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05-13.厄介な敵

 ロロの幼い妹、キャロちゃんの出現によって話は一旦中断する事になった。続きはまた明日だ。ユーフェミア達も交えて改めて状況を整理するとしよう。



「……っ!」


「……」


 キャロちゃんはロロに抱っこされたまま、時たま顔を上げてはすぐに照れて伏せるのを繰り返している。それを間近で見ているロロは半分泣きそうな微妙な顔で固まっている。


 小さな妹が可愛いやら、どうしていいかわからず戸惑っているやら、嫌われてしまったのかと不安になるやら、色んな感情に襲われて困惑しているようだ。可愛い。どっちも。



「二人はロロちゃんのお部屋でいいのかしら?」


「ご心配なく。特殊な移動方法を用いて帰宅できますので。明日またエフィ達も連れて来ます」


「もしかして転移ってやつかしら?」


 あら? 母上は魔術に造詣が深いのか?



「お父様から聞いた事があるわ。大昔にはそんな魔術があったんだって」


 なるほど。そっちか。孫娘にあれだけ布教していたのだから、当然娘であるお母上にも色々教え込んでいたのだろう。


 お祖父様は随分と勉強熱心な方だったようだ。惜しいな。一度会ってみたかったものだ。口ぶり的に既に故人らしい。残念だ。せめていずれ墓参りにでも伺わせて頂こう。ロロの慕う御仁だ。婚約の挨拶をさせて頂かねばな。



「ご慧眼の通りです。今後はこまめにロロを帰すとお約束致します」


「ふふ♪ 嬉しいわ♪」



『ギンカ』


 わかってるよ。私の力じゃないって事は。だから安請け合いはしないよ。けどお願い。力を貸して。ルベド。


『……仕方ありませんね』


 ありがとう♪



「そうだわ♪ ならキャロちゃん今日はロロちゃんのところに泊めてもらったらどうかしら♪」


「エ゛!?」


 ロロが変な声を出した。



「すっかりお姉ちゃんの事気に入ってくれたみたいだし♪」


 そうなの? そうかも? 一応暴れたりはせず抱っこされたままだし、警戒しているというわけではないのかも? 単に恥ずかしがっているだけな気はする。相変わらずのダンゴムシっぷりだ。可愛い。



「うむ! そうだな! そうしよう! テンイ? とかいうのはよく分からんが何時でも行き来出来るということなのだな! ならば問題無いな! キャロラインも連れて行くと良い! 勿論返しに来るのだぞ! 絶対に明日もまた顔を出すのだぞ!」


 お父上が突然復活なされた。なんだかまだまだ話足りない様子だ。けれど話せない、と言うか話したくない事が多すぎて焦れていたのかも。なら考えて覚悟を決める時間が欲しいのだろう。なんだかんだとロロを引き止めたい気持ちも強いのだろうから、キャロちゃんが良い感じの楔になってくれると察して飛びついたようだ。



「明日は一日空けておくとも! 朝からでも構わんよ!」


 更に念押ししてらっしゃる。



 まあいいか。何かあってもエフィもいるしな。



「それではまた明日。明朝は少々難しいかもしれませんので、問題が無いようでしたらお昼過ぎに伺わせて頂きます」


 パティの言う通りだな。エフィ達とも話さなきゃだし。けどもう寝てるだろう。明日の午前中はこちらでも話し合っておかねばならん。



「そうね♪ 焦る事は無いわ♪ ロロちゃんとキャロちゃんが仲良くなるにも少し時間が必要だものね♪ なんなら二、三日ゆっくりしてきたっていいわよ♪」


 それは流石に。幼児を預かったまま数日はちょっと。お母上はだいぶ肝が座ってらっしゃる。それだけロロの事を信頼しているのだろう。



「むぅ……」


 お父上は立場弱いな……。お母上が口を開いた途端に押し黙ってしまった。絶対反対の立場だろうに。明日の昼には必ず娘達を連れて来よう。安心させてあげたいし。




----------------------




「キャロ!? どうしてキャロが!?」


「おはよう。エフィ。それからルシアも。その件で少し話しがある。急で悪いが今日は一日時間をおくれ」


「早速動いてくれたのかい? ありがとう♪ エリクさん♪ 喜んで参加させてもらうよ♪」


 ルシアは動じないな。パティから何か聴いていたのだろうか。



「ルー!」


「やあ♪ キャロちゃん♪」


 ルシアを見つけたキャロちゃんは嬉しそうに抱きついた。エフィには大した反応を示さなかったのに。どうやらルシアはキャロとも仲良しなようだ。エフィの言った通りだな。



 朝食を済ませて学園組が出発した後、再び今回の件に関するメンバーだけで集まって打ち合わせを始めた。キャロちゃんは朝食の席でシュテルに目を付けられて連れて行かれてしまった。正直あまり聞かせたい話でもないしありがたい。あっちはメアリやスノウもいるから心配は要らんだろうし。



「そうですか。そのような事が。ありがとうございます。エリク様」


 ロロやお母上が隠していた事も含めて昨日の出来事を全てエフィ達にも話してしまう事にした。話を聞き終えたエフィは落ち着いた様子だ。反論される可能性もあるかと思ったから少し心配だったけど。何故だか婚約者モドキの問題点に気付いていない様子だったし。



「申し訳ございません。姉さん」


「気にシナイデクダサイ。隠シタのは私達デス。ムシロコチラコソ。ゴメンナサイデス」


「そうですね。そこは反省してください」


 ふふ♪



「婚約が嘘であると言うなら話が変わります。こちらが一方的に煙に巻いているのでないなら制裁行為には断固として抗議せねばなりません」


 エフィの怒りは婚約者の方へと向けられたようだ。切り替えが早いな。



「そもそも何故エフィに言わなかったのだ? 伝えて問題がある事とも思えんのだが」


「見ての通りだよ。エフィってとっても喧嘩っ早いんだ」


 え? ああ。そういう。断固として抗議って本気で直接乗り込んでやりあおうって意味なのか。そうか身代わりとは結果的な話か。エフィがやらかしてどうにもならなくなって、最終的に我が身を差し出して解決を図る事にもなりかねないって意味……か? いやなんか違うかも? 少し無理が? 


 まあ何にせよ、余計に話しがややこしくなる事を避けたかったのだろう。タイミング的にも寮生活で親元を離れてしまう状況だったものな。姉の為にと暴走したら止める者もいないのだものな。そういう意味でもルシアの存在はありがたがられているのやも。こっちは年齢以上に落ち着いてるし。



「やはり姉妹だな。昨晩ロロも同じ事を言っておった」


「余計な事は言ワナイデクダサ~イ」


「失礼しちゃいます」


 ふふ♪



「それで具体的にどうする? ヴァイス家がなんらかの制裁を受けているのは間違いあるまい。相手は大統領家やその派閥そのものだ。少なくともそのコネは使える筈だ。何せ嘘の婚約を吹聴して既成事実に仕立て上げる程だ。最悪新聞社すら使ってくるぞ。大衆を従えるという意味では名実共に最高峰の手腕を持っている。敵に回すには強大に過ぎる。まともにやり合うのは難しかろう」


 口にしておいてなんだけど随分と大事になってきているな。そりゃあご両親も国外に逃がすわけだ。それしか打つ手無いもん。普通に考えたら。



「そうだね。それに彼らは評判も良いんだ。問題のお孫さんだってヴァイス家に対する所業以外に非の打ち所があるなんて話は聞いた事が無い。正直驚いたくらいだよ」


 それはそれは……。やっかいな……。



「隠すのが上手いという意味なのか、それとも恋は盲目というやつなのか。まあ、だからと言って制裁行為なんぞ仕掛けてくる時点で碌な奴とも思えんが」


 そもそも勝手に婚約者だと吹聴している時点でアウトだし。どう考えても。



「断り方が悪かったって可能性はないのかしら? 五年も半端な状態で放っておかれたらどんな聖人君子だって怒るでしょ?」


 考えづらいがキープみたいな扱いになっていた可能性か。そうだとしたらワンチャン話せばわかってくれるか? 何か誤解が重なった末の状況だったりするのか?



「ハッキリ断リマシタ。向コウは一方的にソレデモ諦メナイナンテ言ッテマシタガ」


 だよね~。



「ロロから見てどうだ? 個人としては悪人に見えたか?」


「……真摯ではアリマシタ」


 よくわからんのだな。そう何度も会ったことがあるわけでもないようだし。



「取り敢えずの情報共有はこんなところね。後はご両親も交えて考えるとしましょう」


 そうだな。まだ私達も知らない事があるのだろうし。

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