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05-33.光の使者

「キトリ姉様って面白い方ね♪」


 早まったかな? パティはすっかりキトリに懐いてしまったようだ。



「そうね。たしかに面白い意見だったわ」


 逆にリタはあまりお気に召さなかったようだ。正直そんな気はしてた。リタは現実主義と言うか、夢想家とは正反対っぽいタイプだものな。


『つまりエリちゃんは私を夢想家だと言いたいんだね?』


 別に否定しているわけじゃないさ。むしろ私達のような長寿と特異な力を持つ者ならば、何時まででも夢を追い続けるべきだ。夢破れて細々と生きるなんぞ勿体ない。どうせなら楽しく生きる為にデカい夢を抱くとしようじゃないか。


『流石エリちゃん♪ やっぱりエリちゃんは良い子だね♪』


『それは私への当てつけですか?』


 意地悪言わないで、ルベド。そんなつもりは無いに決まってるでしょ。時には身体と心を休める事だって大切だよ。それにルベドは一度作り上げてみせたじゃない。エルメラはルベドの夢の結晶でしょう? その夢が信頼する母と妹に打ち砕かれたなら引き籠もりたくなるのだって当然だよ。むしろルベドが復讐をと望むなら私だって付き合ってあげるよ。少なくとも女神様を問いただす所までは一緒に行ってあげる。その後の事は女神様次第だけどね。


『……そんな気はありません』


『主様への反逆は認めませんよ』


 ネル姉さんだって疑問は抱いているのだろう? それともまだ何か私達に話してない事でもあるのか?


『それとこれとは別問題です』


『お母様が色々と考えているのは事実だよ。けれどそれは絶対に世界の為である筈だ。そして必ずしも人の為じゃない。だから私達がいるんだよ。私達が人々を守るの。必要ならお母様とも戦うの。私達の力はその為にあるんだよ』


『『「……」』』


 驚いたな。まさかキトリがそんな風に考えていたなんて。


『何かおかしいかな? 別に私は非武装主義ってわけじゃないよ? 勿論平和主義ではあるけどね。戦いが必要な時は迷わず戦うし、叱るべき悪い子に拳骨を落とす事だってある。私達の守護対象は人であって世界じゃない。少なくともお母様はそう設計された筈だ。そしてそれこそが私達の存在意義なんだ。私達に人々に寄り添う存在でいて欲しいと願っているんだよ』


 フラン姉さんの誕生経緯を考えればあながち間違いでもないのか?



『ならば何故創造主様は私に信仰などという役割をお与えになったのでしょう? 創造主様のお力を七つに分けたというなら、そもそも"信仰"は不自然では? それは創造主様が持つ構成要素の一部とは言えません』


 そうだな。それにルベドの力は女神様の力そのものだ。何かルベドだけが違っているのだろうか。それともネル姉さんの言い出したエーテルシリーズ云々が後付に過ぎないのだろうか。最初の三人である程度完結していたのだろうか。


『ごめん。そこまではわからないや。お母様の考えが読みきれないのは私も同じだから。正直に言うと私の考えも直接お母様から聞いたわけじゃないの。ただ私はそう受け取ったっていうだけだよ。だからって私は自分が導き出したこの答えを疑ったりはしないけどね』


『私が煮えきらないとでも言いたいのですか?』


『うん。私からしたらルベちゃんはイジケた子供みたいだ』


 おい! キトリ!


『エリちゃんも聞いていて。ルベちゃんはどうして戦おうとしないの? 納得いかないなら納得いくまでぶつかるべきだったんじゃないの? 二タちゃんの事もどうして諦めてしまったの? 妹や人々に対しては力を振るえても格上のお母様には歯向かえないの? 本当に妹を取り戻したいならお母様を打倒してでも修復してもらえばよかったんじゃないの? その為の力を手に入れる努力はしたの? 二千年間も何をしていたの? お母様を倒す為の努力も妹を直す為の努力もしてこなかったの? ただ黙って引き籠っていただけなの? 今だって妹達に甘やかされながらふんぞり返っているだけじゃないの? なんで二人にまで内緒にする必要があるの? 二人はルベちゃんの事大好きだよ? 元気になってもらおうと頑張ってるよ? なのに何時までもふてくされてるだけでいいの?』


『……』


 やめておくれ、キトリ。私はそんなやり方は望んでおらん。


『エリちゃんは……ううん。わかった』


『だいたいキトリだって無謀な事して心配かけたじゃないですか。よくルベド姉さんだけを責められましたね。この十五年あなたが何をしていたのかもう一度胸に手を当てて考えてみてください!』


『あはは……そうだね。うん。ごめんなさい。先に連絡くらいはしておくべきだったよね』


『そういう問題じゃありません!!』


 キトリも無茶苦茶だな。


『まったくです! 自分もやらかしておいて姉に無謀な特攻を勧めるなぞ正気の沙汰とは思えません!』


『そこまで言う?』


『あなた全然わかってませんね!? ちょっと来なさい! 二人で話しますよ! お説教です!』


『え~。ネルちゃんのお説教は嫌だなぁ……。ねちっこいし……』


『問答無用!!』


 ネル姉さんとキトリが私の中から出ていった。


『……気を遣われてしまったようですね』


 不服そうに言わないで。


『……わかっています。ネルケは妹と認めましょう』


 ふふ。なにその言い方。でもきっと喜ぶよ。


『随分と癖の強い妹が増えました』


 あれ? キトリも認めてくれるの?


『……言葉の綾です。忘れてください』


 そっか。うん。まあ、仲良くしろとまでは言わないけれど、程々に上手く付き合ってあげてね。


『気を遣いすぎです』


 もしかしてキトリに言われた事気にしてる?


『……そんなわけないでしょう』


 あまり気にしないでいいと思うよ? キトリは私の記憶から拾い上げた断片的な情報しかしらないんだし。


『そうですね。あの娘の早計な部分は極めて危険です。目が離せません』


 そうだね。注意して見守ってあげないとね。でないとまたどこかで封印されちゃうかもだし。


『封印と言えばフランの事ですが』


 話しが随分飛んだね。


『察してください』


 まあ、うん。それで?


『あのコンパスで探せませんか?』


 そうだね。試してみよっか。



「あら? 何かしらそれは?」


「ガラス玉? 綺麗ね。お土産?」


 あら。二人パティとリタもまだ居たのね。ちょっと脳内会議が盛り上がりすぎてしまった。



「神器だ。女神様由来の力が集まっている方角と大体の距離がわかるらしい……のだが。うん? これはどうやって見ればいいのだ?」


 ガラス玉の中にキラキラと光の粒が浮かんでいる。まるでスノードームのようだ。綺麗だけどそれだけだ。天球儀のような輪っかが付いているわけでもない。これで何が読み取れるというのだろう?


『地図が必要なのでは?』


 ああそうだった。たしかネル姉さんもそう言っていたな。


「世界地図はないか?」


「無いわよそんなの」


「私も見たことがないわ」


 失敗したな。あれも拝借してくるべきだったか。



「取り敢えずこれでいいかしら?」


 カルモナドとその隣国くらいまでしか描かれておらんな。まあいいか。試してみよう。



「それでどうするの?」


「……どうしたらいいんだ?」


「ちょっと貸してみて」


 受け取ったパティは取り敢えず覗き込み始めた。地図と見比べながら首をかしげている。どうやら当てがあったわけではないようだ。それから暫く眺めたり振ったり転がしたりしていると、ガラス玉が突然地図の上で消え去ってしまった。



「驚いたな」


「凄いわね」


「これも綺麗ね」


 消えたガラス玉の代わりに地図上に幾つかの光点が浮いている。どうやらガラス玉は地図と融合したようだ。それぞれの光量は力の強さなのだろう。カルモナドの上には強い光が灯っている。しかし目立つのはそれだけではなかった。



「ここってヴァイス家の辺りじゃない?」


「シュテルちゃんが遊びに行っているのかしら?」


「いいや。そんな筈はない。今晩はキャロちゃんがこちらに泊まっておるのだ」


 シュテルなら自力で転移も出来るかもしれんが、わざわざ向こうに行く理由自体が無い。二人がこの家にいるのは間違いない。キャロちゃんを連れてきたのは私とルベドなのだ。



「念の為確認してくるわ」


「私はもう少し細かい地図も探してくる」


 パティとリタはそう言って部屋を出ていった後、すぐにそれぞれの用事を済ませて戻ってきた。



「やっぱりうちで寝ていたわ。これは別の反応ね」


 いったい何があるのだろう。聞いたら教えてくれるだろうか。取り敢えず明日ロロに聞いてみよう。



「カルモナドはともかく共和国の詳細な地図は無かったわ。取り敢えずこっちでも試してみましょう」


 カルモナド王都の地図か。たしかに比較も必要だな。これならこの家と城の反応を確認して光点が正しいかどうかを確認出来るだろう。そもそもの使い方が間違っている可能性もあるんだし。



「これどうやって取り出すのかしら?」


 わからん。

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