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05-36.深夜の宝探し

「まずヴァイス家に存在する神器についてだ。ロロはその辺どうだ? 何か把握しておるのか?」


「イイエ。少ナクトモ、ユーシャ達と同ジ顔の女の子は見タ事がアリマセン」


「お祖父様は神器をコレクションされていたか?」


「神器かはワカリマセンが古イモノは沢山アリマシタ」


「ならその辺りが怪しいわね。何か大きな箱は無かった? 人が入れそうなサイズの。それでいて蓋を開けられなくて中身がわからないやつ」


「ソウイウのイッパイデ~ス」


 それは大丈夫なのか? 危険物とか封印されてない?



「宝物庫アリマス。明日案内シマス」


「そうね。コンパスを使えば宝探しも捗るわ」


 またパティが安直な名前付けてる。コンパスってあのガラス玉神器の事だよね? わかりやすいけどさ。



「失礼を承知で言わせてもらうのだけど、それって今から行くんじゃダメなのかしら? 敵の目的なんだし先に確保しておいた方が安全じゃない?」


 リタの言い分も尤もだな。常識に縛られている場合ではないのかもしれない。いっそロロのご両親にも起きていただいて協力して備えるべきだろうか。想定が外れて万が一敵に緊急の連絡手段があれば、城の方で抑えた連中がヴァイス家の近くにいる者達にメッセージを送る可能性もある。こういう時は常に最悪を考えて動くべきなのだろうな。



「入口通路に侵入者対策の罠アリマス。一筋縄デはイキマセン」


「ロロ姉さんにも解除出来ないものなの?」


「無理デェス。その方法も祖父ナラ知ッテイマシタが今とナッテは……。デスカラ強引に押シ通リマショウ。ハニィ達ならキット大丈夫デェ~ス」


 それでロロもよく知らんのか。ロロが幼い頃はお祖父様もあまり近づけさせなかったのだろう。それでも完全に知らないという程でもないから、何度かは連れて行ってもらった事もあるのだろうけど。それにお祖父様なら収められた物を全て把握していたのやもしれんな。


『ならば私が転移門を開きます。ロロの記憶を覗けば罠を抜けた先まで直行出来るかと』


「ソレは凄イデェ~スネ。流石ハニィのお姉様デェ~ス。ドウゾ~。見テクダサ~イ」


 そっか。今までそうやって転移先を……今までは勝手に覗いてたの?


『……』


 いや、うん。ありがとう。ルベドが気を遣ってくれて嬉しいよ。


『やっぱり甘やかし過ぎだと思うなぁ』


『キトリは黙っててください!』


 ほらほら喧嘩しない。


『キトリのせいで私まで叱られたじゃないですかぁ!』


 姉さん。別に叱ってないから。仲良くしようよ。


『ぐぬぬぅ……』


 真ん中って大変ねぇ。




----------------------




「これよ。これが一番強い反応を示しているわ」


「音を立てるなよ。慎重にな。こんな深夜にこそドロ紛いな事をしているのだ。決して皆を起こしてはならんぞ」


「ハニィは気にシスギデェ~ス。カエッテヤマシイ事でもアルミタイジャナイデスカ~」


「エリクって変な所だけ気が小さいわよね」


 逆にリタは大胆不敵過ぎる。眷属化の際に気を失わなかったのもそんな精神性故なのだろうか。


『私がサポートしたからに決まっているでしょう』


 あ、そうだったの? なんだもう。先に言ってよ♪ ありがとう♪ ルベド♪


『ギンカは乱暴過ぎるのです。もう少し繊細な制御を学ぶべきです』


 ルベドが師匠になってくれる?


『仕方がありませんね』


 やった♪ ありがとう♪ ルベド大好き♪


『一々大げさです』


『ねえ、そこのバカップルさん。今はそれどころじゃないと思うんだけど』


『今回ばかりはキトリに同意します。二人とも眼の前の事に集中してください』


 は~い。


『くっ……』



「エリク? どうしたの? 姉様達は? 開けられそう?」


「任せろ」


『まだ答えていませんよ。この程度造作もありませんが』


『流石ルベド姉さんですね♪』


『取り敢えず持ち上げれば良いと思ってない?』


 キトリ。


『ごめん、つい。三人のやり取り見てるとむず痒くなっちゃって』


 まあ気持ちはわからんでもないかもだけども。


『裏切りですか?』


 ネル姉さんは過激派にならないで。と言うかさっき自分だってキトリに同意してたじゃん。


『うるさいです。集中するので静かにしていてください』


『『『は~い』』』


 ルベドは数分とかからずに箱の封印を解いてみせた。



「中身は何かし……ら?」


「え?」


「なんだと?」


「ドウイウ事デス?」


 箱の中身はどう見ても空っぽだ。ルベドの引き籠もり部屋とも違う。完全な空洞だ。奥行きも何もかも見た目通りだ。



「この箱で間違いないのか?」


「え、ええ。その筈よ」


 パティは首をかしげながらコンパスと箱を見比べている。



「もう一つ奥だったのではないか?」


 箱は幾つも積み重ねられている。手前にあったものを間違えて開けただけなのかもしれない。



「いいえ。奥でも下でも左右でもないわ。間違いなくこの箱よ。あれ? 減ってきてる? エリク! 蓋を閉めて! 何かが霧散してる! 中身が出ちゃってる!」


 慌てたパティに急かされて全員で蓋を閉じた。



「あ! ダメだわ! もう何も感じない! 力は全部流れ出ちゃったみたい!」


「つまり女神様は自らの力だけを箱に封じ込めたのか?」


 もしくは何か不可視の邪神チックなやつが抜け出しちゃったとか? 霊魂だけが飛び立っちゃった? どこかで完全復活する為に隠れちゃった?


『いえ。これは残滓です。この箱の中にはかつて強大な力を持つ物が封じられていたのです』


 もしかしてそれって?


『間違いなくフランでしょう。あの子以外あり得ません』


 何さそれ……ニアピンだったの?


『ただこれは随分と古い封印でした。あの子がこの箱に収まっていたのはもっとずっと前です。もしかしたら私が生まれるより更に』


 どういう事? フラン姉さんはそんなに昔から生きてきたの?


『わかりません。私にも正確な事は。ただ少なくともその発生は三千年より更に前ではある筈です』


 五百年周期にフラン姉さんは当てはまらないんだったね。ルベドが前にも言ってた。


『ええ……』


 そもそもなんで封印されてたの? フラン姉さんって戦う力は持っていないんだよね?


『と言うより戦えないのです。弱者と言ったのは彼女の制約が理由です。あの子は他者に害意を持てません。キトリの想像通りなのでしょう。創造主様は我らに人と共にあれと願ったのです。フランはその最たる存在なのです』


 そっか。けれど女神様もそれは失敗だったと判断したんだろうね。だからルベド以降には備わっていないんだろうね。


『かもしれません』



「またわからない事が増えてしまったな。一旦戻ろう。それからまた話し合おう。少なくともヴァイス家にある大きな反応はこれで消えた筈だ。後はコンパスを教会の連中に返せば勝手に諦めてくれるかもしれん。もしかしたら潜伏者達も別の何らかの方法で反応を追っていたかもしれんしな」


「これは危険過ぎよ。返す事は出来ないわ」


「そういう事も含めてな」


「ええ。もっと議論を詰めるとしましょう」

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