05-47.残った課題
「ディアナ~」
「はいはい。よしよし。よく頑張ったわね~♪」
「皆して虐めるのだ……」
「そうね~♪ 困ったものね~♪」
「ディアナ、シルヴィ、ロロ、スノウ、メアリ、シルク。覚えたぞ。私の味方をしてくれたのはこれで全員だ。後はイジメっ子だ」
ユーシャまで敵に回るなんて。しくしく。味方してくれるって言ったのに。そもそも賛成派の立場じゃないか。結局味方のフリして勧めてきただけじゃないか。何故かシュテルまでノリノリだったし。ぐすん。
「私は? 私も反対派よ? クシャナさんの味方よ?」
「いいや。どうせミランダはパティを王にしたいだけだ。私の為じゃない」
「あら? どうして知ってるの? パティにだって言ってないのに」
「さてな」
うわぁ……。本気でそんな事考えてたんだぁ……。
「ミランダ? ちょっと良いかしら?」
「あらパティ♪ どうして怒ってるのかしら♪」
ほんとだよ。なんで自分の時はそんな怒るのさ。
パティとミランダが席を外したのを皮切りに、続々と他の者達も席を離れていった。私も姉さん達の下にでも行くとしよう。これ以上リタに無理難題を押し付けられるのは御免だからな。
「ふふ♪ 明日からも頑張りましょうね♪ エリク♪」
「もう少しゆっくり進めても良いのではないか? 結局聖教国にはなんの警告も送っておらんのだ。作戦の失敗が伝わるのもまだ暫くは先の筈だ」
「エリクがアドリブを発揮したおかげでね。なんでうちの人達に差し出しちゃったのよ」
「あの時私は確認したぞ。そしてリタも賛同してくれたではないか。今更手の平を返すでない」
「あらそうだったかしら♪」
まったくこやつは……。
「ほら。もうエリクを虐めないであげて」
「なら代わりにディアナとお話したいわ♪ あなたとはまだ十分に親睦を深められたとは言えないと思うの♪」
こやつ!? さてはディアナが反対派に回った事を根に持っておるな!?
「ダメだ! ディアナまで取られて堪るか! この子は私のだ! リタにはやらんぞ!」
「ふふ♪ 大丈夫よ♪ 皆で仲良くするだけ♪ エリクから取り上げたりなんてしないわ♪」
「ごめんね、リタ。今日の所はやめておくわ。私もお姉様達の事が気になるの。また明日お話しましょうね♪」
「約束よ♪」
「ダメだダメだ! リタはディアナに近づくな!」
「もうエリクったら。そんな事を言ってはダメよ」
「だってぇ~!」
「ふふ♪ それよりほら。行きましょう♪」
「うむ……」
「ごめんね、リタ。また明日ね♪」
「いいえ。こちらこそ。エリクをよろしくね♪」
ちくせう。仲良くしおって。ディアナだけは絶対に渡さんからな。ぐすん。
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「ニタス姉さんはまだ目覚めておらんのだな」
「うん。もう暫くは掛かりそうだよ。このペースだと明日の朝までは目覚めないんじゃないかな」
「そうか……」
「大丈夫です。心配は要りません。今はどこにも異常なんて無いんですから」
「うむ」
そうだな。後はただ待つだけで良いのだものな。暗い顔なんかしていてはダメだよな。
「姉さん達はニタス姉さんについているのか?」
「ええ。今晩はここに居ようと思います」
「私も~」
「キトリは良いのか? 話し合いにも参加しておらんかったが」
「代理の件? 個人的に思う所が無いわけじゃないけど、お母様まで出張ってきたなら今は口を閉ざすしかないかな。勿論エリちゃんが強引な事をするなら都度反対するかもしれないけどさ」
「そういうのが一番困るのだ。先程決まった作戦も伝えるから言いたい事があるなら今のうちに頼む」
「明日で良いでしょ?」
「まあ、うむ。そうだな。ニタス姉さんが目覚めてからとしようか。キトリも集中出来んようだしな」
「ごめんね。やっぱり気になるからさ」
「いいや。一つ一つ片付けていくとしよう」
焦る必要は無い。やるべき事は決まったが急いで仕掛ける理由も無いのだ。準備を入念に済ませてから動くのでも構わない筈だ。なんだかんだとリタ達も納得はするだろう。実際には作戦と言う程具体的な行動指針が定まっているわけでもないのだ。あの子達が示した方針なんて単なる正面突破でしかないんだからな。こんな事言ったら私がゴネたせいで会議が進まなかっただけとか言われそうだけど。
「ルベちゃんは?」
「……明日には元気になっているさ」
きっと。
「そっか。そうだね。ニタちゃんが目覚めればすぐだよね」
そうだな。
「これで後は二人だけだな」
「意外とすぐ集まりましたね」
本当にね。もっと時間かかると思ってたけど。
「残りのお姉様はなんて方なの?」
「フランとマグナだ。一応フラン姉さんの方は探しようもあるのだがな」
あのコンパスを使って探し出すとしよう。そうだ。そっちの件を優先させてもらうのはどうだろうか。聖教国の件はフラン姉さんを見つけ出してからという話に出来んだろうか。明日もう一度ゴネてみるとしよう。うむ。そうしよう。
「マグナお姉様は?」
「別の世界にいるそうだ。おそらくだが」
「はっきりしていないのね」
「うむ。どうやって見つけたものだかな」
そもそも呼び戻してしまって良いのか? マグナ姉さんにだってどこかの世界に新しい生活があるのではないのか?
「心配せずともきっと近い内に見つかりますよ」
「そうなのか?」
ネル姉さんは何か確証があるのか?
「主様が不可能な事を仰る筈がありません」
「……そうだな」
何かしら知っている可能性は高いだろうな。ならば戻る時期を把握していてもおかしくはないのかもしれんな。




