05-46.抑止力
「女神様!? 正気ですか!?」
あ! 間違えた! 本気ですか!?
『落ち着いてください、ギンカ。動揺しすぎです』
でもでもだって!
『お母様~♪ 久しぶり~♪』
『キトちゃ~ん♪ やっほ~♪』
『やっほ~♪』
『ルーちゃんもやっほ~♪』
『……ご無沙汰しております。創造主様』
まさか女神様の方から語りかけてくるとは。しかも普通に会話続けてるし。エーテルシリーズが全て揃うまでは会話も出来ないものと思い込んでいたから驚きすぎてしまった。
『それで、主様』
『良いよ~♪ ギンカちゃんに~♪ 女神アーエルの~♪ 名前~♪ あげちゃうね~♪』
『なっ!?』
うっそでしょ!? そんな簡単に!?
『代役~♪ 頑張ってね~♪ 先に~♪ ご褒美も~♪ あげちゃうよ~♪』
違っ! 待って!
『また滅ぼすおつもりですか?』
ルベド!?
『ごめんね。ルーちゃん』
『それは何に対する謝罪ですか?』
『あはは……』
女神様?
『じゃあね~』
え? もう!?
……あれ? 本当に? 終わっちゃったの? これで? もう何も答えてくれないの?
「お墨付きが出たわね」
「冷静に言っとる場合か!?」
なんでリタは驚いてすらいないの!?
「ご褒美ってなんだったのかしら?」
パティまで!? でも確かに! いったい何を受け取ったのだ!?
『まさか!? ギンカ! 二タス姉さんを!』
『!?』
え!? そういう事!?
「アウルム!」
「◯!」
どうだ!?
『……治っています』
まじか!? そんなあっさり!?
『……当然です。創造主様なら何時でも出来たのですから』
『気持ちはわかるけど今は素直に喜んでおいたら?』
「そうです! ルベド姉さんも出てきて抱きしめてあげてください!」
言いながらネル姉さんが真っ先に飛び出してきた。ソファに寝かされたニタス姉さんの手を握っている。
「その前に再起動してあげなきゃ。ルベちゃんも手伝って」
「……そうですね」
キトリとルベドも続けて現れた。
「シュテル。私達も」
「うー!」
ユーシャとシュテルも張り切った様子でニタス姉さんの側に寄ってきた。それから姉妹全員でニタス姉さんの身体を囲み、以前キトリにやったように空になっていたタンクに魔力を流し込んでいく。
「……」
「ニタス! ニタス!」
「……おはよう。ルベド」
「本当に……目覚めたのですね……」
「……ああ。うむ。そうだな。ふふ。随分と賑やかだな」
良かった。ニタス姉さんは冷静だ。状況もしっかりと認識出来ている。
「ええ。全員貴方の妹達です」
「そうか……」
ニタス姉さんはルベドの言葉に笑みを浮かべると、またすぐに眠りに着いてしまった。しかし今は呼吸もしている。単純にエネルギーが足りないのだろう。暫くは回復が必要なようだ。
「ニタちゃんって燃費悪いんだね」
「明らかに私達とは別物ですね」
なるほど。確かにキトリの時はすぐに話し始めていたな。会話を続けながらでも回復出来ている様子だった。
「最初からそういう目的で生み出されたのです。そしてきっと今回も……」
そういう目的? もしかして戦闘用って事? あるいは殲滅……。
まさか? 女神様はもしもの時の為の抑止力とするつもりなのか? そんな事の為にわざわざニタス姉さんを蘇らせたのか? そんな悪辣な事を本当に考えるものなのか?
「用心してください。私は貴方まで失いたくありません」
「……大丈夫だ。私もニタス姉さんも二度と奪わせはせん」
「はい……ギンカ……」
ルベドは再び私の中へと潜り込んだ。今は心が追いついていないのだろう。とてもニタスの側には居られなかったのだろう。ゆっくり休んでね。少しずつで良いからね。姉さん。
「じゃあ私達も少し外すから」
「ニタス姉さんの事は任せてください」
キトリとネル姉さんもニタス姉さんを連れて別室に移動した。きっとルベドに気を遣ったのだろう。それにまだ力の流し込みを続けるつもりなのだろう。
「あれ? 私の事は助けてくれないの?」
「エリクには私達がついてる」
「しゅてー!」
うん。ありがとう。心強いなぁ……。
「さあ♪ 方針は決まったわね♪ 詳細を詰めていきましょう♪」
リタはもう少し動揺するとか無いの? 何であんな事があったばかりなのに平常心なの? 心臓が鋼鉄で出来てるの?
「一回休憩を挟むのはどうだろうか」
姉さん達を見習ってさ。色々あったしさ。
「別に良いけど逃さないわよ?」
「……このまま続けよう」
リタまでニタス姉さんに何かしらの役目を押し付けかねないし。そんな事になればルベドがまた心労を抱えかねないし。ぐぬぬ……。
「よろしい♪」
勝ち誇りおって……。




