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05-16.調査開始

 我々は早速共和国の中枢へと赴いた。大統領府が置かれた共和国の首都は特別区とも呼ばれ、どの州にも属さず連邦政府直轄の特別な地域となっている。この国一の学園もこの地にあり、先日までエフィとルシアもその学園に所属していたそうだ。



「何故エフィは無事なのだ?」


「どういう意味です?」


「エフィを人質に取る事も考えられただろうに」


「おそらく私自身が誤解していたからでしょう」


 ああ、そっか。むしろ姉を連れ戻そうとしていたくらいだものな。婚約は両家の間で正式に話しが通っているものと勘違いしていたのだ。エフィがそんな調子で協力的だったから、相手としては野放しにした方が都合が良かったのだろう。そもそも実際に動いている人や、もしかしたら当の本人すらも婚約が勘違いなんて自覚は無いのだろうし。エフィが何も知らなかった事でその誤解が解ける事も無かったのだ。その辺も込みでご両親はエフィを共和国側の学園に行かせたのだろうか。だったとしてもそれはお母上の考えだろうな。お父上はエフィもカルモナドに送りたかったのだろうし。



「そもそも大統領の任期はどれくらいなのだ?」


 既に五年以上は務めている筈だ。二期以上連続で務めているのか、或いは前世と制度が違うのかもしれん。



「任期? 基本的には生涯務め上げられますよ」


 え?


『言ったでしょう。ギンカの前世とは違うのです』


 だからって……それで共和制を名乗れるの?


『権力が集まり過ぎてしまったのです。制度としてはとうの昔に破綻しています』


 えぇ……。



「大統領は代々サルディバァル家が務めています」


 しかも世襲かよ……。



「それは王政と何が違うのだ?」


「一番の大きな違いとしては政治が議会制であるところでしょうか」


「だが大統領の権力が強すぎるのだろう? 後継者を自ら指名出来るくらいだ。実質的な独裁政権と化しているのではないのか?」


「こんな場所で妙な事を言わないでください。話の続きは部屋を取ってからにしましょう」


 それもそうだな。どう考えても往来で話すことではなかったな。



 一先ずの拠点として大統領府に最も近い高級宿を取った私達は、部屋に着いたそばから今後の予定について軽い打ち合わせを始めた。



「一先ずピーちゃんとアラネアを放っておいた」


「本当にあの小鳥達が見聞きしたものをエリクさんが?」


「うむ。バッチリだ。暫くターゲットを探らせよう」


「凄いね。エリクさんだけは敵に回したくないものだね」


「そうよ♪ エリクは凄いのよ♪ これで本人も近衛騎士団長より強いんだから♪」


「本当に?」


「もちろん♪」


「驚いたなぁ……」


 どうかな。ベルトランとの真っ向勝負は相変わらず確実に勝てると言い難いところだ。ソラや姉さん達の力を借りれるなら話は別だが。


 それに何より上には上がいる。まだまだ強くならねばな。



「話を戻そう。私達はこの地で聞き込みだ。大統領家の評判やロロとの婚約に関する情報を集めよう」


「エリクはここに残っていて。あなたは司令塔よ。それからエフィもね。出歩くのは危険だから。調査は私とロロ先輩とルーティに任せておいて」


「手分けして探さないの?」


「ボディーガードが必要でしょ♪ 私もエリク程じゃないけど腕に自身はあるわ♪ それにロロ先輩はエリクの眷属だから。眷属とは何時でも連絡が取り合えるの」


「あの小鳥達みたいに?」


「そゆこと♪ だからもし人手が必要そうなら後から応援を呼ぶわ。他の眷属達にも来てもらいましょう♪」


「パティ。あまり浮かれすぎるな。ここは敵地と心得よ。お前達は餌役でもあるのだ」


「そうね。ええ。もちろんロロ先輩を連れ歩く意味もちゃんと理解しているわ。当然油断もしない。だから安心して♪」


 本当に大丈夫か?



「案内役は任せたぞ。ルシア。それから二人のお守りもな」


「うん。任せておいて」


「心外デス。今回私は真面目にヤッテマス」


「だからこそだ。ロロは強い。今は間違いなくパティよりも上だ。お前が怒りに我を忘れたら止められんだろう」


「ソノ時はハニィが止メテクダサイ」


「そもそも私はお前に嫌な思いをしてほしくない。パティはその為の備えだ。パティなら私やロロが気付く前に妙な気配は感じ取るだろうさ。きっと事前に問題を回避してくれる」


「ソレでは餌の意味がアリマセン」


「そこは正直ついでだ。釣れずとも良い。そもそも誰もロロの容姿を把握しておらんだろうしな」


「服装でバレる可能性はあります。こんな格好をしているのは私達の町の者だけですから」


 まあ、うん。だからこそ最低限餌としての役割もこなせるのだけども。


 にしても驚いた。ロロの服が一種の民族衣装扱いだったのだ。あの城下町限定と随分と限られたものらしいけど。それにご両親もエフィもそんな格好はしていない。でも確かに町の一部の者達はビキニやアロハで過ごしていたのだ。案外とヴァイス家も完全に皆から見限られているわけではないのかもしれない。ただお上に逆らえないだけで。



「ともかくそんなところだな。一先ず行動を開始しよう。あまり長いことは続けられんぞ。この宿一泊の値段がとんでもないからな」


 そもそも宿なんぞ取らずに私は自宅から司令塔役を担っても良かったのだがな。しかしこれも必要な事だ。あまり姉さんの力にばかり頼るわけにもいかない。何度も転移させてもらうのは違うだろう。それに下手に安全圏から覗いていてもダレるしな。こういうのはタイムリミットを課すくらいで丁度良い。それだけ調査にも身が入るというものだ。



「じゃあ行ってくるわね♪ エリクに惚れちゃダメよ♪ エフィ♪」


「エリクさんもね。私のエフィを取らないでよ」


「もう! そんなわけないでしょ! 早く行ってきてください!!」


「「は~い♪」」


 あの二人こそ大丈夫か? やっぱり一緒に住むとか言い出さないか?



「まったく。……エリクさん。少し話しがあります」


「心配せんでも手なんぞ出さんぞ」


「違います! そんな話じゃありません!!!」


「悪かった。冗談だ。ロロの事か?」


「そうです。姉さんの事です。姉さんにいったい何をしたのですか? 眷属とはなんですか? それは安全なものなのですか?」


「悪いが眷属の詳細については教えられん。これは私達にとって重要な事だ。そして安全性についてはなんとも言えん。少なくとも単純な健康面については問題無い」


「話してください」


「ダメだ。どうしてもと言うなら私の眷属になる事だな」


「やってください」


「バカを言うな。お主はルシアと添い遂げるのだろうが」


「なるほど。眷属とは相手を縛り付けるものなのですね」


「……もう何も答えんぞ」


「姉さんを洗脳したのですか?」


「……話は終わりだ」


「答えてください。あなたは本当に信用出来るのですか?」


「その問いに何の意味がある? 今更怖くなったのか?」


「当然でしょう。この目で見ても信じられない事ばかりが起きているのです。あなたは私の想像も及ばない超常の存在です。ですが私の大切な人達があなたと関わっているのです。知らないままではいられません」


「だからと言ってこのタイミングで噛みつかんでもよかろうに。私は逃げたりなんぞせんよ。私の力に関する問いには答えられんが、ロロとの想い出ならば語ってやれるとも。どうか今はそれで納得しておくれ」


「聞かせてください。あなたにとっての姉さんを」


「うむ」

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