表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

292/366

05-07.初めてのお客様

 ディアナ達が学園に通い始めたのと並行して、私達は魔導の研究を本格的に開始した。



「妖精魔導師パティの研究所!」


 デネリス公爵王都邸の一室を占拠したその部屋の入口には、何時の間にやら派手な看板が掲げられていた。こんな場所に看板なんかあったって何の宣伝効果もありはしない。当然だ。公爵邸に入れる者なんぞ最初から限られているのだ。



「もう♪ 細かい事は良いじゃない♪」


 浮かれてるなぁ。



「今日は出かけないのか?」


「ええ。お客さんが来る事になったの」


「客? そんな話していたか?」


「言ってないわよ。私もさっき聞かされたんだもの」


「聞かされた? 誰に?」


「城から先触れが届いたの。姉様が見学したいんですって」


「姉様? ニアの事では無いだろう?」


「勿論♪ 十七番目のお姉ちゃんよ♪」


「新キャラじゃん」


「新キャラよ♪」


 ノリが良い。



「まさか引き抜くのか?」


「いえ、別にそんなつもりは無かったのよ? ただ向こうから興味を示してきただけで♪」


 満更でも無さそう。



「親しいのか?」


 今まで聞いた事も無かったけど。



「いいえ。会ったことも無いわ♪」


 なんでさ。


 パティの上でレティの下なら十六~十九歳だろ? 歳も近いんだし、学園の先輩だった事もあるんじゃないか?



「留学してたのよ。ロロ先輩と逆の立場ね♪ それから私とは同い年よ♪」


「なるほど。隣国の学園を卒業して戻ってきたのか」


「そゆこと♪」


「だが何故こちらに? 留学前にだって一度も会ったことはなかったのだろう?」


「色々よ。ロロ先輩に会ってみたいのが最初の理由だと思わうよ。それで調べたら私達が面白そうなことをやってるって興味を持ったんじゃないかしら?」


「つまりよくわからんのだな」


「そう♪ よくわかんないの♪」


 浮かれてるなぁ。


 それだけ嬉しいのだろう。単純に興味を持ってもらえた事も。会ったことの無かった姉君と会える事も。




----------------------




「姉さん!! 見つけましたよ!!!」


 え? 姉さん? なんか想像と違う?



「エフィ!? ドーシテココに!?」


「どうしてですって!? 姉さんがいつまで経っても帰ってこないからじゃないですか! ほら! 帰りますよ! とっくに留学は終わった筈でしょ!」


 ああ。ロロの妹か。……え? 妹いたの?



「ステイだよ。エフィ。約束したでしょ」


 あ、こっちがパティの姉君か。



「悪かったね。私はルーテシア。こっちはユーフェミア。私が今回見学をお願いしたんだ」


「ようこそ姉様♪」


「君がパトリシアだね。同い年なんだからもっと気楽にお願いするよ♪ 私の事はルーティでもルシアでも好きに呼んでおくれ♪」


「ならルーティね♪ 私の事もパティと呼んで♪」


「うん♪ パティ♪ 今日はありがとう♪」


 早速仲良くなったようだ。流石姉妹。


 それから応接室に移動して、パティとルシアが改めて互いに参加者達を紹介し始めた。今この場では私、パティ、ロロ、ルシア、エフィの五人が席に着いている。



 さて。もう一方の姉妹の問題を片付けよう。



「ロロ。お前まさか実家に手紙の一つも送っとらんのか?」


「アハハ~……忘レテマ~シタ~……」


 まったく。



「大変失礼致しました。どうか先の無礼をお許しください」


 ロロの妹さんは何もかもがロロとは似ても似つかない。いや、顔はそっくりなんだけども。それ以外が正反対だ。この国に来たのは初めてだそうだが、言葉だってロロよりよほど流暢だ。まあ、ロロの場合はやろうと思えば何時でも変えられるものをキャラ付けの為に意図的に残しているのだろうけど。ロロだし。如何にも考えそうな事だ。



「むしろこちらこそごめんなさい。気が利かなかったわ。ロロ先輩の事はよく知っていたのに」


「いえ、そんな。全ては姉さんの責任です」


「ロロ。業務命令だ。里帰りしろ」


「ソンナァッ!?」


「安心して♪ 有給にしてあげるから♪」


 うちって有給とかあったんだ。その辺の事はパティやアカネに投げっぱなしだからなぁ。



「ソウイウ問題ジャアリマセンヨ!?」


「何が問題なのだ? 家族を安心させるのは必要な事だろ」


 例の地下組織の件だって今更問題にはなるまい。何よりロロは私の眷属だ。多少旅をさせたってそうそう危険には陥らんだろうさ。なんならネル姉さんに頼んで転移で送ってもらってもいいわけだし。



「申し訳ございません。エリク様。どうやら誤解があるようです。姉さんには休職ではなく退職して頂きたいのです」


 あらら。連れ戻すってそういう意味か。



「悪いな。そういう意味でならロロは返せん。私達にとっても大切な家族なのでな」


「ハニィ!」


「姉さん? まさか話していないのですか?」


 この流れは……。



「姉さんには婚約者がいるのです」


 またかよ……。



「このままでは私が繰り上がる事になります。それだけは絶対に阻止せねばなりません」


 え?



「なんとしても戻って頂きますよ。姉さん」


「ヤデス! 無理デス! 帰リマセン!!」


 ……なんだかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ