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05-28.潜入失敗?

「ここ絶対違うと思う」


「そうだな。しかも絶対見ちゃいけないやつだ」


 なんか見るからに悪の秘密組織のアジトって感じだ。どうしてこんな部屋に辿り着いちゃったのかしら。私達はただ大聖堂に忍び込んで奥に向かっていただけなのに。教会の暗部とか働いてそう。こんな所を見てしまった事がバレたら最悪消されるかも。さっさと退散し……あれ?



「どうしたの?」


「いやちょっとな」


 視界の端にちらっと映った文字に興味を惹かれて、紙を一枚机の上から拾い上げた。



「カルモナド? 書かれているのは全て国名か?」


 なんのリストだ? 何故遠く離れたこの地でカルモナドの存在が挙げられているのだ? しかも上の方に記載されているぞ?



『おそらく神器を保有する国の一覧でしょう。上から順にその量が多いのではないでしょうか』


 なるほど。カルモナドはいっぱい集めてるらしいもんね。むしろトップじゃなかった事が意外かも。まあこれが正しい順番とは限らないけど。完全に調べ尽くしたとも言い切れないだろうし。というか女神様はどんだけバラ撒いてんのさ。


『内容はピンキリですよ。私達は言うに及ばず、ギンカだって総合的に見れば上澄みも上澄みです。下をみればキリがありません。物によっては神器と認識されていない場合すらもあるでしょう』


 それはどっちだ? 教会の連中はそんなものまで把握しているという意味か?


『大雑把に計る神器があるのです。正確な数まではわかりませんが主様の力を観測する事ができます。コンパスみたいなものとお考えください。どこかに地図がありませんか? きっとそのリストを作る際に神器と地図を使った筈です』


 ……あった。地図上にマークが残っている。カルモナドは特に目立つように記されているな。他にも各地が丸で囲われている。これはリストと対応していそうだな。


『流石に神器の方は無いようですね。あれが手に入れば便利だったのですが』


 そう上手くはいかんか。けどルベドなら作れるんじゃないか?


『無理ですね。データが足りません。本当に創造主様の力だけを計っているわけではない筈です』


 そこはネル姉さんが提供できないの?


『後で試してみましょう』


 まあそうだね。今は置いておこう。


「そろそろ離れよう。誰か戻ってこんとも限らんし」



 カルモナドの件は気になるが後回しだ。どの道こことカルモナドじゃ距離がありすぎる。やるとしても少数精鋭の刺客を放つ事くらいしか出来ない筈だ。戦争になんぞ繋がるまい。ならベルトランやサロモン爺様が遅れを取る事もなかろう。転移を使える者やそういう神器なんかが無ければの話だけど。


 そういえば以前ロロを雇っていた連中もこの地から派遣された者達だったな……。実は今も何かが秘密裏に動いているのだろうか。聖教国はカルモナドを狙っているのだろうか。



「エリク。行くんでしょ?」


「うむ」


 ユーシャと二人で手を繋いで歩き出した。私達は今、ルベドの術で不可視の状態にある。たまにすれ違う者達は私達の姿に気付きもしない。例の女神様の力を測定するとかいう神器があるならこれでもバレるかもだけど。


『心配は要りません。隠蔽は完璧です』


 そっか。ルベドがそこまで言うなら確実だね。



「ねえ、エリク」


「うむ……ルベド?」


『……まだわかりません』


 そうだね。ちょっと進行方向が騒がしいけど私達が見つかったとは限らないよね。



「こちらです!!」


 前方から人の壁が迫ってきた。先頭を競歩みたいな速度で歩くメガネをかけた女性が何やら手の平の上にガラス玉のようなものを持っている。



『あれです! あれを奪い取ってください! ギンカ!』


 えぇ……この状況で何言ってるのネル姉さん……。


 少しだけ躊躇した隙にまだだいぶ遠い所で女性が跪いていた。その女性についてきた人の壁も倣うように膝を付き、頭を垂れた。



『『「「……」」』』


「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」


 あれ? 誰も何も言わないの?


 これって実は、何か私達と関係の無い儀式だったりする?



「下がろう。少しずつだ。極力音を立てないように」


 一応音も遮断されている筈だけど。怖いし。


 後ずさるようにユーシャの手を引いて少しずつ距離を離していく。



「移動されました!!」


 先程の女性が突然顔を上げて追いかけてきた。人の壁も当然のように後に続く。



『驚きました。本当に私の隠蔽を上回っているようです』


 流石女神様の生み出した神器。一点特化なら最高傑作うつしみをも上回るのか。でもそうだよね。道具って元々そういうものだよね。自らが出来ない事の為に使うものだもんね。女神様だって例外では無いのだろう。単にルベドの知識が二千年遅れている可能性も無くないが。


『人をロートルみたいに言わないでください』


 ごめんて。それより転移門出してよ。もう帰ろうよ。


『少し話をしてみては? 敬ってくれているようですよ?』


 まじで?


『平和的に二タスとキトリも引き渡してくれるかもしれません』


 そう? なら一応試してみる? ダメそうなら逃げるって事で。


『そもそもここじゃ転移は使えません。先に言っておいたじゃないですか』


 えぇ……。


 ならやっぱり逃げるべきじゃない? 捕まえようとしてきたらどうするの?


『その時はその時です。私が必ず二人を逃がします』


 隠蔽失敗したの忘れてない? キトリだって姿を消しちゃったんだよ? 例えルベドとネル姉さんの二人がかりだって逃げ切れないかもしれないんだよ?


『今度こそ問題はありません。私を信じてください』


 まあルベドがそこまで言うなら覚悟を決めるのも……けどなぁ。今回はユーシャもいるしなぁ……。取り敢えずネル姉さんはユーシャの方に移ってくれる?


『はい』


「私は大丈夫。頑張ってエリク。エリクもきっと大丈夫」


 しゃあない。やるか。


『……』


 ごめんて。



「え~、ごほん」


「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」


 うわ。なんか凄い緊張感が走った。それに再び皆が跪いちゃった。明らかにこちらの言葉を待っている。集団ストーカーかましてきた割には一応敬ってくれているも間違いないっぽい。だからこそなんだろうけども。



 さて。なんと続けよう。ここで下手な事を告げれば諸々ひっくり返ってしまうかもしれんな。信仰ではなく敵意を向けられるかも。


 きっとこの者達は私達を女神アーエルに属する者と認識している筈だ。或いは本人とすら思っているのやも。だから本当はアーエルなんて神は存在しないとか間違っても言っちゃいけないやつだ。女神様の本名であるエーテルという名を出すのもやめておこう。そもそも出す意味も無いし。もっと当たり障りのない事を聞いてみよう。



「私の事がわかるのですか?」


「はい!」


 女性がガラス玉を掲げて見せた。え? まさかくれるの?


 取り敢えず魔力手でガラス玉を掴んで引き寄せてみた。



「!?」


 あれ? 驚かれた? あ、今のは単に示しただけか。これで見つけたと答えてくれただけか。どうしよう。返した方がいいかな?


『ダメです。これは危険です。回収してください』


 まじごめん。


 心の中で謝りながらガラス玉を更に手元に引き寄せてアウルムに収納してもらった。



「!?」


 また驚いてる。ガラス玉が消えちゃったように見えたのだろう。相変わらず私達の姿は見えてない筈だし。



「このようなものに頼らねば見えぬのですか?」


「「「「「「「申し訳ございません!!!」」」」」」」


『そうきましたか』


『意地が悪いですね』


 後ろから刺さないでくれる?



「少々騒がしいですね。あなた。ええ。そうです。あなたです。どこか落ち着ける場所に案内してください。私の言葉は大勢に届けるべきものではありません。わかりますね?」


「はっ! はい!!!!!」


 うるっさ。やっぱり別の人にお願い出来ないかな……。まあいいか。偉いお爺さんとかよりは与し易そうだし。


『『……』』


 なにさ?


『『いえ、なにも』』


 なんだかなぁ。

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