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05-42.次の問題

 捕物はあっさりとしたものだった。想像通りに襲撃を仕掛けてきた教会の者達を適度なタイミングで制圧し、ヴァイス家一同とマルコス氏一行に事の次第を報告した。



「空だ、と……」


 なんだ? お父上が妙な反応を?


『シンディーというメイドもです。この二人は何か知っていたようですね』


『宝物庫の箱の話に反応を示しただけだよ。別に悪い事してたって決まったわけじゃないでしょ』


 わかっている。今は見なかった事にしよう。確認するとしても家族のおらん場所でだ。



「父さん? 何か知っていらしたのですか?」


「っ!」


 あっちゃぁ……。



「エフィ、悪いがその話は後にしよう。今は余裕がない。私達は直ぐに出発せねばならん」


「そうですか。すみません。邪魔をしました」


 エフィはそういう子だとわかっていたのになぁ。これは配慮が足りんかったか。


『気にする必要はありません。この期に及んで隠し事をするなどやましい事があると言っているようなものです』


『もしそうだとしても家族を壊して良い理由にはならないでしょ。何よりエリちゃんが避けようとしている事だよ。ネルちゃんは従うんじゃなかったの?』


『私はただ! ……いえ。やめましょう』


『そうだね。ごめん。そっちの話を続けて。エリちゃん』


 うむ。ありがとう。二人とも。



「この後の事はマルコス氏と大統領閣下にお任せしよう。基本的に私達はこれ以上深入りするつもりがない。帰路の護衛もモラレス家の者に任せる事にする。彼らには私から伝えておいた。後はそちらで上手くやっておくれ。それから私達の関与は内密にな。全てはモラレス家の差し金だ。そのように話を合わせておくれ」


「あなたが誰なのかは教えてくださらないのですね?」


「そう言ったつもりだ」


「失礼致しました。命の恩人の言葉です。素直に従うと約束致します」


「……人を信じすぎるな。あなたはそれで失敗したのだ」


「これでも人を見る目にだけは自信があるのです」


「とんだ節穴だな。私はそもそも人ではない」


 これではヒントを与えすぎたな。少々わざとらしかったか。だがまあ彼はいずれ必ず私の正体に行き当たっていただろう。パティとは既に出会っているのだし。


 そこで話を打ち切って、一旦ネル姉さんの転移門で屋敷に帰還した。次は竜王国だ。パティやロロ達を置いて、代わりにファムとソラを連れて行く必要がある。



「私も行くわ!」


「……わかった。パティだけだ」


 正直こうなるとは思っていたさ。



「あの話はエリク達が帰ってきてからね♪」


「うむ。留守番を頼むぞ。リタ」


 リタが聞き分けよくて何よりだ。今はドラゴンへの興味より大切な事があるらしい。むしろ私達がいない間がチャンスとか思ってそうだし。



「エリク。私も行く」


「……ユーシャで最後だ」


「しゅてー!」


「ダメだ。シュテルは残れ」


「やー!」


「我儘を言わんでおくれ。キャロちゃんだっているのだ。シュテルはあの子を置いていくつもりなのか?」


「いっしょ!」


「ダメに決まっているだろう。頼む。聞き分けておくれ」


「やっ!」


 何故こんな時に限って……。普段は絶対にこんな我儘言わんだろうに。



「……主様。シュテルも連れて行こう」


「ソラ? 何故そう考えた?」


「シュテルって怖いの。我からしたら。だからたぶん通用すると思う」


「竜王にか?」


「わかんない。少なくとも我程度の竜は怯むと思う」


 それこそ連れ込めんのだがな。戦争に行くわけでもなし。むしろ友好関係を築くのに害となりかねんではないか。


『心配は要りません。ルベド姉さんに確認しました。希望者は全員連れて来て構わないそうです』


 ルベドまでそう言うなら……。ありがとう、ネル姉さん。


『はい。出発しましょう』


 そうだな。……キャロちゃん泣かないだろうか?




----------------------




「来ましたね」


「おい、ルベド。これはどういう事だ」


「その話し方は嫌です」


「私は怒っているのだ」


「何を怒る事があるのです?」


「誰が力尽くで竜王を従えろと言ったのだ」


「それは誤解です。彼らが勝手に平伏しているだけです。私は支配者のように振る舞ったつもりはありません」


 平服? これが? 皆亀のように仰向けになって転がっているぞ? ルベドが千切って投げた後じゃないのか?



「主様。竜がお腹を見せるのは最上位の服従の証」


 ワンちゃんなの? だからソラは私を押し倒してくるの?



「……ごめん、ルベド。早とちりしたみたい」


「理解してくださったのなら構いません」


 ほんとごめん。まさかこんな光景を目の当たりにするとは思わなかったから。



 ルベドが私の中に入ると、ドラゴン達は何事も無かったかのように身体を起こしていった。



『ようこそ客人よ』


 立派なヒゲを蓄えたドラゴンが厳かな感じに話しかけてきた。さっきまでルベドにお腹を見せていたせいで台無しだ。色々と。



「これが我の父親?」


 ソラが汚物でも見るかのような視線を向けている。早くもコレ扱いだ。竜同士でもそういう気持ちになるのだな。まあそうだよね。初対面があれじゃあね。



『っ!? なんと!? まさか繝輔Λ繝ウの子か!?』


 なんて?


『え!? フラン!?』


 フラン姉さんがどうかしたのか?


『いえ、今このトカゲがソラをフランの子だと』


 え!? フラン姉さんが!? この竜と!?


『違います。フランがペットにしていた竜の名もフランだったのです。彼女は竜王の后となりました』


 えぇ……。いや、落ち着こう。一つずつだ。とりあえず、なんでまた自分の名前を?


『あの子はそういう子です』


 まあ、うん。そう言われちゃうとなんか納得出来ちゃうけども。



「ねえ。話し辛いから小さくなってよ。人化くらい出来るでしょ? それから竜の言葉なんか使わないで。我はともかく主様達はわかんないし」


『う、うむ。なんだか機嫌が悪いのう……』


 竜王様がタジタジだ。まさかシュテルの影響? それとも単に娘に嫌われたのがショックだった? ……どっちもどっちか。

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