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05-10.情報共有

「実はね。前から考えていたの」


「何がだ?」


「何でも屋みたいな事がしたいなって」


「魔導を広める為にか?」


「ええ。勿論それもあるわ」


 つまり世の為人の為働きたいのだな。パティらしい。


 ただ今の私達はあまり派手には動けない。だからせめて自ら助力を求めてきた者達にだけでも手を貸したいのだろう。わざわざそんな前置かんでも喜んで手を貸すともさ。



「二人も庇護下に加えるのか?」


「いいえ。違うわ。二人は向こうで暮らしたいそうよ」


 なるほど。まあその方が良いだろうな。私達と一緒じゃ誤解されちゃうし。その誤解を利用するなら手っ取り早いが本人達が望んでおらんのなら無理強いするような事でもない。



「ならばどうする? 一先ずロロと一緒に挨拶にでも言ってみるか?」


「難しいとこなのよね。ロロ先輩の婚約者って相当なお偉いさんみたいなの。きっと帰してもらえなくなるでしょうね」


 いきなり暗礁に乗り上げてしまった。



「そんなにか?」


「現大統領のお孫さんだそうよ」


 大統領ならば血筋で決まるものでもあるまいに。当人ならともかく、その孫にまで価値があるものなのだろうか。


『ギンカの前世とは違いますから』


 なんでルベド姉さんが現代の隣国事情を把握してるの?


『何か不満でも?』


 無いよ。勿論。ただ疑問に思っただけ。折角姉さんの方から話しかけてくれたから会話を広げようと思って。


『必要ありません』


 ざんねん。



「むしろよく待っていてくれるものだな」


 既にロロの卒業から一年以上が経過してるのに。帰国が遅れていると言い張るにも限界はあろう。当然ユーフェミアの出国だって本来なら認められんかった筈だ。



「そんな状況でエフィはどうやって?」


 逃げ出してきたようにも見えないけど。



「ルーティがとっても頑張ったそうよ♪ ご両親とも関係は良好なんですって♪」


 ルーテシアは凄いな。真っ当な手段で連れ出してきたのか。並大抵の信頼では叶うまいに。



「だがそれはロロを突き出す事を前提とした話ではないのか? ルシアは約束したのだろう? その為にエフィを連れ出したに過ぎんのだろう?」


「そうなの。だからどの道挨拶には行きたいんだけどね」


 せめて先に代案を用意しておきたいわけだ。



「他に姉妹はおらんのか?」


「一人だけ。シュテルと同じくらいなら」


 ダメじゃん。流石に十年以上も待ってくれるわけがない。



「そもそも先方はロロ先輩に惚れているそうよ」


「面識があるのか」


「ええ。以前パーティで出会って一目惚れしたって。それで向こうから話を持ちかけてきたそうなの」


 まあ、ロロは見た目と成績だけは良いからな。一目惚れする者がいてもおかしくはないとも思うけどさ。



「そういう事ならエフィが繰り上がる事も無いのでは?」


 こう言っちゃなんだけど、二人って全然似てないし。



「もう当人達だけの話じゃなくなっちゃってるの」


 面倒な。


 きっと婚約者さんは周囲をも巻き込んでロロを手にしようとしたのだろう。家同士の話に持ち込む事で無理やり婚約を取り付けたわけだ。けれどロロのあの様子を見る限りまるで相手にされていないのは間違いない。これはそもそも本人の努力が足りていなかったのではなかろうか。先にロロを口説けていれば逃げられる事も無かったろうに。ロロはああ見えて義理堅いタイプだ。婚約が周囲から無理やり押し付けられたものでなかったなら私に靡くような事も無かっただろう。というかあのロロが家族への迷惑を顧みずに全力で逃げるくらいだ。どう考えてもろくな奴じゃないと思う。



「婚約そのものを破断にさせるしかないな」


 あまり乱暴な事はしたくないけれど。とは言えロロは私のものだ。ロロを守る為なら私にだって動く理由はあるのだ。



「何か良い方法はあるかしら」


「先ずは情報収集だ。やはりロロ達のご実家にも後程挨拶に伺おう。逆に考えればご両親はわざとエフィを逃がしてくれたのかもしれん」


 ロロだけでなくご両親も内心では望んでいない可能性もある。単なる政略結婚と言うより圧力に屈してみたいなパターンかも。でないとそもそも留学なんてさせなかったのではなかろうか。ロロの事だってご両親が意図的に逃がしてくれたのかも。しかしエフィは生真面目そうだからな。そんな両親を見ていられなかったのかもしれん。



「……ありえるわね。なら私達三人だけで行きましょう」


「どちらが良いと思う? ソラで派手に乗り込むのと、姉さんの転移門でこっそり会いに行くのと」


「……後者よ。前者って言いたいところだけど」


 たぶんそっちの方が話もスムーズに進みそう。けれどやはり問題があるか。カルモナド王国が隣国にドラゴンをけしかけたとか言われかねんし。



「そう言えばロロはどうしたのだ? 二人と一緒か?」


「ええ。三人で朝から町に繰り出したわ。本当は私も行きたかったんだけどね」


 平日だからな。普通に皆仕事や学園があるのだ。どうせこうして魔導研究以外の事を話し合うくらいなんだから、いっそ休んで饗しても構わんだろうけど。



「帰って来たらロロとも話してみよう」


「そうね。ルーティ達も一先ず数日は滞在するそうよ」


「城に帰した方が良いのではないか?」


 変な噂に巻き込まれても嫌だろうに。



「魔導も教えてほしいって♪」



 ……リップサービスじゃない?


『ギンカは捻くれ者です』


 ルベド姉さんの妹だもの。


『……認めません。そんな話し方をしたってダメです』


 二タス姉さんの代わりになれるとは思わないけどさ。でもルベド姉さんの望む妹になる事は出来ると思うんだ。


『……やめてください。そんな事望んでいません』


 どちらでも構わんさ。ルベドでもルベド姉さんでも。


『やっぱり生意気です』


 素直で可愛い妹なのに。


『調子に乗らないでください』


 は~い♪

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