01-03.光る!喋る!DX薬瓶!
私は長いこと考えた。
それはもう、本当に長い間だった。
何年?何十年?何百年?
そんなものは確かめようが無かった。
私は未だに抜け出せずにいたのだから。
正直不思議でならない。
何故私はまともな精神性を維持できているのだろう。
これは中の薬の影響だろうか。
そもそもこの薬、消費期限とか無いのだろうか。
例えばだ。
この薬瓶には、中身を腐らせずに永遠に保ち続けられる機能が備わっているのではなかろうか。
それは劣化を防ぐ程度ではない。
そもそも、劣化を無かった事にするという意味だ。
というのも、実は薬の状態以外にも根拠があるのだ。
実は使えちゃったのだ。魔法。
まあ完全に独学だから、この世界でも魔法と呼ぶのかは知らないけど。
とにかく、薬の持つ膨大な魔力?を媒介に不思議現象を発生させる事に成功したのだ。
とは言え、今はまだ私自身が光るくらいしか出来ていない。
ただのお喋り薬瓶から、光るDXお喋り薬瓶に進化しただけだ。
けれどそれでも、なんとなくわかる事がある。
私の中の魔力は確かに使われている。
使われているのだが、瞬時に補填されている……気がする。
これが総量が莫大すぎて違いを感じ取れていないのか、仮説通りに回復しているのかはわかならない。
とにかく体を光らせる程度の魔力消費ではダメだ。
何かもっと大掛かりな魔法を使えるようにならないと。
次は体を浮かせてみよう。
後は攻撃魔法も欲しいところだ。
この遺跡を抜け出すまでに魔物にだって遭遇するかもだし。
この世界に魔物が存在するのかは知らないけども。
それにあれね。
持ち主も選定しなきゃだ。
先ず勇者はダメだ。絶対。
きっと私をしまいっぱなしにしてしまう。
勇者とはエリクサーを使わないものだ。(偏見)
金持ち過ぎてもダメだ。
下手をすると、その効能より希少性に価値を見出されてしまうかもしれない。
高額で売り飛ばされ、人々の手を渡り歩いた結果、国宝とかになって厳重に倉庫で封印されたら目も当てられない。
後どうせなら、飲まれる相手は可愛い女の子が良い。
薄幸の美少女とか病弱なご令嬢とかなんかそんな感じの。
まあ、こっちは努力目標だ。
心優しいお母さんとかでも全然構わない。
むしろそれはそれで悪くない。
ついでに健気で愛らしい娘さんが喜んでくれると尚良しだ。
まさに我が生涯に一片の悔い無しってやつだ。
そんな素敵な最後を迎えるためには、先ずはこの暗闇を脱しなければならない。
どうにか光は確保出来たものの、依然として身動きは取れていない。
そしてまた長い時が過ぎた。
『やった!やった!
薬瓶が立った!』
長い長い魔力修行の末、ようやく私は自由を手に入れた。
今まで横向きに転がったまま一切の身動きをとれなかった我が薬瓶も、これでようやく立ち上がる事が出来た。
ああ。なんか不思議な感覚だ。
平衡感覚?だっけ?
そういうのも一応あるのね。
横になりすぎて変な感じまである。
遠い昔に忘れ去った感覚を取り戻したとも言える。
なんだろうこの達成感。
両手を広げてバンザイしたい気分だ。手はないけど。
そして、一度立ち上がれてからは速かった。
私は宙に浮かび上がり、周囲を探索し、魔力を念力のように操って周囲の瓦礫を動かした。
まるで見えない手があるかのようだ。
何処にでも伸ばせるし、感触も伝わってくる。
やれる!今の私ならやれる!
このまま強くなって世界征服すら成し遂げよう!
そしてそのままあの憎き不審者の下まで攻め込むのだ!
ふっふっふ!今に見ておれ!
必ずや復讐してやろうぞ!
くぅぁっはっはっは!!
ドンガラガッシャーン!!
『ひぃ!?
ごめんなさい!冗談です!
ほんの出来心だったんです!
どうか御慈悲を!お美しい女神様!』
「だ~れ~?
だれかいるの~?」
え?あれ?
違う?あの不審者の攻撃じゃない?
「ぴかぴか~」
幼女?迷子?
なんぞ?誰ぞ?
躊躇なく私の下に近づき、手に取る幼女。
そのまま何故か頬ずりまで始めた。
「えへへ~
あったか~」
よく見ると、幼女はボロボロだった。
いや、正確には服だけがボロボロだった。
幼女の体は痣こそあるものの、大きな傷は無いようだ。
幼女が来た方向の天井からは、薄っすらと光が差し込んでいる。
どうやらあれは地上に繋がっているようだ。
遺跡が崩落してここまで落ちてきたのだろうか。
服がボロボロなのは、落下中にどこかに引っ掛けたからなのかもしれない。
「ね~ね~あなた~。
おなまえは~?」
どうやら私に話しかけているらしい。
変わった幼女だ。いや、幼女だからか。
「あれ~?
しゃべらない~?
おかしぃな~。
さっき、ひ~ってきこえたのに~」
ぐぬぬ。
聞かれてたのか……。
普通に恥ずい……。
『ごほん。
え~私は、エリクサーだ。
嬢ちゃんや、その痣、痛むのでは無いかね?
どうだ、私を飲んでみないか?
さすれば立ち所に全ての傷が癒えるだろう。
ほれ、遠慮せずぐびっと』
「???
えりく~?」
ダメだ。
全然理解してない。
幼女には話が長すぎたかしら……。
「えへへ~えりく~」
再び頬ずりする幼女。
どうやらお友達認定されたようだ。
「わたしはね~
なまえはね~」
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これが少女との出会いだった。
本当に長い事一緒にいたものだ。
ああ。まさか最後がこんな別れになろうとは。
この生活も中々悪くは……うん?
ってそうだよ!私飛べるんじゃん!
もう十年近く使ってなかったから忘れてたけど!!
再び目覚めよ!我が魔法!
大丈夫!私ならやれる!!
「エリク!!」
ふん!このまま飛び去らせてもらおう!
さらばだ我が相棒よ!ふぁっはっは!これで私は自由だ!
今度こそ飲んでくれる主を見つけるのだ!
「キャッチ!!」
なぜ!?
そうか!飛行速度が!
ちょっと浮いて動き回るくらいしか出来ないんだった!
あれから一切練習もしてなかったし!!
「はぁ~びっくりしたよ~!
何か今、少しだけ浮いてなかった?
そう言えば、初めて出会った時も浮いてたよね?
エリク、実は自分で飛べるの?」
『……』
「なに?
死んだふり?
なんか都合が悪いことでもあったの?
あ!そっか!
私の胸がそんなに気持ちよかったんだね!
もう!エリクったら!スケベさんなんだから♪」
『ちがわい!
んなわけなかろうが!』
「ならなんで自分で飛ばないの?」
『何処の世界に飛んで喋る薬瓶があると言うのだ!
だいたいこっちはボッチのお前に気を遣って!』
「あー!またそれ言った!!
もう怒った!エリクなんてこうしてやるんだから!」
『ちょ!やめ!胸に挟むな!無駄に成長しおって!
こら!ごめ!ダメだって!暗いの!怖いの!
暗いのはもうやぁなのぉ~!!』




