05-52.状況整理
「それで? これからどうするの?」
「どうもこうも聖教国に乗り込むのであろう? ユーシャもそう勧めておったではないか」
むしろユーシャこそどういうつもりなんだか。今まではこんな話には興味も無かったろうに。
「ヴァイス家の問題もあと一つ残っているわ」
やはりパティも気付いておったか。
「父上の件だな。ロロやリタとは何か話したか?」
「ええ。ただ理由までは」
そうだよなぁ。この状況で怪しい言動を見せてくる理由がわからんのだよなぁ。あの人達が素直過ぎるだけならここまで秘密を隠し通せたとも思えんし。ロロまで知らんという事は比較的最近の事なのだろうか。実は母上も何か知っていたのだろうか。母上の方は腹芸も上手そうだからな。
もしかすると単にあの場で話す必要が無かった、或いは話せなかっただけかもしれんな。例えば宝物庫の品々を手放して資産を確保しようとしたとかな。お祖父様との思い出を大切にするロロの前では言い出せなかったのかもしれんな。
「他にもやる事いっぱいよ。ソラのお母様も探さないと」
竜后フランだな。見つけ出してやりたいよな。本人も会ってみたいと言っているのだし。
「シュテルの事も気になるよね」
聖女の転生体であるという話しだな。厳密にはその影法師みたいなものらしいのだけど。こちらも詳しい事は何もわかっておらんな。わかっているのは大雑把な足跡くらいか。
おそらく聖女は若い頃にこのカルモナド王国周辺で活動していた筈だ。そしてある時からは聖教国でも活動を始めたようだ。
前者の期間は聖女と呼ばれるに相応しい人物であったようだ。この国では数々の伝説が今も残されている。類稀なる魔力と神器の力で人々を癒やして回っていたようだ。
反して後者の話しでは、竜王国で暴れまわった狼藉者みたいな扱いだった。竜后フランとも仲が良く、その縁でソラを預かったようだ。晩年はカルモナドに戻っていたらしい。そしてその時まで神器である杖を所有し続けていた。自らの延命だけでなく、転生の為の仕掛けまで施した。
私が触れた事で仕掛けが半端に起動したのやもしれん。シュテルはそうして生まれたのだろう。この辺りの事も一度詳しく調べてみねばならんな。竜后フランを探す内に、或いは見つけ出す事が出来たなら何かわかる事もあるかもしれん。
「いい加減お祖母様の方にも顔を出さなくちゃ」
そう言えばまだ行っておらんかったな。研究所の設立で慌ただしく、それどころではなかったものな。
後は先程アニタから聞いた呪王の件か。これも追々だな。いずれ何かしらわかってくる事もあるだろうさ。
「一つ一つ片付けていこう。先ずはヴァイス家の問題だ。今度こそスッキリさせてしまおうじゃないか」
お父上には悪いがな。ここまで関わった以上は見て見ぬふりも出来んのだ。
「ソラとシュテルの件は聖教国攻略後で構わないわ。上手くすれば知識と人員を得られるのだから、彼らにも協力してもらいましょう」
「ならば次は聖教国か?」
「いいえ。その前に少し休みを頂戴。私とシルヴィでセビーリアに里帰りしてくるわ」
そうだな。それがいいだろう。きっと聖教国に手を出せばまた忙しくなるだろうからな。
「私もついていこう。それからタマラも連れて行こう」
「屋敷の守りは大丈夫?」
「うむ。姉さん達に頼むさ」
「良いの? あまりそういう事には関わらないのかと思ってたけど」
「問題ないさ。もののついでだ。ルベドは暫くフーちゃんと過ごしたいだろうからな」
「そう。ならお願いするわね」
「うむ」
「私も行きたい」
「なら私もよ!」
「ユーシャは構わんがディアナはダメだ。学園を休ませるわけにはいかんのだ。わかっておくれ」
「転移でちょろっと行けばいいじゃない!」
「明日も明後日も学園だろうが。またすぐ夏休みになる。そしたら皆で行こう。だからもう少しだけ我慢しておくれ」
「む~!」
可愛いほっぺ。齧りついたろか?
「私やっぱ残る」
「いいのか?」
「うん。ディアナ可愛そうだし」
「悪いな。私達の代わりに構ってやっておくれ」
「任せて」
「ありがとう、ユーシャ。けどユーシャも行ってきて。私日中は学園だもの。ユーシャを一人にしてしまうわ」
「大丈夫。お姉ちゃん達もいるし。エリク達また何日も帰ってこないかもしれないから私はディアナの側にいる。昼間は一緒に居られないけど夜は必要でしょ? 一人で寝るのはきっと寂しいよ?」
「ユーシャぁ~!」
「ふふ♪ よ~しよし。大丈夫だよ~」
仲良し。仲良し過ぎるくらい仲良し。まあ私達恋人だからね。多少はね。多少で済ませてね。
「エリク」
「ダメだ。今日は寝るぞ。明日も忙しいのだ」
「でも二人は始めるみたいよ」
「ディアナ、ユーシャ。その辺りにしておけ。でないと二人で寝るのを禁じるぞ。メアリにも間に入ってもらうからな」
「それも悪くないわね」
「メアリならいい」
なんでやねん。




