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04-58.第一回姉妹会議

 一通りお父上との話を終えてから、パティとディアナを残して私達はそれぞれの部屋に分かれた。


 私、ユーシャ、シュテルはディアナの部屋だ。ここも少しばかり懐かしい。


 残りはソラとファムとマーちゃん、スノウとリリィ、イネスとミカゲの三組に別れて別室だ。


 メアリは変わらずメイドとして働くつもりのようだ。私の眷属や婚約者候補となった事は今暫くデネリス家の者には明かさぬように言われている。まさか照れくさいのだろうか。それとも気後れしている? はたまた気を遣われるのが性に合わないのだろうか。何にせよ近い内にメアリとも話をせねばな。このままだと一生立ち位置が変わらない気がするし。


『それは無いでしょう。ギンカとその眷属達の一生は人のそれと大きく異なるのですから』


 それって寿命の話しだよね? 眷属増やすのもホント考えなくちゃだな。


『別に百や二百程度留め置いたって世界にはなんら影響もありませんよ。我らが主様は偉大なお方です。なんだかんだと言って何処より安定した世界運営を成されているのです』


 なんか規模の大きそうな話しが始まった。それ聞いても大丈夫なやつ?


『勿論これ以上は話しません。別に今の時点で知っても良い事なんてありませんから。もし興味があればいずれ主様の御下へ至った際にでもお聞きください』


 なら他の姉様達も見つけ出さねばな。鍵をどうしようか。いっそあの小瓶のようにそれっぽいものを作る事は出来んだろうか。


『私では難しいですね。マグナ姉さんかルベド姉さんがいれば或いはですが』


 マグナ姉さんは別の世界にいるっぽいんだよなぁ。あの箱の姉さんよりむしろ見つけ出せる可能性が低いくらいだ。



「ねえ、エリクもしかしてネルお姉ちゃんと話してる?」


「おねーちゃ?」


「ネル姉さん。外に出てきておくれ。ユーシャとシュテルにも諸々話しておこう」


「はい♪」


 これ何気に初めての姉妹水入らずだな。ユーシャは既にネル姉さんから色々聞いているかもしれんが、今後の事を話し合っておくのもよかろう。ユーシャとシュテルも当事者なのだ。それに私一人で考えても良い方法なんてそうそう思いつきもしないだろうし。




----------------------




「そっか。お姉ちゃんいっぱいいるんだ」


 ネル姉さんの話を聞き終えたユーシャはあっけらかんと呟いた。何かを気にしているようでも、特別に嬉しそうなわけでもない。まだ眼の前に姉さん達がいないから実感がわかないのかもしれない。ネル姉さんはこんなだし。



「あの本の人は?」


 ユーシャも覚えておったのか。語り聞かせようとしても毎回寝落ちしてたからあんまり興味が無いのかと思ってた。



「おそらく、いえ間違いなく『白愛のフラン』でしょう。私も直接お会いした事はありませんが」


 なんだか姉さんの知識もチグハグだ。もしかしたら『知恵のネルケ』としての機能を使って調べただけなのかもしれない。以前本の件に言及した時点ではフランの名も知らないようだったし。たぶんだけど姉さんは頭の中に図書館があるみたいな感じなのだろう。最初から全てを知っているわけじゃなくて、知りたいことを都度調べる必要があるのだ。そしてそれにはたぶん私の所有者としての熟練度か何かも関係している。調べられる情報には限度があるのだ。そもそも収められている情報自体が全てを網羅したものでもないのだろうけど。



「そっか。全員知ってるわけじゃないんだ」


「ええ。マグナ姉さんより上の姉さん達とは面識がありません」


 つまりフランの他に『信仰のルベド』と『正義の二タス』にも会ったことが無いのだな。女神様も二人の行方は把握していないのだろうか。



「秩序だっけ? キトリお姉ちゃんはどんな娘なの?」


「真面目な頑張り屋で良い子ですよ。今も世界のどこかで平和の為に働いてくれている筈です」


 稼働中なのか? それがわかっているならもう少し情報を持っているのでは?



「キトリ姉さんの具体的な居場所はわからんのか?」


「十五年以上前のものにはなりますが最後に活動していた国はわかります」


 思っていたよりは直近だったな。もっと数百年単位で所在が知れないのかと思っていた。けれど微妙な期間だな。果たして足取りが追えるかどうか。ともかく近くまで行ってみる価値はあるだろう。



「ならキトリ姉さんも早めに探し出そう。ソラに乗っていけばすぐだ」


「いいえ。キトリはディアナさんの学園卒業後に探しましょう。あの娘の力は今必要なものでもないですし、あの娘は聖教国にいた筈ですので。聖教国の直ぐ側には竜王国が存在します。ソラの件のついでに寄るのでも構わないでしょう」


 確かにそれなら卒業後にするべきか。そもそもその辺りはソラに乗っても少々時間のかかる距離だものな。何日もこちらを離れるのは現状難しい。ただでさえ予定が詰まっているのだ。ならば今はあの箱の方に注力してしまうべきだろう。



「キトリ姉さんとマグナ姉さんが違うと言う事は、あの箱の中には三人の内の誰かが入っているのだな」


 ネルケとクルスはこの場にいるし、キトリとマグナは多少とは言え情報もある。けれど見事に長女、次女、三女と上三人の行方が知れぬのだな。そこにも何か意味があるのだろうか。単純に長く生きたが故に何らかのアクシデントにでも巻き込まれてしまったのだろうか。実際一人は神器の箱の中に封じられてしまっているのだし。



「箱の中身は誰だと思う?」


「フラン姉さんだと嬉しいです」


 何その希望。



「ルベド姉さんとニタス姉さんは少々癖が強いらしいので」


 そこまで具体的にわかるんだ。何か活動記録的なやつでも見ているのかしら?



「その癖の強さ故に人々から疎まれて封じられたのでは?」


「可能性はあります。なんなら中身だけ確認して再稼働は一旦待つという手もありますね。フラン姉さんがいればきっと姉妹を纏め上げてくださるでしょうし」


 でも肝心の箱は持ち出せないんだよなぁ。アウルムに格納してもらうという手も使えるかもしれんが。そもそも箱から出した途端に動き出す可能性もありそう。



「大丈夫。心配要らないよ。エリクがいるもん」


「それもそうですね♪ ギンカがいれば安心です♪」


「まぁま!」


 まあ、うん。わかってた。どうせ他の姉さん達も私の所有物となる運命なのだ。ならばどんな姉さんが来ようとドシンと構えておくほかあるまい。



「まあそれはよい。それで鍵の件だがな」


「正直探しようがありません。なんなら既に失われているかもしれませんし。そもそも最初から鍵なんて存在しない可能性だってあるんですから」


 どういうこっちゃ?



「やはり一度見ておきたいのですが」


「ダメだぞ。忍び込んだりしたら」


 陛下は私達が箱を求めている事を何故か知っていた。きっとあの宝物庫には何かニアすら知らない仕掛けがあるのだ。姉さんだって見つかるかもしれん。



「無茶を言いますね。ですが期待には応えましょう。ダメ元ですが鍵の制作は請け負います。最悪それで開けられなくとも箱に近付く口実は得られる筈です。間近で観察すれば何かヒントを得られるかもしれません」


「そうだな。そういう手段ならば大歓迎だ。具体的な計画を詰めるとしよう」


「はい♪」

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