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01-31.無抵抗

「抵抗力。"魔力抵抗"と、仮にそう呼ぶとしましょう。

 恐らくあのムズムズも魔力抵抗によるものでしょう」


 慣れというのもあながち間違いではないのかもしれない。

受け入れようとしたり、逆に排除しようとすれば、抵抗力は上下するようだ。ある程度意思で制御出来るものではあるのだ。そしてそこには更に個人差も存在していた。


 あれから何度か試してはみたものの、魔力抵抗の高いパティとメイド長の体では触覚を繋ぐまでには至らなかった。

そこまで出来るのは、今の所ユーシャの体だけのようだ。



「魔力抵抗は保有する魔力の質によって左右されるわ」


「量ではなくか?」


「何言って、ああ、そうだったわね。

 エリクには魔力見えてないのよね。

 こんなの初歩の初歩なんだけど」


「一言余計だ」


「早急に習得してもらう必要があるわね。

 エリク用の訓練メニューも考えてみるわ」


 それは助かる。

ついでにユーシャにも教えてもらいたいものだ。



「とにかく、ユーシャは莫大な魔力を持っているわ。

 しかもエリクとそっくりなやつ。

 というかこれ、エリクの魔力?」


「ユーシャ、あれを見せてやってくれ」


「うん」


 ユーシャは胸の間から薬瓶を取り出した。



「教えてくれるの?

 正直気になってたの。

 だってお風呂にまで付けてくるんですもの」


 風呂の間も私の薬瓶はユーシャの胸の間にぶら下がっていた。ユーシャはどこであろうと薬瓶わたしを手放す事はない。まあ密閉性については信頼と実績があるので、中身がうっかりお風呂に流れてしまう事も無い。


 はぁ……。

ユーシャのうっかりで何度命の危機を感じた事か……。




 とにかく、流石のパティでも気を遣って触れないでくれていたようだ。普通、そんなもの首にぶら下げたまま湯船に浸かる事はありえんしな。



「私の本体だ。

 そこに私が封じられている」


「また新しい設定生えてきたわね」


 その辺はふわふわなのだ。仕方ないのだ。

つい昨日新たな体を得たばかりなのだから。

固まりきっていないのだ。

一応最も真実に近い内容なのだが。


 まあ別に本当の事を伝えても良いのだがな。

どうせメイド長もディアナも知ってるし。


 とは言え薬が本体だと言われても逆に納得し辛かろう。

詳しく説明しろと言われても私にも難しいのだ。

今はこの答えで納得してもらおう。



「悪いがそれ以上は遠慮しておくれ。

 本体と言ったのは真実なのだ」


「うふふ♪

 そんなに信頼していただけるなんて光栄ね♪」


 素直に信じてくれたようだ。

話を合わせてくれているだけかもしれないが。


 何だかんだと話しはしやすいやつだな。

良いことだな。うむうむ。



「そうだ。だから明かしたのだ。

 精々裏切るでないぞ?」


「あらあら。ふふ♪」


「頭を撫でるな」


 まったく。馴れ馴れしいやつだ。

だがまあ、これくらいがちょうど良いのだろう。

ユーシャの友としてはな。



「話を戻すぞ。

 パティがユーシャの魔力と思っているものは私の魔力だ。

 おそらくな」


「その瓶を離してみたら?」


「嫌!!」


 ユーシャは両手で薬瓶を抱え込んだ。

まるで取り上げられるのを恐れるように。



「あらら。

 まあでも良いわ。

 大体わかったし」


「何がだ?」


「魔力あるわよ。ユーシャにも」


「そうなのか?

 私の魔力とは別に?」


「別というか、普段から流れ込んでいたんじゃないかしら。

 少し見ても境目がわからない程だもの。完全に染まってしまっているみたい。ユーシャに元々魔力があったのだとしても、既に変質しているのでしょうね」


「えへへ~♪エリクに染められちゃった♪」


 どうしてこの子はそういう知識だけあるの?

もしや私のせいか?



「つまり私もエリクを普段から持ち歩けば、魔力抵抗は弱まるのではないかしら?」


 なるほど。

可能性のありそうな話だ。



「ダメ!エリクは私の!」


「ふっふっふ!他にも手はあるわ♪」


 ユーシャにガバっと覆い被さって胸に頬ずりするパティ。



「エリクを持ったユーシャにずっとくっついていれば、何れ私にもエリクが感染するんじゃないかしら♪」


「やめんか。人を病原菌みたいに言うでない」


「うふふ~♪

 このままユーシャごと私のものにしてしまいましょう♪

 安心なさい♪私が一生養ってあげるわ♪」


 こやつ聞き流しおった……。



「ダメです、パティ。

 ユーシャは生涯お嬢様の側付きです。

 今は一時的に離れているだけなのですから」


 何故か勝手に就職先が決まっていきおる。

まあそれは良いのだが。



「ユーシャ。

 試しに暫くパティと共に過ごしてみよ。

 そうそう変化なんぞ起こるとも思えんが、ダメ元で試してみるのもよかろう」


 何せ私とユーシャは十年共に生きてきたのだ。

そう簡単に追いつけるとも思えんが、もしかするともしかするのかもしれん。



「うん。それならいい。パティ好きだから」


 チョロいな……。

ついさっきまで好きじゃないとか言っていたのに。

これだからボッチは……少しベタベタされたくらいで容易く心を開きおって……。いやそもそも、ベタベタを許している時点で驚きではあるのだが。決闘に負けた結果とはいえ。



「ユーシャ!!

 私もよ!愛してるわ!結婚しましょう!!」


 こっちもこっちでチョロいな。



「許さんぞ。

 ユーシャが嫁に行くなど決して認めはせん」


「大丈夫よ!

 エリクも纏めて受け入れるわ!」


 それならまあ……いや、ダメだろ。

パティとは今朝出会ったばかりだ。

たった数時間で関係が進みすぎだろう。

そもそも本気で言っているとは限らんのだ。

まだまだ見極める必要がある。

しかしユーシャには難しかろう。

やはり私がしっかりせねばなるまい!

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