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04-59.甘々

「エッリクさ~ん♪」


 リリィが勢いよく飛び込んできた。



「町に行きましょ♪」


「明日からという話になっておったろう?」


 今日のところはゆっくり休もうと言っておいたのに。昨日、一昨日と少々燥ぎすぎていたからな。それにここはリリィ達にとって慣れない環境でもある。屋敷の見学にでも時間を当ててもらえばと思っていたのだが。



「二人きりでデートしよ♪」


 譲る気は無いようだ。この場には当然ユーシャ達もいるし、リリィ自身ここまでスノウに連れてきてもらっておいて、堂々と逢引を要求してきたな。



「二人でか? どうしてもと言うなら皆で行かんか?」


「明日の下見よ♪ 二人で十分だわ♪」


 どうしても二人きりで行きたいらしい。



「いいよエリク。行っておいで」


「ユーシャ?」


「それならお姉ちゃふがっ!?」


「こっちはまだお姉ちゃんと話したい事があるから」


 ユーシャはネル姉さんを羽交い締めにして引き止めた。



「スノウも付き合って」


「うん。ユーシャ」


「しゅて~?」


「勿論シュテルも」


「あい♪」


 なんでそんな気遣いを? 流石にリリィの事放置しすぎたから? 別にいいけど。これは王都に帰ったらアカネ達との時間も設けねばな。



「よし。行こうか、リリィ」


「うん!! ユーシャ姉もありがとう!!」


「頑張ってね」


「えへへ♪ うん♪」


 仲が良い。


 ユーシャも妹分達には甘いようだ。



 リリィに手を引かれて屋敷の入口へと向かう。リリィの足取りに迷いはない。今日始めて訪れた屋敷だと言うのに、既に入口の位置を把握しているようだ。



「マーちゃんに声を掛けずともよいのか?」


「いいの! 先に抜け駆けしたのはティナの方だもの!」


 抜け駆けって。まあ、言いたいことはわからんでも無いけどさ。



「エリクさんって、もう何度もティナと一緒に寝てるんでしょ?」


 寝てっ……ああ。まあ、うん。



「ファム達と一緒にだぞ。別にマーちゃんと二人で寝たわけでもないし、何か特別な事をしていたわけでもない」


「特別な事? 何その言い訳? 他の人とはもっと進んでるの?」


 いかん。やぶ蛇だった。そしてこの娘も普通に興味があるんだな。リリィは歳の割にかなり小柄だから十歳くらいにしか見えないのに。



「気にするな。それより今日は何処に行きたい? あまり時間は無いからな。必要な物や興味のある場所があるなら先に教えておくれ」


「あからさまに話題逸すじゃん♪」


 そんな風に興味津々な目を向けられても何も答えんぞ。



「ねえ? どこまでいったの? キスくらいは普通にしてるよね? それでも言えないって事はもっと先まで? ねえねえ?」


「やめんか。はしたない」


 この家の侍従達に聞かれたい話しでもないのだ。ほんとマジでやめてください。



「ふふ♪ 本当に困ってるみたい♪」


「そうだぞ。だからお淑やかに頼む」


「今晩一緒に寝てくれる?」


 脅す気か!?



「初めての場所で心細いの……」


「スノウもいるだろうが」


「ラビ姉はミカゲ姉に貸してあげる♪」


「イネスはどうするのだ」


「イネスさんは……一人でも大丈夫じゃない? と言うか一人の方が落ち着くんじゃない?」


 それはそう。イネスはまだ私以外とは打ち解けておらんからな。勿論パティとシルビアは別としてだが。正直ミカゲと二人部屋もかえって落ち着かんだろう。リリィは出会って間もないのによく見ているのだな。



「なら部屋割りを見直すか」


 もう一部屋借りれるかしら? 出る前に相談しておこう。



「やった♪」


「ただし今晩だけだぞ。順番だ」


「ふふ♪ ハーレムって大変ね♪」


「おい。よさぬか。こんな場所で」


「あはは♪ ごめんなさ~い♪」


 いやまあ、ね。これに関しては私が悪いのだけども。でも本当に気をつけて。洒落にならないやつだから。




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「やあ、ジュリちゃん。久しぶりだ」


「エリクちゃん!? 帰ってたのね!!」


「うむ。この町には今日戻ったのだ。これから数日は滞在する予定だ。明日にでもまたパティ達と顔を出そう」


「そう♪ 嬉しいわ♪ あら? その娘は? 今日はユーシャちゃんと一緒じゃないのかしら?」


「ヴァレリア・アルバラードと申します♪ ユーシャ姉達からジュリちゃん様のお話は伺っております♪ 私の事はどうぞお気軽にリリィとお呼びください♪」


「あらあら♪ 可愛い娘ね♪ 私もジュリちゃんで構わないわ♪ よろしくね♪ リリィちゃん♪」


 リリィはジュリちゃんの見た目に気圧される事もなく、朗らかに挨拶を交わしてくれた。



「ユーシャは他の者達と共に屋敷で休んでいる。今日はリリィがどうしても町を見て回りたいと言うのでな。それで二人だけで出てきたのだ」


「あらあら。エリクちゃんたら婚約者が三人もいるのに♪」


 あれ? ジュリちゃん? 声は笑ってるのに目が笑ってない? これマズイか? 明日いきなり大勢で来ていたらダメだったやつか? それともこうして二人きりで出歩いている事が問題か? でもリリィはどう見ても子供だよ? ジュリちゃんの観察眼の前ではそんな言い訳通用せんのか? まあ普通、指輪まで交わした婚約者達がいるのに、その他の相手とこうして出歩いて、あまつさえ堂々と紹介されもすれば不信感も抱くよなぁ。ジュリちゃんはパティがこの店の工房で指輪を拵える所だって見ていたんだし。



「なあ、ジュリちゃん。話せば長くなるんだが」


「いいわ。奥にいらっしゃい」


 すまんな。リリィ。デートはまた少しお預けだ。

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