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05-21.疑惑と疑念

 準備があるからと帰宅したリタを見送って、今日のところは私達も眠りにつく事にした。予定通り部屋割りを変えて、ロロと二人で同じベットに横たわった。



「ドウシマシタカ。ハニィ」


 ロロも一応話しがあることくらいは察してくれたようだ。物静かなだけで何か思い悩んでいる様子は無い。私の思い過ごしだろうか。



「それはこちらのセリフだ。悩みがあるなら教えておくれ。この状況で抱え込む必要なんぞあるまい。皆が協力してくれる事は今更言われずとも分かっている筈だ」


「……別二。ナニもアリマセン」


「そうか? 随分と元気が無いようだが」


「申シ訳ナイダケデス」


「そんな風に思う必要はないさ。ロロは私のものだ。ロロの全てに責任を負う覚悟はとっくに出来ている」


「……」


「話し辛いのか?」


「……イエ別二」


「……」


「……」


 ほんと、どうしちゃったのやら。



「ロロも会ってみるか?」


「……ヤメテオキマス」


「ロロの感じた印象とは違ったか?」


「……何の話デス?」


「マルコス氏はもっと悪人だと思っていたか?」


「……」


「幾つか疑問もあるのだ。幾らなんでも彼は素直すぎた。パティの言葉をあっさりと信じた事もそうだが、リタの誘いに乗った事も出来過ぎだ。それにお母上も強く嫌悪していた。ヴァイス家の窮状が原因かと思っていたが、改めて思い返してみると彼個人に対して向けられていたようにも思うのだ」


 偏執的なロリコンとまで口にしていたのだ。何かそう思うに至った根拠がある筈だ。もしかしたらこれは聞かない方がいい事なのかもしれない。ロロにとってトラウマと呼べるような過去を掘り起こそうとしているのかもしれない。



「……心配は要リマセン。私は純潔デス」


「そうか。それは何よりだ。ロロを傷付けた相手を良き人物だなどと言っていたなら、私は自らの舌を切り落とさねばならないところだった」


「……」


 何か間違えたか? もっと他に気の利いた返し方があったか?



「心配するな。私は決してロロを手放したりなんぞせんよ」


「……ハイ」


 ダメだな。これ以上は答えてくれそうにないな。


 ……だがここで引くのも違うと思うのだ。多少強引でもここは踏み込むべきではなかろうか。



『ギンカのそういうところは嫌いです。きっとロロもです』


 わかるけどね。でも例え一時的に相手に嫌われたって、悩んでいるのを放っておく方が悪だと思うんだ。


『私には出来てるじゃないですか。しつこかったのは最初だけです。今のギンカはそれ程嫌いではなかったのですが』


 ルベドは抱えてるものが大きすぎるから。私にはまだそれを受け止められるだけの器がないってわかったの。身の程知らずだから嫌われてるんだって。だからルベドのペースに合わせるって決めたの。ルベドが認めてくれるまで待つと決めたの。


『……ロロ程度なら問題は無いと?』


 そんな意地悪な言い方をしないで。私達は皆子供なの。ルベドと比べてしまったらね。


『影響を考えてください。今世界を動かそうとしているのは貴方達です。貴方達の一挙手一投足が波紋していくのです。どうか慎重に。些細な問題と侮らず思考を続けてください』


 ロロの悩みが世界の問題にまで繋がるの?


『実際こうして隣国の首都にまで乗り込んできたではありませんか』


 ……そうだね。私達は迂闊にもパティの名前まで出しちゃった。本当に戦争にでもなったら疑いも避けられないよね。


 けど話しが逸れてるよ。ロロの悩みを聞くのと先の問題は直接関わっているわけじゃないでしょ。私がロロを傷付けてしまって、仮にロロが私達の下を離れるって決断して、それが将来世界に何らかの影響を与えるとして。そんな事を常日頃から考え続けるのは無茶だよ。それは飛躍しすぎだよ。


『そんな気構えを持てと言っているだけです。安易に首を突っ込むなという意味でもあります』


 家族の問題に安易も何もないでしょ?


『素直に姉の言う事が聞けないギンカも嫌いです』


 それはズルいよ。けどわかった。忠告は肝に銘じておくから。それより今はロロが……あらら。寝ちゃってるし。まさかルベド? 時間稼ぎのつもりだったの?


『素直に忠告を聞くのでしょう?』


 ……そうだね。うん。ロロの悩みについても待つ事にするよ。ロロから話してくれるまでね


『そうしてください。彼女はきっと話してくれますよ』


 うん。姉さんの言葉を信じるよ。気を遣ってくれてありがとう。姉さん。


『ルベドです。姉とは呼ばないでください』


 自分で言ったのに。まあいいけど。


『そろそろギンカも寝たらどうですか?』


 う~ん。それより今はもう少しルベドと話したいかな。


『……仕方ありませんね。少しだけですよ』


 ありがと♪




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「ちょっとエリク。ロロ先輩全然元に戻ってないじゃない」


 朝食を終えると、私を寝室に連れ込んだパティが声を潜めて問い詰めてきた。



「すまんな。どうやら私にも話したくない事があるようだ」


「それで引いたの? エリクらしくないじゃない」


「たまにはな」


「もしかしてエリクから私にも話し辛い事?」


「いいや。単なる気まぐれだ。ロロの受け答えを見てそう判断したのだ。今すぐに踏み込むべきではないとな」


「けどもう動き出すのよ? リタの件も終わったら後はもう帰るしかないのよ? ロロ先輩が話す機会だってなくなってしまうかもしれないわ。そうなったらずっと悩みを抱え続けてしまうかもしれないのよ」


「いいや。ロロなら大丈夫さ。ロロは強い。それに私達も側にいる。また何時ものロロに戻るのも時間の問題だ。それからまた聞いてみればいい。今の意固地なロロにではなくな」


「絶対に目を離してはダメよ。ずっとエリクが側にいてあげて」


「うむ。ならば戻ろうか」


「ええそうね。そうしましょう。私も極力側にいるわ」


「二人で手でも繋いでいてやろう。きっと空気に耐えられなくなって何か喋ってくれるぞ」


「結局聞き出すの?」


「いいや。話をさせるのさ。それが隠し事に関する事でなくとも構わんだろ。ロロが元気になってくれるならな」


「それでこそエリクよ♪」


 私ってそんなに強引かなぁ。


『自覚してください』


 は~い。

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