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05-40.作戦会議

「一旦休むとしよう。皆それぞれ部屋に戻って頭を冷やしておくれ。再び考えるのは一度眠って目覚めてからだ。今夜は少々詰め込みすぎてしまった。明日また話し合おう。焦らずとも時間はある。マルコス氏がヴァイス家に到達するのは昼過ぎだ。話し合うのはその後にしよう。諸々が終わってからだ。そこで結論を持ち寄ろう。一発勝負だ。多数決で我々の未来を決めようじゃないか」


「本気デスカ? 大事にシスギでは? 冷静にナッタカラと言ッテ思イ直スとは限リマセンヨ?」


「そうよ、エリク。神器の件は焦って決めるような事ではないわ。どの道最初は警告に留めるべきよ。勿論私達の狙いが神器とは悟られないようにした上でね。あくまで手を出すなと牽制して様子を見るべきよ。襲撃者達を捕らえ次第送り返しましょう。明日はルベド姉様の提案に乗りましょう。そして相手の様子を見つつ時間を稼いでゆっくり考えましょう」


 良かった。パティは冷静さを失っていたわけではなかったのだな。



「甘いわね」


「リタは反対か?」


「いいえ。どうやら多数決でも勝てそうにないもの。今晩の所は大人しく引き下がるわ」


「そうか」


「けど諦めたわけじゃないわ。私も大切な家族を守る為に全力を尽くさせてもらうわね」


「うむ。勿論理解しておるとも。私とてどのような結論であっても決して手は抜かぬよ」


「本当かしら? エリクはまたゴネるんじゃない?」


「ゴネはするさ。本当にどうにもならないのだと確信に至るまでは言いたい事を言わせてもらうとも」


「ふふ♪ それでこそ私のエリクよ♪」


「私はユーシャのものだ。そしてパティとディアナの物だ。他の者に所有権を認めるつもりは無い」


「ツレないわね。折角眷属にしてくれたのに」


「勿論責任は取るさ。リタは私のものだ。しかしその逆はない」


「私それじゃ満足出来ないの♪」


「お手柔らかに頼む」


「あら? 弱気なのね。そんな事ではすぐに乗っ取ってしまうわよ?」


「本当にそれが目的だったのか?」


「エリクだってわかっているでしょ。私は自分が一番じゃないなんて気に入らないの。何時だって全力でトップを狙っているわ。だから神器回収プロジェクトの代表も私が務めましょう。エリクは安心して見守っていて。貴方の手は汚させないわ。全て私が背負うから。何も不安に思う必要なんて無いの。全て私に委ねなさい。私の手の中で微睡んでいなさい」


 気に入らないと言いつつ私が誰を一番と言うかなんて全く興味がないようだ。私を裏から操れたならそれで満足とでも言いたげだ。リタの目指す一番とは表層のものを指すのではないのだろう。きっとリタは真の黒幕を目指しているのだ。それこそがリタの言う"一番"なのだ。実効支配さえ出来ればそれで良いのだ。私がリタのものであるという事実さえ生み出せれば私の心がどこにあろうと関係ないのかもしれない。



「続きは後だ」


「ええ♪ しっかり考えてくるといいわ♪」


 余裕綽々だな。情勢はこちらが有利だと言うのに。




----------------------




「キトリはどう思う?」


『勿論反対に決まってるじゃん。言うまでもないでしょ?』


「そうだな」


 勿論わかっていたさ。これは単なる確認だとも。



「ルベドはどう?」


『……反対です。私達が力を集め過ぎれば今度は私達の番かもしれません』


『ルベド姉さん!? まさか本気で主様を疑っているのですか!?』


『けどリスクとしては考えるべきだね』


『キトリまで何を言うのです!』


『落ち着いてよ、ネルちゃん。別に私はお母様を悪しざまに言うつもりはないよ。ただ事実は事実として認めるべきだ。お母様はかつてニタちゃんを使ってエルメラを滅ぼさせた。なら同じ事をしないとは限らないじゃないか。きっとそれは世界の為に必要な事だったんだろう。けど巻き込まれる人々や私達は堪ったものじゃない。だから対策を考えなくちゃならない。対策案が用意できないなら迂闊な事はするべきじゃない。もしかしたら神器を集めれば対抗手段にはなり得るかもしれないけど、そもそもお母様に見限られない手段を考えるべきだ。私達だって神器なんだからね。私達が自らの本分を忘れてしまえば叱られるのも当然なんだよ』


『……』


「ネル姉さん。何か話しておきたい事があるなら今の内に語っておくれ」


『……ギンカもですか?』


「そうだな。正直私も女神様が我々と異なる常識を持っているのは間違いないと思う」


『本当はまだ恨んでいるのですか?』


「いいや。そうじゃない。ただ私は知りたいだけだ。何故私は何百年も暗闇の中一人で過ごす必要があったのか。ユーシャは何故村人達から疎んじられ捨てられてしまったのか。それらが女神様にとっても想定外であったと言うならそれでもいい。しかし何か目的があったのではないかと思えてならない。でなければルベドへの仕打ちに説明がつかない。女神様は我々に試練を課されているのかもしれん。私は全て必要な事であったのだと信じたい。だから考えるのだ。女神様の考えを読み解こうとしているのだ。そして姉さんに問うているのだ。何か今話しておきたい事はあるか? 私は姉さんが誰より私の味方でいてくれていると信じている。私を選んでおくれ姉さん。女神様より他の何より私を優先しておくれ」


『……勿論です。私は何時だってギンカの味方です。例え主様の言葉に逆らったとしても貴方を守り抜きましょう。ですがそれでも話すべき事はありません。私は誓ってギンカに後ろめたい気持ちは抱いていません。信じてください』


「信じるとも。勿論だ」


『……私も反対します。神器を集めるのは時期尚早です。先ずはフラン姉さんを見つけましょう。それからマグナ姉さんを。そして二タス姉さんを目覚めさせましょう。キトリと仲直りして共にユーシャを育てあげましょう。全員揃ったら皆でルベド姉さんの秘密を暴きましょう。フラン姉さん達がいてくれるならきっと話してくれるでしょう。それから主様の考えを読み解きましょう。姉妹全員で話し合いましょう。最後に主様と会って答え合わせをしましょう。それからです。主様が必要だと認めてくださったのなら世界中の神器を集めましょう』


「うむ。文句一つ無いプランだ」


『別に喧嘩なんかしてないのに』


『私もこれ以上隠すつもりは……いえ、なんでもないです』


『二人は頑固過ぎますね。きっと私達への愛が足りないのです。私は決めました。私は何よりギンカを優先します。二人もそうしてください。下らない拘りは捨てて心を開いてください。今こそ姉妹で団結するべき時です。フラン姉さんを見つけ出す為の手段は我らの手に加わりました。聖教国だとか共和国だとかの問題はさっさと片付けてしまいましょう。何時までも付き合っている場合じゃありません。手早く済ませてフラン姉さんを探しに行きましょう。あのコンパスが必ず導いてくれます』


『心はとっくに開いてるさ。それはそれとして私の意思も認めてほしいところなんだけど』


『秘密云々についてネルケに言われる筋合いはありません。あなたもまだ話していない事があるのは事実でしょう』


『うるさいです! ギンカに従ってください!』


 ちょ~っと違うんだよなぁ。

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