それに手段を選んでいる場合でもなさそうだしね。なんなら私達は援助だけを申し出ても良いのだけど、それこそお父上は受け取ってくださらないだろう。


 お父上自身もお母上や娘達に負けず劣らず意思の強いお方のようだ。よく喧嘩もせずにやっていけるものだ。それだけ仲の良い家族なのだろうな。今更言うまでもない事だが。



「ハニィも。本当にアリガトウゴザイマシタ。この御恩は一生忘レマセン」


「うむ。私は遠慮なく貰っておこう。これでまた一つロロが私の下を離れられなくなる理由が増えたな」


「ソンナ心配をシテイタのデスカ?」


「いいや。ただ心を繋ぎ止める努力は必要だと思うのだ。ただでさえ私は浮気者だからな」


「私コソです。ハニィを逃ガスツモリはアリマセンカラ♪」


「うむ♪」


「あ~ごほん。イチャイチャは余所で始めてくれるかしら」


「もう。今回くらいは良いじゃない、リタ」


「ねえ、パティ。私まだ認めてもらえてないの。眷属にされたまま放置されてるの。酷いと思わない? 私はこんなにエリクを愛しているのに」


「知らないわよ。私眷属じゃないもの」


 あかん。これは何か面倒くさい空気を感じる。



「逃げるぞ!」


「ハイ! ハニィ♪」


 ロロの手を掴んで走り出す。パティとリタはジト目で見送るだけで追いかけては来なかった。それでも走り続けた私達は、半年前より数の少なくなった空き部屋に飛び込んだ。




----------------------




「という事で姉さん達にも協力を頼みたい」


「「「「「……」」」」」


 あれ? 姉さん達?



「な~んだっかな~」


「半裸の女の子侍らせながら頼まれてもなぁ~」


「ギンカは爛れています! 爛れすぎています!」


「妹だけには飽き足らず、か。これも時代の変化だろうか」


「いえ、ギンカだけです。そうそうハーレムなんて築きません」


 姉さんズが呼び出したんじゃん。この謎の真っ白空間に。私達がベットでイチャイチャしてる時に。あとロロが半裸なのはいつもの事だ。別に私が脱がしたわけじゃない。と言うか今ロロいないじゃん。きっとまだベットの上なのだろう。突然消えた私に何を思っているのだろうか。



「安心してください。ここに呼び出したのは精神だけです」


 あら便利。



「フーちゃんが作ったんだよ♪ えっへん♪」


 今日も今日とてふわふわだ。フーちゃんがいつも浮かんでるのって。



「ギンカ。思考には気をつけろ。ここは伝わるぞ」


 ニタス姉さんはさらっと無茶を言う。出来るけど。深層思考と表層思考の制御はお手の物だ。姉さん達のおかげで。



「そこはエリちゃんが特別なんじゃないかな?」


 私の本体の話か。ふむ。何せ女神様特製の万能回復薬だからな。そこに魂が溶け込んでいるのだ。何か特別な力を得ていてもおかしくはあるまい。



「創造主様はギンカに何を期待しているのでしょう。回復薬の本分を遥かに逸脱していると思うのですが」


 そうだね。回復薬に女神様の代理を務めさせるのは思い切ったよね。



「ギンカ。せっかくこうして顔を合わせているのです。手を抜いて思考で会話しないでください」


「いや、そんなつもりは無かったのだぞ? 私が考えた時点で姉さん達が次々に答えていくから口を開く隙が無かっただけだ」


「え? ギンちゃんそんな面倒くさい事してるの? 思ったことはぱぱっと言っちゃいなYO♪」


 こちとらフーちゃんみたいにふわふわ生きておらんのだ。



「ふわふわ~♪」


 褒めてないよ?



「エリちゃんって怖い物知らずだよね」


「なんだ。キトリはまだビビっておるのか。どれ、私が修行をつけてやろう。勿論ギンカもな」


「ダメですよ、ニタス。ギンカは私の弟子です。キトリは差し上げますからそれで満足してください」


「それもよかろう」


「お願いします! ニタちゃん師匠!」


「うむ!」


 楽しそう。



「それでこれは何の会だったのだ?」


「さあ? 私達も突然フーちゃん姉さんに引きずり込まれましたので」


 珍しい。こういうのネル姉さん主導かと思ってた。



「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれました!」


 フーちゃんが更に高度を上げて私達を見下ろした。



「フーちゃんはね。色々考えたのです。珍しく」


 自分で言うの?



「そうだ。待ってくれ、フーちゃん。ここにはユーシャがおらんようだぞ? 説明を始める前に呼んでくれんか?」


 二度手間になっちゃうよ?



「のんのん♪ これはユーちゃんとも関係があるのです♪」


 ああ。それで仲間外れに。



「失敬な! フーちゃんは仲間外れなんかしないもん! 全部ユーちゃんとギンちゃんの為だもん!」


「悪かった。先を続けておくれ」


「ぷんすか!」


 あかん。フーちゃんには禁句が多いな。



「ユーちゃんはとぉっても凄い素質を秘めているのです!」


 立ち直り早いな。



「姉さん達より強くなれると?」


「そうだぜ♪」


「末妹ですから。ある意味集大成ですから」


 そっか。姉妹はそれぞれ性能が違うのだったな。



「だが今のユーシャはそれ程でもないぞ?」


 頑張ってはいるが成長速度は人並みだ。一応体こそ頑丈だが、女神様の生み出した特別な神器としてはかなり控えめな性能と言わざるをえんだろう。姉さん達を知った今となっては。



「ノンノン♪ ユーちゃんは特別製だぜ♪」


「そうなのか?」


「ユーちゃんはいくらでも成長出来るんだぜ♪ それこそママにだってなれるかもしれない!」


 シ◯ア的な? ラ◯ァ的な?



「なるほど。そういう事だったのですね」


 ネル姉さんは何かに納得した様子だ。



「とするとギンカの役目は……」


「母上も酷なことを……」


 え? なに? ルベドとニタス姉さんは二人して何を深刻そうにしてるの?



「今のこの状況はお母様にとっても不本意だったんだね」


 キトリも何か察してる!? 私だけついていけてない!?



「ママはユーちゃんにギンちゃんを飲ませるつもりだったんだぜ♪ それでユーちゃんは本来想定された力を手に入れる筈だったんだぜ♪ それまで大切に保管する為にフーちゃんの所に放り込んだんだぜ♪」


 え? ……え?



「教えてしまうのですか?」


「必要な事だぜ♪」


 なんでそんな楽しそうなの?



「ギンちゃんには怒る権利があるぜ♪ ママはギンちゃんの事なんかなんとも思ってなかったんだぜ♪」


 口調と内容が乖離している。



「自分の最高傑作に『中央世界セントラル』の強き魂を与えるつもりだったんだぜ♪ ギンちゃんが今行使しているような力はユーちゃんが扱う予定だったんだぜ♪」


 それは……。



「フーちゃん姉さん。ストップです。それ以上を語る事は認めません。ギンカが知るべき事ではありません」


「ダメだぜ♪ 伝えちゃうぜ♪」


 もしかして、フーちゃん。怒ってる? 私の為に?



「当たり前だぜ! フーちゃんの妹を蔑ろにしたんだぜ!」


「その先があるのか? 女神様には何か目的が?」


「復讐だぜ!」


 復讐?



「極めて個人的な目的にギンちゃんを利用してるんだぜ! ギンちゃんはまだ繋がってるんだぜ! 中央世界から力を盗み続けているんだぜ!」


 私の無限の魔力の正体か?



「フーちゃん姉さん! ダメです! これ以上は!」


「ギンちゃんは知る必要があるの! ニーちゃん! ルーちゃん! ネルちゃんを取り押さえて! その子何か知ってるよ!」


 瞬時に動いた二人がネル姉さんを拘束した。



「待て! ネル姉さんに乱暴は!」


「しないよ。ただ話を聞かせてもらうだけ」


 フーちゃんが突然落ち着いた声で話しだした。



「けどその前にもう少しだけ。ギンちゃん。あなたは神になってはいけないよ。これ以上ママの思惑に乗せられちゃダメなの。でないと矢面に立たされちゃう。これがもし世界を守る為なら邪魔はしなかった。けどこれは違う。ママの下らない感情に振り回されているだけなの。だから知ってほしい。そしてその上でどうかママを許してあげてほしい。悪いことをしているならメッて叱ってあげてほしい。きっと皆でならそれが出来るから。ギンちゃんにも協力してほしい」


「勿論だ」


「ありがとう♪ ギンちゃん♪」

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